20)婚約者とゆっくり、幸せになりました
ユリウス様はそのまま私の足下にひざまずき、私の左手を優しく握りました。
「ねえ、リリアーヌ、誰より愛しい君に誤解されるくらいならと告白したが、君はこんな私と一緒にいてくれるだろうか。君がこの手をとってくれるなら、この世の全てのものから君を守り、この世の誰よりも君を慈しみ愛することを誓うよ」
そう告げるユリウス様は、やっぱり王子様のように素敵でした。
そしてその言葉はまるでプロポーズの言葉のようで、私の心はふわふわと浮き立ちました。
ユリウス様からわき出て舞う紙が、祝福の紙吹雪に見えてきます。
「私もユリウス様とお会いできない方が、悲しいです。私もユリウス様と、ずっとずっと、一緒に過ごしたく思います」
そう答えると立ち上がったユリウス様に、初めはそっと、でもすぐにぎゅうと力強く抱きしめられました。
「魔法省には解除方法を早く考案するよう督促している。それに最近は多少コントロール出来るようになったんだ。実際の世界一可愛らしいリリアーヌ、君を前にしたら愛しさが暴発してしまったが」
そう言って少し照れたようにはにかむ表情は、いつもの穏やかな微笑みとまた違い、私の胸がきゅんっと音を立てました。
「少し読むのにお時間をいただくのと、…実は時々読み飛ばしてしまうのですが、ユリウス様からのお手紙はいつでも大歓迎です!」
そうお伝えすると、ユリウス様は「ありがとう」と私の大好きなキラキラ輝く笑顔で微笑みました。
その日は、今まで見たことのないユリウス様の表情を沢山見ることができました。
ユリウス様が童話の中の王子様ではなく、1人の人間だという当たり前のことを思い出しました。
でも、そんなユリウス様のことが私は大好きで。
そしてやっぱり、彼は私にとっての唯一の殿方なのです。
◇ ◇ ◇
そうして、事の真相を教えてくださったユリウス様は、以前と同じように(いえ、以前よりも頻度があがったかもしれませんが)私に会いに来てくださるようになりました。
とっても情熱的なお手紙に、キラキラ輝くお菓子を添えて。
◇ ◇ ◇
結局、結婚式までの間に有効な解除方法は見つかりませんでした。
どうなるかと思っていたデビュタントの舞踏会や結婚式ですが―
私のドレス姿を見た瞬間は紙が散ったものの、元々人より自制心の強いユリウス様の努力により、会場では紙が舞い散ることもなく終わったのでした。
そうして、王子様と結婚した私は、いつまでもいつまでも、幸せに暮らしたのでした。
~めでたし、めでたし~