4)婚約者が突然、できました 1
私のお茶会デビューは、キラキラのお菓子とちょっと苦い思い出、そして素敵な王子様で終わりました。
ユリウス様は私の話をおもしろそうに聞いてくださり、私はすっかり嬉しくなって沢山のお話をしました。一時はどうなるかと思ったお茶会も、ユリウス様のおかげでキラキラとした思い出になりました。
そしてその次の朝は、お茶会のキラキラが続く特別な朝だったのです。
ユリウス様が持たせてくださった、(ドレスのせいで食べられなかった)公爵家の"キラキラ輝く可愛らしくも美味しいお菓子たち"。
今朝は特別に、朝ご飯にそれらを食べていいとお父様からお許しをいただいていたのです!
もちろん嬉しくてお父様にハグをし、ちょっとステップを踏みました。ばれないようにスカートの下で小さくだったのに、お母様に目で注意されてしまいました。
お菓子たちは、一つ一つ可愛らしくラッピングされていていました。
味ももちろんどれも美味しく、一番など決められません。
更にお菓子には、"また会える時を楽しみにしてます ユリウス"と書かれたメッセージカードが添えられていたのです。
お花が箔押しされたそのメッセージカードを眺めながらお菓子をいただいて、最高に幸せな気持ちに浸っている中、お兄様に「昨日の茶会はどうだった?ユリウス殿と過ごしたのだろう」と問われました。
「夢のようでした…かわいらしい飾りつけのお庭、キラキラかがやくお菓子たち、そして王子様みたいなユリウスさま…とても楽しかったですわ!お兄さまが世界一かっこいいと思っていたけれど、ユリウスさまはまるで王子さまのようでとっても素敵でしたわ!」
心もお腹も満たされて幸せいっぱいの私は、すっかり浮かれて答えました。
「リリーの一番ではなくなってしまった…」
ため息のように小さく何かをつぶやいたお兄様は、すぐに笑顔になって「リリーが楽しかったのなら何より」と言ってくれたので「はい!とっても楽しかったです!」と答えたのは何かよくなかったようで。
その後お兄様は、よろよろとお部屋へ戻ってしまいました。
その後ろ姿を眉をしかめながら見ていたお父様が、表情を和らげてから「リリー、ユリウス殿とまた会いたいかい?」と仰いました。
「もちろん!今度おあいしたら、いただいたお菓子のかんそうをお伝えするやくそくを、しましたの。また、あえますかしら。」
「そうかい。また会えるよ、そう、また…すぐに…」
お父様は穏やかに笑ってから、少し遠い目をしていました。
そんなお父様の様子も気にならないくらい、王子様にまた会えることに幼い乙女心がきゅんきゅんして、次にいつ会えるのはいつかしらと胸を躍らせていました。
まさか、その日の午後にすぐ会えるだなんて思いもせずに。