2)婚約者に突然、出会いました 2
いよいよ訪れた公爵家のお庭は、風船が舞い、花が咲き乱れ、所々に小さな動物の形に刈られた低木まで飾られていました。
お母様と仲の良い公爵夫人が、私のお茶会のデビューの日なのだからと、いつものお茶会よりも愛らしい雰囲気にしてくださったそうです。
可愛らしいものであふれた庭園に心をうきうきとさせながら、公爵夫人にご挨拶をしました。
「アマンダさま、ほんじつはお茶会におまねきいただき、ありがとうございます。ご招待いただいたひから、とてもとても、楽しみにしてましたの」
「まぁリリー、お誕生日から日が経っていないのにすっかり立派なレディーね。今日は楽しんでいらしてね。後で息子のユリウスも顔を出すと言っていたから、仲良くしてあげてくれると嬉しいわ」
アマンダ様はそう言うと、「お菓子はあちらよ。」とこっそり教えてくださいました。素敵なウインクを添えて。
思わず私がお姉様を見ると、お姉様もゆったりと微笑みかえしてくれました。目の奥をキラキラと輝かせながら。
ついに公爵家の"キラキラ輝く可愛らしくも美味しいお菓子たち"をたべられるのです!
お姉様と私はご挨拶を済ませると、上品かつ素早く歩いて(これもお茶会のための用意で、お姉さまに教えてもらって身につけました)会場の奥に向かいました。
そうしてたどり着いた白く豪奢なテーブルの上は、まるで天国のようでした。
つやつやと輝くフルーツのたっぷりと乗ったタルト。ぷっくりと可愛らしくアイシングされたクッキー。色とりどりのマカロに、お花や白鳥の形に飾られた瑞々しい果物。狼の口のきれいに開いたスコーンと、こっくりとしたクロテッドクリーム。キラキラと光り輝くジュレの器はくりぬかれたメロンの皮でできていましたし、綺麗に並ぶマドレーヌからはバターの香りがふんわりとしました。その全てがキラキラと輝いて、私たちを迎え入れてくれたのです。
「リリー、どれも美味しいけれど、種類がたくさんなの。気に入ったものでもまずは1つずついただくのが、後悔しないコツよ」
お茶会上級者のお姉様がこっそりと教えてくれるのに、力強くうなずきながら私は、ベリーの載った小さなタルトを口に入れました。
噛んだ瞬間にプチプチとはじけるベリーからは甘酸っぱいシロップが流れ、少しやわらかいカスタードクリームと溶け合い、さっくりとしたタルトがそれら全てを包み込みました。それはもう、夢のような味でした。
その味が消えるのを惜しみながら嚥下した瞬間、私の胸に影が差しました。正確には、私の小さな胃に。
突然止まってしまった妹にお姉様はすぐに気がついて、肩に手を添えてくれました。
「リリー?」と様子を伺うお姉様と目が合った時、私は泣きたくなりました。その顔を見て、「どうしたの?」と更に優しく聞いてくれるお姉さまの手をぎゅうと握りながら、私はお姉さまの耳元に小さく囁きました。
「リボンがぎゅうとむすばれていて、もうおなかに入りません…」