17)婚約者に突然、会えました 1
しばらくの間、ユリウス様からの紙の束にお手紙を返す日々が続いた後、ついにユリウス様にお会いできることが決まりました。
やはりよく分からない内容もある情熱的な紙の束を今日も時間をかけてよんだところ、明日久方ぶりにユリウス様が会いに来てくださるというのです!
キラキラと輝きそうな1日に、私の心は躍ります。
その紙の束と一緒に、アイボリーのワンピースと、アンバーで作られたたんぽぽのイヤリングが添えられていました。
その小さな愛らしいお花は、光に当たるとやわらかく光り、眺めているだけで幸せな気持ちになります。
「明日はこちらを身につけたいわ」
そう伝えておけば我が家の優秀な侍女達は、髪型から靴までを全て整えてくれるのです。
添えられていた、相も変わらず長くところどころよく分からない紙の束を(時々読み飛ばしながら)読むと、ユリウス様も明日を楽しみにしてくれていらっしゃるようです。
何をお話しようかしらと、そわそわしてしまいます。
この日もドキドキとして眠れないかと思いましたが、ユリウス様からの紙の束を時間をかけて読んで疲れていた私は、お母様の助けもなく夢の世界に旅立ったのでした。
◇ ◇ ◇
翌日、ユリウス様から届いたワンピースとイヤリングを身につけ、髪の毛をハーフアップに仕上げて白いリボンを編み込んでもらった頃、ユリウス様がいらっしゃったと執事が迎えに来ました。
ユリウス様にお会いするのはお久しぶりで、ドキドキと心臓が踊ります。
走りたいのをこらえ、一歩一歩廊下のカーペットを踏みしめて進みます。
客間に入るとユリウス様がお茶を召し上がっていて、私が現れると立ち上がって両手を開いてくださりました。
私はユリウス様の前でだけ許されている令嬢走り(お菓子を沢山食べたいために身につけた走り方)を発揮して、そのお胸に飛び込みます。
ユリウス様は私の勢いに関係なく受け止めてくださり、さらにぎゅうと…そう、ぎゅうと抱きしめてくださったのです。
と、その時、部屋に紙が降り注ぎました。
このまま部屋にいたら圧死をしてしまうのではないかという量の紙でした。
そのどれにも“リリアーヌ”と書いてあったことも、その筆跡がユリウス様のものだったことも、ユリウス様に抱きかかえられて客間から脱出した私は気がつきませんでした。