13)婚約者から突然、恋文が届きました 2
親愛なるリリアーヌ
私の太陽。私の女神。
今日も君は、花のように健やかに過ごしただろうか。小さな傷を作ることもなく、一滴の不安がにじむことのない日を過ごせただろうか。
(中略)
君に会えない日々は、深い闇のようで、今すぐにでも会いに行きたい。写し絵ではないリリアーヌの愛らしい笑顔を見たいし、その美しい空色の瞳に私を写してほしい。そのまろびやかな頬に触れたいし、君の小鳥のような声を直に聞きたい。
しかし今はリリアーヌに会うことは叶わない。そのことで心臓が止まったかのように思うこともあるが、リリアーヌ、可愛い私の小鳥は少しでも私に会いたいと思ってくれているだろうか。もしも私に会えないことを少しでも寂しいと思ってくれるのならば、私に手紙を書いてくれると嬉しい。今はまだ会うことは叶わないが、私の女神のリリアーヌ、君の字だけでも見ることができたら、この闇の中に少しの光がさす気がするんだ。
お願いだ、リリアーヌ。可愛い可愛い私の宝石。
愛しているよ。世界の誰よりも。
ユリウス=ギネス
◇ ◇ ◇
お兄様が持ち帰られた紙の束は、なんとユリウス様から私にあててのお手紙でした。
読み終わるのに1時間はかかりました。
途中よく分からない言い回しがあったりと、少し飛ばしてしまったことは、ユリウス様には秘密にしておいた方が良さそうです。
しかし、どうして突然、こんなにたくさんの紙の束を?
会えなくなる前は、ユリウス様からお手紙が届くこともありました。
でもそれは常識的な枚数で、内容も分かりやすいものでした。
字は、今回の紙の束と同じく流麗でしたけれど。
それにしてもこの内容を直筆でお書きになったとは、ユリウス様のお手はご無事でしょうか。
結局、1時間かけて読んで分かったことは、“ユリウス様も私を好いてくださっていて、会いたいと思ってくれている”が、“今は会えない事情がある”ので“私がお手紙をお送りすると喜んでくださる”こと。
それならば私がすることはただ1つ。
ユリウス様へのお返事をしたためることなのです。
私はすぐに自分の部屋へ戻り、ユリウス様へのお手紙に使う便箋を選び始めたのでした。