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とある転生者の人間界での輝かしい功績と実情(前編)

 https://ncode.syosetu.com/n1410kn/の続きというか、同じ世界線の別主人公の話。

 全3話、この作品だけで読めます。

 お話自体は最後まで全て投稿待ち状態にしてるので確実に完結します。

 次の投稿時間は5/26のお昼頃の予定。

 オレは転生者。


 前世は何の変哲もない真面目が取り柄の市役所勤めの公務員だった。

 平日は程々に仕事をし、土日祝日は一人暮らしの家事をやったり、彼女とデートしたり、趣味の読書や音楽鑑賞、家庭菜園などを楽しみつつ、夜は晩酌する……そんな穏やかな生活を愛するごく普通の男性だ。


 今度のデートで、ようやく恋人同士になれた付き合って1年の彼女にプロポーズする予定だった。

 ちゃんとオレの親兄弟にも紹介したし、彼女の親兄弟にも紹介してもらい、プロポーズへの土台は固めていたのに……


 幸せの絶頂間近に、何故死んだかは覚えていない。

 最後の記憶は帰宅中の自分、多分その時事故に巻き込まれたのだと思う。気が付いた時には赤ん坊になっていた。

 自分の身に起こるまで、本当に転生というものがあるとは思わなかった。


 オレは異世界転生ものというアニメや漫画があるのは、うっすら知っていたが詳しく知らない。

 オレの異世界転生もののイメージは『現実逃避』『お約束』『主人公が万能』

 その知識は具体性に乏しく、何の役にも立たなかった。


 それなのに軽く知識があったせいで、余計な絶望を味わった乳幼児期だったと思う。

 体は満足に動かせないのに、意識がはっきりしていても、正直苦痛だ。

 やれる事といったら、周りを観察する事と思考を巡らせるだけ。


 今世は前世と比べて生活水準が低い。

 布おむつだし、冷房暖房はなく、暖は暖炉で取り涼を取る方法は特になく、少しだけ冷たい飲み物が出されるくらいだ。

 それでも世話をしてくれる人が何人かいるので、貧乏ということはなさそうだが、イマイチ置かれてる立場が不明だった。数人に世話をされても孤独感が募るだけ。


 ここは異世界、地球の記憶を持つのはオレだけしかいないし、オレの同胞もいない。

 先に死ぬという親不孝を嘆き、愛しい彼女との前触れもなく訪れた別れを思い苦しくなる。

 暗い思考に浸っていたおかげで、他人に排泄処理して貰うことへの嫌悪感を感じなかったのが、せめてもの恩恵だった。


 それでも数年してくれば自分の置かれてる環境は分かるもの。オレは学者の家系の長男で、家は社会全体としては準富裕層に入るということが分かった。


 家は広く本も数多くあったし、来客として偉そうな人がたまに訪れ、祖父に教えを請うていたりするのをチラリと見たことがあった。

 ちなみに、父はお偉いさんの跡継ぎの家庭教師で出かける事が多く、オレは祖父といる事が多かった。


 比較的幼い頃から、祖父から提供される本に慣れ親しみ、周りからは『一人で本の世界に浸るのが好きな子ども』に見えていたと思う。

 前世でも読書は趣味だったし、本の世界にいる時だけは前世の世界から、いきなり切り離された孤独感のようなものを忘れられる気がしたのだ。


 使用人からの評価は『おとなしい手のかからない子ども』というものだったろう。

 また学者家系だから、本を読むのが好きというオレは、親たちから見れば『跡継ぎとして期待出来る子ども』であったと思う。


**********


 5歳位になりオレは祖父に連れられて、初めて馬車で外出をすることになった。目的地は遺跡らしい。

 外出する際、最初に注意されたのは『絶対祖父のそばから離れないこと』を執拗に念を押された。

 まあ普通の5歳児は色々動き回るから、その注意は正当なものだろう。


 ただ、そこまで外出するのが不安なら、もう少し大きくなってから外出すればいいのに……とは思った。

 まぁ、そこはおくびにも出さずに、オレは祖父の注意に都度肯定の返事をし、やっと目的地へと着く。


 馬車を降りると眼下に遺跡が見えたが、前世の採石場のようで、大きな岩が正方形に切り出されている。

 というか馬車が高い位置に停まったのではなく、石を切り出し、遺跡をどんどん地下に拡張しているというのが正しい表現だろう。


 祖父は慣れた足取りで、作業用通路を下り、遺跡に近付いていった。

 その過程で分かったのは、遺跡の文明はオレが生きてる今より進んでいたということだ。

 遠目から見ただけじゃ分からなかったが、遺跡の入口は数人なら一度に入れる程度の規模感で、酷く人工的で、何故か懐かしく感じた。


 不意に祖父がオレの手を握ると、遺跡へオレを連れて入っていった。中に入って、先ほどの懐かしさの理由が分かる。

 外見が採石場な遺跡はAE◯Nモールだった。

 何故分かったかといえば、入口横の店内案内図の上部にAE◯Nモールと書いてあるのだ。

 

