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楽しい楽しい()食事会

食堂に着くと既に元気そうな王様と王様と一緒に談笑してるギフトとジャルジーがいた。僕が入ると王様はこちらに気付きすぐに立ち上がって目の前に来て跪く


「聖女様!お陰で私は元気になりました。とても感謝しております」

「あ、いえ……俺は当たり前のことをしただけです。顔をあげてください」

「そんな訳には……どう感謝すれば…………」

「聖女ですから、お気にならさず」

「ありがとうございます。本当に、本当にありがとうございます」


ここまで感謝されるとなんだか照れてしまう。僕はただ知っていたから助けれただけなのに。でも感謝されるのはやっぱり嬉しい


「ぜひ!よろしければ我が娘と結婚いたしませんか?」

「え?」

「聖女様のような素敵な方に娘の婚約者になっていただけたら娘の心配はいらなくなるでしょう。今娘は学園に泊まり込んで帰ってきてないのですがそれはそれはかわいらしく美しく心優しい少女なのですよ!ぜひぜひ!我が娘を!」

「いや、その…」


女の子じゃなければこんな結婚迫られないと思ってたのに押しが強いよ


「父様、そろそろおやめください。聖女様が困っておられます」


あまり止める気のなさそうなリヒトがそう声を出す。こっち見てもないし興味ないだろお前。ちなみにその女の子はメアリーっていうお姫さま。ギフトと同時期に生まれた少女。メアリーちゃんの母は王妃ではなく側室ではあるがなんとかっていうでかい貴族の人のため後ろ盾があるようなもので王様はああいっていたが実際は超が付くほどのブラコンで兄と仲良くなった聖女様を妬んで恨んで最終的に殺そうとする人。まぁ、そんな考えに至るまでに色々なことがありすぎたんだけど。あ、もしかして僕はメアリーちゃんも助けなきゃだよな。僕ってば、不幸になるって……もうすでに不幸に陥っているってわかってて放置できるような人間じゃないし。ただ、メアリーちゃんルートは如何せん難しすぎるんだよなぁ。あの鬼畜って呼ばれた公式自身が認めるレベルの鬼畜。でもきっと僕なら大丈夫、僕は攻略法ちゃんとわかってるから。王様からしたら現時点ではまだかわいいかわいい娘なんだろうなぁ。


「俺には心に決めてる人がいるので、申し訳ありません」


翔琉の事を思いながら言葉にする。まぁこっちの世界にずっと居たらそのうち翔琉にも忘れられちゃいそうだけど……でも僕はきっと一生翔琉のこと忘れないし忘れられないから。翔琉に会いたい


「召喚される前の世界での話か?それなら……」

「父様!」


何かを言いかけた王様の言葉をリヒトが大声で遮る。びっくりした。いや、王様が何を言おうとしたのか僕にはわかる。本来召喚された人は元の世界には戻れない、とされている。実際は元の世界に戻れるが魔力の消費量が多く実質的に不可能なだけである。こちらの世界に召喚される際は目には見えない、魔力を司るとされている精霊たちの手を借りてどこかの世界とゲートを繋げて召喚させる。ただ、違う世界に転移するためには向こうの世界に行きたい人が自力でゲートを繋げ維持したまま通っていく必要がある。一見簡単に聞こえるがそのゲートを繋げるのが厄介らしい。公式ではそんな感じとふわっとした回答しか出していない。聖女ほどの魔力量があればとにかく戻れるっていうことらしい。そして元の世界に戻る際はゲートを繋げ渡るためにほとんどの魔力を使い切ってしまい元の世界では魔法が使えなくなったという設定だ。ただ聖女としての力が覚醒したお陰か病気知らずで怪我もすぐ治る不思議な体になったらしい。僕も元の世界に戻ったらそうなるのかな?あ、さっきの説明でわかったかもしれないけど今の僕でも戻ろうと思えば戻れなくはない。ゲームでの聖女は戻る方法が分からずこの世界に留まっていたけど。僕の場合は……もし、もしこれが全て夢だったとしてもそれでも、このままだとこの世界は滅ぶって分かっていてそのまま放置なんて出来ないから


