23/24
23)婚約者はいつも、想っている sideユリウス 3
キール殿に手紙を託し、リリアーヌの答えを知るまでの時間は永遠に続くかと思われた。
報せを受けた母はお茶会を切り上げて帰宅し、父も仕事が手につかないと言うので、家族3人、客間でキール殿からの連絡を待った。
この世の絶望を詰めこんだかのような部屋に、執事がキール殿からの手紙を持ってきたのは、キール殿が我が家を辞して1時間ほどしてからだった。
“成功”
彼からの手紙はただ一言で、宛先も差出人の名前もなかった。
少しでも早く報せようとしてくれたのだろう。
その一言は、福音かと思うほど神々しく、思わず涙が流れた。
そしてその後リリアーヌからの手紙が届いたときは感情が高ぶり、部屋が秒でリリアーヌへの愛を綴った紙で埋まった。
「さすがに処理が追いつかないので庭で読んでほしい」と使用人から懇願されてしまったが、それはリリアーヌが知る必要はない話だ。