第2話 両親にスキルの事を打ち明ける
「おはよう、リュート良い朝だね、昨日は天使さんにスキルを貰えたかい?」
お父さんが朝食のパンを片手にはつらつと聞いて来た。
ああ、何と言えば良いのかなあ。
「ん、変なスキルだったのかい、気にすることは無いよ、お父さんなんか【陶芸】だしさ」
朝食のテーブルに載っている小洒落たお皿は全部お父さんが窯で焼いたものだ、僕は結構好きだな。
ちなみにテーブルクロスとか、椅子のクッションとかはお母さんのお手製だ、なにしろ【手芸】持ちだからさ。
しかし困った。
何と言うべきか。
「貰ったスキルは、その【幼女テイム】だったよ」
ガターンと椅子を倒し立ち上がったお父さんが鬼のような形相になった。
お母さんが手で顔を覆ってうつむいた。
「リュート、お、お前と言う奴は、お前というやつは、そ、そんな不道徳な欲望を密かにため込みスキルとして爆発させたというのかああっ!!」
「ち、ちがうよ、父さん、話を聞いてよ」
「だ、だが、そんな不道徳なスキルを発現させるとは、なんという変態性欲の高ぶりなのかっ!」
うっは、覚悟していたとは言え、【幼女テイム】は聞こえが悪いよなあ。
というか、世界最悪のスキルかもしれない。
悪のスキル、も実は天使から春分の日に与えられる。
その場合、悪徳の女神リテラさまの黒天使の眷属が運んでくるという。
【盗み】【詐欺】【恫喝】などなどだ。
都市のスラムなんかでは良く発現するというが、僕のいるような田舎の村ではあまり居ない。
というか、【幼女テイム】は変態性欲性が大変に感じられるセンシティブなスキルなので、お父さんお母さんの反応も無理は無いのかもしれない。
「ああ、違うんだ、どこから言えばいいかなあ」
「どんな言い訳をしてもそんな恥ずかしいスキルを得た事で、お前は悪女神リテラの手に落ちたと言わざるは得ない」
「メリーがさ、その……」
僕は正直に話すことにした。
最初は半信半疑だったお父さんもお母さんも途中から涙をながして聞き入っていた。
「リュート、お前が変態性欲を死んだ妹を使って正当化するつもりなら……」
僕は机を力一杯叩いた。
「僕はメリーを使ってそんな言い訳をしないっ! 女神コレアナ様に誓って、そんな事はしないっ!!」
お父さんは顔をくしゃくしゃにして泣いた。
「父さんが悪かった、そうだな、いくらなんでもリュートはそんな事はしないな、ああ、メリーは天使になったのか、ああ、よかったなあ、よかったなあ」
「ああ、メリー……」
両親は泣いた。
僕も知らない間に涙が出ていた。
メリーの死は、僕ら家族に刺さったトゲで、彼女が天使になっていると聞いて、両親も救われた感じがしたんだろうね。
「だから、僕は一年、このスキルを抱いたまま過ごすよ、来年はちゃんとした【グリフォンテイム】をくれるそうだから、安心して」
「そうか、【グリフォンテイム】か、それは素晴らしいな」
「空畜の繁殖ができるのね」
空畜の繁殖は難しいので、こういう専門スキルが来なければなかなかチャレンジ出来にくいんだよ。
「そうか、リュートの覚悟は解った、だが、そのスキルの聞こえは最低だ、女の子に知られたらドン引きされるぞ」
「そ、そうだね」
「明日は教会でスキル発表会がある、神父さんにお願いして秘匿スキルにしてもらうから、安心しなさい」
天使から与えられるスキルに中には人に知られるとまずいものも存在するんだ。
べつに悪徳スキルだけじゃなくて、その逆の【勇者】とか【賢者】【聖女】の神聖スキルも騒ぎになるので秘匿される。
わりと聞こえの悪いスキルも発表会には出なくて良いことになっている。
まあ、発表会に出ない事で、いろいろと人には言われるのだけど、【幼女テイム】の事を人に知られるよりは良いよね。
「で、メリー、ではないメロディさんはまた来るのかい?」
「うん、今日はスキルを配り追えて報告会だから、明日、来るって」
「何とかして、父さんも会いたいなあ」
「私も会いたいわ、リュート」
「うん、なんとかならないか聞いてみるよ。夢の中になら出てくれるかもしれないよ」
「ああ、明日か、うんうん」
「メリーが好きだった物を沢山作りましょう」
「天使では食べられないだろうけど、うん、そうだな、メリーを偲ぶために良いかもしれないな」
僕はほうっと息をついた。
最難関の両親への報告が上手くいったよ。
あとは、明日から一年間、秘匿スキル野郎という陰口に耐えればいいんだよ。
どっちにしろ、僕は羊飼いで、あまり人と深く付き合う職業じゃないし、きっと一年なんかすぐだよ。
その後は、メリーがちゃんと天使メロディとしてやっていく事を祈りながら日々の生活を過ごそう。
うん、それが良いね。
僕が我慢すれば妹は消滅しなくて良いんだよ。
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