 久しぶりの日本語とローマ字と漢字に、オレは無意識に流れ落ちた涙を拭うことも忘れる。

 そして、ただただAE◯Nモールの案内図を見つめ続けた。


 横にいた祖父が少し驚いたようにオレの涙を拭う。

 そして、なぜ泣くのか聞いてきたが、本当のことはいえず『遺跡の素晴らしさに感動した』と誤魔化した。

 まあ嘘ではないし『前世で馴染みのある建物だったので懐かしかった』というよりは、余程信憑性があるはずだ。


 少しの間、案内図の前にいたが、涙が落ち着いて来た頃合いで、祖父はAE◯Nモールの更に内部に連れて行ってくれた。

 洋服屋、家電量販店、食料品売り場、おもちゃ屋、本屋、前世の懐かしい店舗ばかりだ。

 それらを見て、今世生まれてから今までの孤独感が薄らいだ気がした。


 今生きる人々はオレの生きてきた時代の人々の遠い子孫なのだろう。

 もしかしたら今世の人々の中にはオレの遠い親戚がいるかも知れない。彼女の子孫もいるかも知れない。

 確かにオレは孤独だけど、思ってるより孤独ではないのだ。


 ひと通りAE◯Nモールを見せてくれた祖父がいうには、うちの一族は国から委託され、代々このAE◯Nモール――もう遺跡といってしまうが――を保全・管理しているのだという。

 また保全・管理だけではなく、遺跡の出土品を研究分析して生活の役に立つ技術を開発する手助けもしているようだ。


 そしてオレの家系は、その一族の長なのだという。

 基本的には祖父のように遺跡の保全・管理を主な役目とする当主と、父のように権力者たちとの繋がりを維持するのが主な役目とする当主が、代々交代で当主を継ぐのだそうだ。

 

 そんな事情なので、オレは大手を振って遺跡と関わることが出来た。

 前世の残滓に触れることで、薄れたとはいえ根強く残る孤独感を埋めていったのだ。

 もちろん結果だって残している。


 遺跡内のいたる場所にあった、未解読の日本語をオレが解読したのだ。

 ……まぁ、元々知っているものを説明しただけなのだが。


 ただ、これが非常に難しく面倒くさかった。

 文字の意味や読み方、文法、文字種(ひらがな・カタカナ・漢字・アルファベット)など、オレがそういうものだと知っている法則を、全く知らない人間に理論的に系統立てて説明するのは、予想以上に手間と労力がいたのだ。


 まず読み方と意味を確定させるために、50音やアルファベットや漢字の概念を、何本もの論文として書くところから始めなくてはならなかった。

 オレの書いた論文内容に詰めの甘さがあれば、反論が出て来てくるし、反論するための論文を書く必要がある場合も多かった。

 反論には意味や読み方、文法、文字種に対しての推論が見当違いな場合があり、それを潰さないと事実がねじ曲がってしまうのだ。


 何度となく論文反論のやり取りを繰り返し、今世の研究者が遺跡内の日本語を読めるようになるまでに、数十年を費やした。

 それでも完璧に読めるようにはならず、一部読み方が違う部分があったりする 。

 前世が言語学者なら、もう少し何とか出来たかも知れないが、オレにはこれが限界だった。

 

 また文字解読だけでなく、遺跡に残る今まで用途不明だった商品の使い道も、いくつか説明、もとい判明させたのも結果の1つだろう。

 これを認めさせるために、何本論文を書いたことか……

 苦労はしたが、それに見合うだけの名声は得られたのは素直に嬉しく思う。

 そう今世でのオレは成功者といっても過言ではない。


 そんな苦労をし続けていたら、いつしかオレは『遺跡研究の天才』と評価されるようになっていたのだ。


**********


 遺跡研究の天才と評され、はや数十年。

 オレと他の遺跡研究者の目の前には、遺跡内で発見された、とある商品がある。

 それは『ブラジャー』と『女性用ショーツ』だった。


 短いですがまさかの連載作品となりました。

 前作の後書きでもいいましたが、私は亡き父は刑事、女手1つで育ててくれてる母親は女王様な彼が主人公の漫画が好きです。

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