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婚約者から突然、情熱的かつ膨大な量の恋文が届きました  作者: つむき むつ


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22/24

22)婚約者はいつも、想っている sideユリウス 2

 先触れとほぼ同時に現れたキール殿は、険しい顔をしていた。


 「ユリウス殿、もう限界だ。昨日、城へ行った日にリリーは、貴方の素の姿を見たようだ。また、その時の会話を聞き、貴方に嫌われているが無理して結婚すると勘違いしている」

 挨拶もそこそこに告げられたキール殿の話に、全身の血の気がひき、くずおれそうになった。


 私は確かに、リリアーヌの“王子様”たらんと努力して、リリアーヌの前では“素敵な王子様”である。

リリーヌの前()()では。

 それ以外の場では笑うことはなく、口調も冷たく辛辣で王子様からはほど遠いと自覚している。

 自分が“鬼の宰相補佐”と呼ばれていることも知っている。


 リリアーヌはそれが私のことだとは夢にも思わず、私の他にもう1人宰相補佐がいると思っている。

 その人物と共に働いていて大変ではないかと、心配してくれたこともある。

 本当に、リリアーヌは優しさでできているに違いない。愛しい。

 大丈夫だと告げたときの、ホッとした顔も可愛らしかった。

 私は嘘は言っていない。仕事は問題なくこなしている。

 ただ“鬼の宰相補佐”が自分のことだと告げなかっただけだ。


 現実から目をそらし、リリアーヌのことを想うとたちまち、リリアーヌへの愛がびっしりと綴られた紙がわき出す。

 家の者も慣れたもので、すぐに紙を回収し、下がった。


 「もう、リリーに全て話した方がいい。チャムリーの天使をこれ以上、傷つけたくないのなら」

 キール殿の最後の言葉に、私は決意した。

 何より大切な彼女を傷つけてまで、私は何をしているのか。


 「これを、頼む」

 私は昨日わき出したリリアーヌへの紙の束(手紙)を、キール殿に託すことを決意した。

 決意したのだが―。

 「ユリウス殿、分かったから。貴方の気持ちはしっかりと伝えるし、悪い結果にはならない。だから、紙束から手を離してくれないか」

 頭では分かっていても、これを読んだリリアーヌがどう思うのか。それを考えると、紙束から手を離すことができなかった。


 キール殿に紙の束(手紙)を託せたのは、それから数分経ってからだった。

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