第16話 寮の食堂でペルリラ料理を食べる
「さあ、たんとお食べくださいませ」
エプロン姿の可愛いペルさんが僕にお料理を配膳してくれた。
山盛りだ。
カービン王子とジナンさんにも配膳する。
「ペル、俺の分が少ねえんだけど」
「あ”あ”? 喰わせて貰うだけありがたがれ、ジナン」
「いただくぜ」
皆でペルさんお手製のお料理を食べた。
豚肉のソテーみたいだね、甘いソースが掛かっている。
美味しい美味しい。
三級食堂の地獄料理に比べると夢のようであるね。
「美味いぜ、ペルちゃん」
「良い味だなあ、うん、これは美味い」
「本当に美味しいよ、ペルさん、いつもすまないね」
「それは言わないやくそくですよ、ご主人様」
ペルさんは頬を赤くしてはにかんだ。
うーん、この子は可愛いねえ。
『うまいうまいにゃ』
「メロディも豚肉食べて大丈夫なの?」
『真実の猫じゃあ無いから大丈夫にゃ、ペルは料理が上手いにゃあ』
「ありがとう、メロディちゃん」
「……」
なんだか、長い髪で顔を隠し、黒い服を着た幽霊のような女性がテーブルの横に立っていた。
寮監さんのヘレナさんだ。
「キッチンは……、使っても良いけど……、火の用心……」
「はい、火の始末は気を付けます、ヘレナさん。ヘレナさんも食べますか?」
「ありがとう……。包んで……、部屋で食べます……」
ヘレナさんは料理の包みを持ってふらふらと自室に向けて歩いていった。
「あれが寮監ですか、こええなあ、引きこもりかな?」
「なにげに高度な魔法スキルの持ち主らしいぜ」
「へえ、人は見かけによらないですねえ」
食堂横の廊下をサテンさんが身をかがめながら通った。
わあ、避けられているなあ。
メロディがピョンと跳んでサテンさんの服に取り付いた。
『ペル、こいつを捕まえるにゃ』
「なんですかなんですか、やめてください【幼女テイマー】のペットに用なんかありませんっ!」
『こっちは大ありにゃっ』
「メロディちゃん、どうするの、ご主人様侮辱罪でぶっとばすの?」
『臭いのでお風呂に連行して洗うにゃ』
「一人で、一人でできますからっ」
『だめにゃ、スラムの人は入浴の習慣が無いから、お風呂の入り方、体の洗い方、髪の洗い方が解って無いにゃ、連行して体に叩き込むにゃで、ペル!』
「了解だよ、メロディちゃん!」
サテンさんはメロディとペルに連行されて浴場の方へ消えて行った。
「浴場は混浴か?」
「そんな訳があるか、男女別だ、うっかりを装って覗くとボコられるぞ」
「ちえ、兄貴にはお見通しですかい」
というか、なにげにみんなでワイワイしてるのは楽しいな。
「兄貴はいつ頃入浴しますかい?」
「夕食後だな」
「よし、お背中ながしますぜ、リュートお前も付き合え」
「え、いいけどさ」
「王城では味わえねえ、裸の付き合いか、いいねえ」
カービン王子はしみじみと言った。
僕は玄関に張ってある部屋割り表を見て、自室に向かった。
二人部屋で、同室はマノリトさんだ。
太っちょさんだね。
部屋に入ると、小綺麗な部屋で、シングルのベッドが二つあった。
マノリトさんはまだ帰ってきてないようだ。
机は二つ、窓から勇者学園が見える。
ベッドに腰を掛ける。
そうか、ここで三年間生活するのか、なかなか楽しそうだ。
カービン王子は良い人だし、ジナンさんも口は悪いが意外に親切だしね。
楽しい学園生活にしたいね。
ペルさんは向かいの二人部屋、メイドのロッカさんと同室らしい。
カービン王子は最上階のスイート、ジナンさんはその下の大きな一人部屋っぽいね。
バタンと音を立てて、大荷物を抱えたマノリトさんが入って来た。
「なんだね、ルームメイトは君かね、【幼女テイマー】」
「あ、どうも、一年間よろしくおねがいしますね」
「まったく、学園はF組だし、ルームメイトは変なスキルだし、ついて無いよ、凶暴な女に絡まれるしね」
「ケイトさんはどうも鼻つまみ者らしいですから無視した方がよさそうですよ」
「そうなのか、まったく中等舎が懐かしいよ。僕は王都でも有数の商会の跡取りでね、良い中等舎に通っていたのに、変なスキルを貰ったせいで、勇者学園のF組送りだよ、いやになってしまうね」
「どんなスキルなんですか?」
「そ、それは、それは秘密だ、うん」
何となく公言をはばかるスキルみたいだね。
「しかし学園カフェラウンジの三級食堂は酷い物だね、食べられる物では無い」
「マノリトさんも行きましたか、酷い味でしたね」
「味もそうだが、二年生、三年生のD組、F組の生徒がね、うん、怖いね、ええと」
「あ、リュートといいます、よろしくお願いします」
「リュートくんか、性犯罪者みたいなスキルだから変な奴だろうと僕は独り決めしていたが、誤解のようだ、すまない。リュート君は、なかなか良い人だね」
「いえいえ、ありがとうございます」
商会の息子さんだけあって、人当たりが柔らかいね。
良い人っぽいから仲良くしよう。
ドアをノックする音がして、ペルが入って来た。
お風呂上がりで頬が赤くて髪が濡れていて、なんだか魅力的だ。
「お疲れ、サテンさんは綺麗になった?」
「はい、綺麗になりましたよ」
『意外に美少女だったにゃ』
それは良かった。
「おや、リュートくん、この方々は?」
「ええと」
ペルの紹介が面倒だな。
「どうも、ご主人様の奴隷のペルリタです。この部屋に入り浸りますので、よろしくお願いしますね」
「!!!」
『ペットのメロディにゃ、よろしくにゃあ』
「少女奴隷に、喋る猫!! リュート、君はやっぱり見下げ果てた男だ、絶交だ!!」
「ええ~~!!」
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