第15話 三級食堂でランチを食べる
メロディにどいてもらって鞄の中に教科書を入れる。
うわ、猫の毛で鞄の中が凄い事になってるー!
『ご、ごめんにゃ』
「ま、まあ良いんだよ、他に居る所ないしね」
僕はメロディを抱き上げて鞄の中に収めた。
彼女は鞄から顔だけ出して上機嫌な感じだね。
ペルが東の方からとてとてと駆けて来た。
寮はあっちの方なのか。
「お待たせしましたご主人様!」
「いや、大丈夫だよ、行こうか」
「はいっ」
勇者学園のカフェテラスは学園の真ん中あたりにある。
「なかなか綺麗な施設ですね」
「君ら、F組だよねえ、チンピラ王子いるしー、ここは二級食堂エリアなんだ、君たちはあっちの隅」
なんかチャラい、カフスボタンが青の二年生の人が教えてくれた。
「んで、あっちがS組の一級食堂エリア、綺麗だよねえ、僕も来年は行きたいけどねえ、無理かなあ」
「A組は二級ですか?」
「そうさー、A組からC組までは二級、D組からF組は三級食堂だよ、うん」
「教えていただいてありがとうございます」
「ふふっ、君はF組だけど礼儀正しいね、そういう人は好きだよ」
上級生さんははんなりと笑った。
四人で三級食堂エリアに行って見た。
「掃除が行き届いてませんね」
「うん」
なんか床がベタベタするし、テーブルは汚いし、そこでご飯を食べている生徒のガラはとても悪いしで、なんだかな、のところであった。
カウンターに行って、食事を頼むシステムらしいのだけど、定食のAとBしか選ぶ物がない。
あと、お茶も有料だ。
「A定食ください」
「あいよう!」
太ったおばちゃんがトレイに料理を乗せてくれた。
なんか、うーん。
みなでテーブルに付いた。
「なんか」
「うむ、なんか変な匂いがするな、ニンニクか?」
「い、意外に美味しいかもしれませんよ」
「多分不味いと思いますよ、ご主人様」
ペルさん、そういうことははっきり言わなくても良いのです。
パクリ。
……。
「不味い」
「おう」
「不味い不味い不味い不味い不味い」
パクパクパク。
「いや、不味いなら泣きながら喰わなくてもいいじゃねえか」
「食べ物を粗末にしては、いけないんですよ、ううっ」
「俺は残そう」
「兄貴もですか、俺も残します」
「食べるに値しませんね、ご主人様、涙を拭いてください、今から寮に帰って私が何か作りますよ。そして明日からはお弁当を作ってあげます、だから泣かないで」
「うう、ペルさん、ありがとうっ」
「完食しなくてもいいではないか」
「ううう」
不味いが、食べなくてはいけない、お百姓さんに悪いし。
「おい、ペル、俺にも弁当作ってくれよ、なあ」
「ざけんなっ、ロッカに作ってもらえ、ジナンめ」
「ロッカはなあ、メイドらしいことを何もしてくれねえんだよっ」
「なんで、そんな人を雇っているんですか」
「護衛」
「ああ、ミーガン伯爵家か」
「?」
「貴族同士にはなあ、時々不倶戴天の敵ってのがあってよう、ミーガン家の奴ってのは、ああ、ああいう兜をかぶって……」
ガッチャガッチャと音をたてて、兜をかぶった女生徒が寄ってきた。
「げええっ、ミリア・ミーガン!」
「見つけたぞ、ジナン・カーソン、今日がお前の命日だ!!」
兜の女生徒は背中に背負った大剣を抜き放った。
ガッキーン!
いつの間にかロッカさんが来ていて、ダガーで大剣を受け止めた。
「ぎゃはは、ミリアー!! 出て来やがったな!!」
「くそ、殺人メイドのロッカか!!」
ロッカさんとミリアさんは激しく切り結んだ。
腕は互角か。
「ミリアさんは何組なんですか?」
「私はB組だ、【両手剣】を貰ったからな」
武器スキルは良いなあ。
「ふむ、ミーガン家避けのためのロッカか、下働きはいないんだな」
「いねえんすよ、ロッカは何もしねえから、俺が泣く泣くやってますよ」
「では寮に帰って、ペルリラの手料理をたべるか」
「カービン王子にふるまうとは言ってませんけど」
「いいよな、リュート」
「はいっ、よろこんでぇ!」
「俺は?」
「ジナンさんも良いだろ、ペル」
「うんもう、しょうがないですねえ」
「ペルのお料理は美味しいですから」
「いやですよう、ご主人様」
ペルさんくねくねしなさんな。
激しく斬り合うロッカさんとミリアさんを放っておいて、僕たちは席を立った。
「こんな所までスキル次第で差別されるんですねえ」
「この学園はスキルが全てだからなあ」
世知辛い話であるよ。
四人でぶらぶらと寮まで歩く。
「うわ、貧相な建物だなあ」
「そうですか、普通だと思いますが」
『居心地がよさそうにゃ』
まあ、貴族のジナンさんにとってはあばら屋なのだろうね。
平民の僕としたら、まあ、普通の家だ。
「他のクラスの寮はあんなだぞ」
隣にも寮の建物が幾つか建っていた。
学校に近づくほどに建物が豪華になっていくなあ。
一番学校に近い建物は、宮殿か何かか?
「S組になって、あの寮に住みてえよなあ」
「まあ、住めば都というではないかよ」
「兄貴は王子なのに気楽ですねえ」
カービン王子は物怖じしないよね。
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