「それなら、なんですか?」


何を言おうとしたのかわかってる上で僕はそう聞いた。王様は慌てた素振りを見せるだけで何も言うことは無かった


「ではお食事に致しましょう」


気まずい空気を破るようにリヒトがそう言った


「あぁ、ありがとう。そうしようか」


リヒトの誤魔化しに乗ってあげる。流石にこの空気のままだとギフトたちが可哀想だし。そう考えていると高級フレンチのフルコースみたいな料理が出てきた。どれもとても美味しそう。ぐー、と僕のお腹がなった


「では、神様に祈りを捧げて感謝していただきましょう」


王様がそう言って祈り始めた。僕も形だけは真似をする。食前の祈りなんて習慣僕にはないからね。祈りの言葉なんてゲームでは省略されてたけど……公式、絶対に祈りとかよく知らないだろ。なんだよ、神様今日も一日御見守りください、って。一言だけすぎるだろ。もっとこう、なんかあるだろ。


「いただきます」


僕は祈りについて深く考えるだけ無駄だ、と思い、それだけ言うと食べ始めた。まずは目の前に出されたスープ。かぼちゃのポタージュだ!美味しい!そのあとシャキシャキ新鮮な音のするサラダ、バターを塗ってこんがり焼いたパン、良い感じに火の通ったステーキ、中からトロっとチョコが溢れるフォンダンショコラ、めちゃんこ甘いフルーツの盛り合わせ。うん、幸せ。僕はぺろり、と食べてしまった。ふむ、毎日こんな美味しいもの食べて、ギフトたちはなぜ太らないんだろうか、そう思いながらそちらに視線を向ける。僕は衝撃を受けた。普通に残してる。え、もったいない。


「なぁ、ギフトたちは完食しないのか?残したらもったいないだろ」


僕としては当たり前のことを言ったつもりだったが、かなり驚いたような反応を示す。元のゲームでは、聖女からもらったクッキーはいつも美味しそうに全部食べてた。そういえば公式が《食べる量を減らして動けば痩せる。つまり胃の容量を減らせばいい》とかいう、よくわからない暴論を呟いていたことがある。もしかして、ゲーム内で不透明だった部分は公式のイメージで描かれているということなのだろうか?となると厄介な部分も出てきそうだな。少しずつ僕の知っているゲームとズレていったり……うん、それは怖い。簡単にバッドエンドに行くゲームだぞ。不確定要素はかなり怖いな。違和感を覚えたらすぐに対応を考えなければ……


「普通は食事は全部食べ切るものではないのでは?」


リヒトの当たり前と言いたげな顔を見て絶句する。なんで残すんだ。そんなの、そんなの……


「食材がもったいないだろ!」


僕が思い切り言うと王様も含めみんな驚いた顔をする。


「なぜ残すとわかっていてこんなに食事を作らせるんだよ。馬鹿なのか?食費だって国民から出してもらってるんだろ?どうせ王族だからとかいう理由で高級食材使ってたっかい金で一流シェフ雇って。こんなの国民が知って暴動が起こっても仕方ないレベルだぞ。コツコツ汗水流して働いて稼いだ金を奪って結局無駄な食事を作って。もったいないと思わないわけ?あぁ、それともこの食事用意するために、どれくらいお金がかかって、そのお金稼ぐのにどれだけ努力が必要かもわからないからそんなことできるんだ?一回街に出て労働してみれば?お金稼ぐことの大変さをきっと学べるよ。というかまずすべきことはこの料理をどうするか考えるところからだね。この国にはスラム……貧民街もあるんだろ?その日の食事にありつけない人も多いんだぞ。別に料理を残すことが悪いわけじゃない。その日の体調もあるだろうし、腹がそこまで空いてなかったとかもあるだろう。だが、毎回大量に残すなら最初から料理を減らしてもらえばいいだろ。それか大皿におかずとか用意してもらって自分で食べれる量取って食べる。いわゆるバイキングってやつだな。それで残った料理はメイドやら騎士やらが食べれば食品ロスも一気に減るだろ。少しくらい考えたことあるか?わかる、お前らもお前らで苦労してきたことも。でもあんたらは王族だ。王族として生まれたからこうやって美味い飯にありつける。残しても怒る人はいない。二日間、水のみで生活してみろ。そうすりゃ食べ物のありがたみもわかるだろうよ」


ぺらぺら話していて途中で気づいた。突然怒ったように話し始めた僕を見て固まっている。ふむ、どうしようもなく気まずい。逃げるか


「じゃ、じゃあそういうことで少しでも考えてくれると嬉しいですー」


僕はそれだけ言って引き留める声も聞こえないふりをして食堂を出ていった。

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