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7)婚約者に突然、会えなくなりました 1

 何もかもが輝いているように浮かれて過ごしていた私が小さな違和感を感じたのは、デビュタントで着るドレスのデザインを一緒に選ぶ約束していた数日前のことでした。

 可愛いと思ってもらえるお洋服を探してクローゼットを眺めていた時、ユリウス様から断りの連絡が届きました。

 いつもなら会いに来て伝えてくださるのに、メッセージカードに“大変申し訳ないが行けなくなったので、母と選んでくれ”と代筆で書かれていたのです。

 ユリウス様が私宛のメッセージカードを代筆させることは今までなく、しかも日を改めるのではなくアマンダ様と選ぶようにという内容に私は首をかしげました。


 体調が思わしくないのかと心配になりお手紙をお送りすると、“大丈夫なので心配しないように”という、やはり代筆のメッセージカードが1枚届きました。

 素っ気ない内容に、シンプルなメッセージカード。

 そこには私の名前すら書いてありませんでした。


 しかしこの時はまだ、「社交界一の卓越したセンスの淑女と名高いアマンダ様に、ドレスを選んでいただけるのも楽しみだわ」などと呑気に思っていたのです。


◇ ◇ ◇


 そして迎えたドレス選びの日。

 ギネス公爵家に王都一人気のサロン・デューのデザイナー、マダムデューを招いてドレスをデザインしてもらうことになっていました。

 結局あのメッセージカードが届いて以来、ユリウス様には会えませんでした。2日に1回は会いに来てくださっていたのに、一週間も会えていません。

 もしかしたら、今日、ギネス邸でちらりとでもお会いできるかしら。

 そう思うと、準備にも気を抜けません。髪の毛にユリウス様の瞳と同じ色のバレッタを飾ってもらって、そわそわと馬車に乗り込みました。


 「アマンダ様、ごきげん麗しゅう。本日はよろしくお願いいたします。」

「リリー、ようこそ。マダムが来るまで、こちらでお茶をしましょう。近頃何があったのか、教えてちょうだいな」

 アマンダ様は、今日もにこやかに迎え入れてくださいました。

 お茶をいただきながら近頃のお話をするものの、話すほどにユリウス様に全くお会い出来ていないことがハッキリとしてきます。ユリウス様はとても心を砕いてくださるので、ユリウス様をお出かけしたことや、ユリウス様からいただいた物のお話がどうしても多くなります。

 それが、ここしばらくはお会いできていません。お会いできないどころか、お手紙を送ってもお返事もないのです。お返事がないと困るようなお手紙を送ったときだけは、素っ気ない代筆のメッセージカードが届きました。

 婚約をしてからの10年間、そんなことはなかったので心配がもくもくと膨らんできました。


 「あの、アマンダ様。ユリウス様のご体調はいかがですか?それとも、お仕事がお忙しいのでしょうか…」

 聞くとアマンダ様はにっこりと笑って、お菓子を勧めてくださいました。

「ユリウスは元気よ。ちょっと仕事が立て込んでいるみたいで、リリーに寂しい思いをさせてしまっていると心配していたわ。申し訳ないのだけれど、しばらく待ってあげてもらえるかしら」


 ユリウス様が健やかに過ごされているなら、よかった。

 お忙しいのは心配だけれど、宰相補佐という大切なお仕事だもの。

 結婚したらもっと、このようなこともあるはずだわ。

「…ええ、もちろん」

 分かっていても寂しい気持ちももちろんあって、お返事に少し間が開いてしまいました。

 少しぎこちなく微笑んだ私の手を、アマンダ様がそっと撫でてくれました。

「その代わり、私とお茶をしたり、たまには街にも行きましょうね。リリーと会うと幸せな気持ちになるのよ」

 そしてアマンダ様がくださった素敵なご提案に「もちろん!是非!」とすぐに答えた後は、どこにご一緒しようかしらということばかり考えていたのでした。

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