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会場じゃないの…?

僕の名前は上杉凛、女子大生だ。今僕は小学校からの親友、立花由癒の付き添いでコミケというものに来ている。同人誌売るから売り子になってほしいって頼まれたんだよね。昔から由癒は僕に色々なコスプレをさせてはコミケとか色々な場所に連れてって売り子をさせてくる。まあ、由癒のお願いだからいいけど。最近は由癒が、いや日本の大勢の女の子がはまっているって噂の救国の乙女というありきたりな名前の乙女ゲームのコスプレをよくする。今日はメインヒーローらしい腹黒王子のリヒトだ。一応靴で身長もってるけど本物はもっと高かったし僕よりずっとイケメンなんだよね。あ、もちろん僕も救国の乙女全ルート攻略済み。どうせコスプレするなら少しでも本物に似せたいからね。プレイも大事。僕は一度売り場を離れ御手洗に行っていた。そして帰り道なんだけど、こんな僕でもかなりクオリティは高いらしくてさっきから人が絶えない。困ったな、戻らなきゃならないのに……


《お願いだ、召喚成功してくれ》

「可憐な聖女様、私は今やらなければならない事があるのです、少し行かせていただいても?」

「嫌です、聖女として世界を救うのでリヒト王子も一緒にいてください」


特にこのよくわかんない女の子が大変。写真くらいならいいけど僕を本物のリヒト王子としてべったりくっついて離れない。どうしたものか……


《神様、祈りに答えてください。聖女様を遣わしてください》

「え、誰の声……?」

「リヒト王子?」


この女の子には聞こえていないみたい。じゃあ気のせい、なのかな?とりあえず由癒の所に帰らなきゃ……


「本当にごめんなさい。今手が離せる状況ではないのです」

「なんでですか!私と私と愛を誓い合ったじゃないですか!」


(それは貴方のゲームの中での話でしょ!僕はリヒト王子じゃないし君とは恐らく初対面だよ!!)


心の中でそう叫び女の子から手をすっと抜いて歩き始める。少し視線を前にやると誰かが持っていた鏡に反射した光が当たって思わず目を閉じる。眩しい


「召喚成功だ!」


そんな声が耳に届く。召喚?なんのことだ。あ、でもこの声救国の乙女の召喚シーンに出てきた大臣とやらの声にそっくり……。あ、もしかしてコミケのイベントで救国の乙女のリアルイベントが開催的な感じかな?で、コスプレイヤー集めてなんかやってるみたいな?あれ、そんな会場場所知らないんだけど。もしかしなくても僕迷子?……あ、それとも僕こんな格好してるから役者と間違えられた?じゃああそこで座ってる人影はもしかして聖女役?……よし、ロールプレイするしかない。コツコツ、とわざと足音を立てながら人影の方に歩いていく。まだ煙が邪魔であまり姿は見えないが聖女役の人やけに身長高めだな?


「おい、あの御姿は……」


煙の先に座っていたのはリヒト王子だった。あ、なんだ、王子役いるじゃん。 めっちゃ本物に近いしすげぇ……これがプロ……うーん、初舞台で緊張で腰抜けちゃった感じなのかな?


「んー……大丈夫かい?ほら、手を貸してあげるよ」


少し悩んでから僕はとりあえず立たせるために手を差し伸べる。よくわからないけど多分これで正解のはず


「おーい、お兄さん大丈夫?」


いつまで経っても動かない役者さんに首を傾げる。役者さんはあ、あぁと気の抜けたような返事をしながら僕の手をとった。そのまま引っ張って立たせながら辺りを見る。すごいここ、めっちゃ丁寧に作り込まれてる会場だ。天井の模様も柱の数もすべて正確だ。でも他のお客さんらしい人いない……もしかして僕、開場前の場所に迷い込んじゃった?


「申し訳ないんだが迷子になったみたいで…ここ特設会場?販売ブースどこかわかるかな?」


あ、やべ、リヒト王子のロールプレイが抜けてない。めちゃ失礼なやつになっちゃうじゃん…謝ろうとした時目の前のドアが開き王様の姿した役者さんが現れる。王様の再現度もすごい


「リヒトよ、聖女召喚に成功したのか!おかげで周辺の瘴気が一気になくなった…ぞ……」


王様の役者さんは目の前のリヒト王子役の人と僕を交互に見て驚いた顔をしていた。まあそりゃそうだ。こんな場所に知らない人いたらびっくりするよね。というかこのシチュエーションまるで僕を聖女とした時みたいな…………ん?


「リヒト、ーーーーでーーーーーー?」

「ーー、ーーま…ー?ー、ーーー?」

「ーーーから、ーーーーーーーーーーーーーか、と」

「そ、ーーーーー」

「ーー、そうだ。ーーーーーーーーにーーーーーーーー、ーーーーーーーーーーーー?で、ーーーーーーーーー?ーーーーにーーーーーーーーーーーーが……」


二人で何かを話しているようだが頭に入ってこない。なにかおかしい。本当にこれ僕が迷い込んだからだとしてなぜ今の今まで追い出されなかった?ドアはひとつしかないのにどうやって僕はここに入った?ここまで歩いてきた記憶は無い。再現度の高いこの部屋にリヒト王子と王様…………大臣たちまで人数も声もそっくりだ。じゃあもしかして…………


「ス、テータス……オープン」


小さくそう呟くと同時に目の前にゲームでよく見るステータスのウィンドウが現れる。本当にここは救国の乙女ゲームの中……?


「は、はは……」


乾いた笑いがこぼれる。じゃあもしかして向こうの世界に帰れない、とか……ないよね…どう、しよう…………


「はは、聖女ってのは女とは限らないんだな」


リヒト王子のそんな声が耳に届いた気がするが僕の視界は段々と暗くなった

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