15)婚約者は突然、回想を始める sideユリウス 2
初めてリリアーヌに会った夜、7歳の私は両親に「リリアーヌ嬢と結婚をしたいです」と伝えた。
父と母は大層喜び、母は「リリーが私たちの義娘に…ユリウス!絶対に逃さぬようになさい」と檄をとばし、父は「だがリリーが結婚したいと言わなければ、たとえお前でも結婚は認めぬ」とどちらの親なのか分からないことを言い出した。
そこでリリアーヌをよく知る母に協力を仰いだところ、チャムリー侯爵夫人にお伺いをたててくれた。
いわく、リリアーヌは今、童話の王子様にぞっこんである。
いわく、リリアーヌは今、王子様との結婚に憧れている。
いわく、リリアーヌお気に入りの童話の王子は、私と同じ白銀の髪の毛である。
そこで母は『ユリウス王子様化計画』なる、王族に知られたら不敬罪で捕縛されそうな計画を立てたのだった。
その頃の私は、“顔は天使、中身は悪魔”と言われるほど粗野だった。
愛想笑いの1つもしなかったものを、リリアーヌを手に入れたい一心で、微笑みを覚え、丁寧な言葉遣いと所作を学んだ。
また、リリアーヌを苦労させぬよう勉学に、リリアーヌを守れるよう剣術に励んだ結果、宰相補佐にまで引き上げてもらえたのは、もう少し後の話。
その努力に2年間費やし、リリアーヌの茶会デビューで母の助言通りに後から現れ印象づけたまでは良かった。
その後、リリアーヌから「お初にお目にかかります」などと挨拶される瞬間までは。




