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1)婚約者に突然、出会いました 1

 私が婚約者のユリウス゠ギネス様に初めてお会いしたのは、ユリウス様が9歳、私が6歳になりたての穏やかな春の日でした。


 6歳のお誕生日にお父様から、「リリーもついに茶会に出席する年となった。リリーの披露目は、この春のギネス公爵家の茶会で行う。つつがなく用意を進めるように」と告げられました。

 それは、その日聞いたどのお祝いの言葉よりも嬉しく、心が躍りました。

 かねてよりお姉様から聞いていた、公爵家の"キラキラ輝く可愛らしくも美味しいお菓子たち"をついに私も口に出来る!

 あまりの喜びに、お父様にぎゅっとハグをして、スカートの端をつまんで軽くステップを踏んでしまい、注意されてしまったほどでした。


 それからお茶会までは今までより一層マナー教育にとりくみ、もりもりと食べても品良く見える食べ方の研究にも力を入れて“つつがなく”用意を済ませていきました。


◇ ◇ ◇


 そうして遂に訪れたお茶会の日。

 空は青く澄み渡り、爽やかな風が少し垂らした髪の毛を優しくゆらす、とても素敵な春の日。

 そう、その日は正にお茶会デビューに最適な日だったのです。

 けれども私の心は大荒れでした。その日まで頑張ったマナー教育の成果で、表情(おもて)には出なかったものの、私の心の中はじっとりと雨が降っているようでした。

 理由はひとつ、ドレスの腰に結ばれた大きなリボンでした。


 腰に結わえたパールホワイトの大きなリボンの下から、スカートがふんわりと広がる様子がとても可愛いデイドレス。一目見て絶対にこれにすると決めた、淡い空色のパフスリーブドレス。

 まさかそのスカートの広がりが、腰についたリボンをぎゅうときつく結ぶことで更に映えることなど知らないまま決めてしまったドレス。

 仕事熱心な侍女達は、()をより輝かせるためにぎゅうっと結んでくれたのです。もちろん技術力も選りすぐりの者達なので、やみくもに締め付けるようなことはなく、苦しくないけれど無駄なゆとりもない絶妙さで。

 おかげでスカートはふんわりと広がり、今まで着たどのドレスよりも素敵に見えました。


 まさかその絶妙な締め具合があだになるなど、最高の仕事をしたと誇らしげに見送ってくれた彼女たちも、キラキラ輝くお菓子たちに思いを馳せながら馬車に乗った私も、思いもしなかったのです。

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