ぬいぐるみを回収するお姉さん
冬の童話祭2023、参加作品です。
陽に焼けたお姉さんが、大きなカゴを持って歩いています。
お姉さんはゴミ収取所に、ポツンと落ちている、ぬいぐるみを見つけます。
クマさんのぬいぐるみです。
所々に穴が開き、クマさんの黒い瞳は、ちょっと悲しそう。
「頑張ったね。一緒に帰ろう」
お姉さんはクマさんをカゴに入れます。
「あら、回収のお姉さん、ウチのも一つ、お願いできるかしら?」
庭先を掃いている奥さんが、お姉さんに声をかけます。
「はいはい。承ります」
奥さんは家の中から、ホコリまみれのぬいぐるみを持ってきました。
ウサギのぬいぐるみです。
「娘が大きくなったから、もう、いらないみたいなの」
ホントは真っ白いウサギさん。
灰色ウサギになってます。
「頑張ったね。一緒に帰ろう」
あちこちで、ぬいぐるみを回収したお姉さん、自分のお家へ帰ります。
連れてきたぬいぐるみたちを、優しくお風呂に入れるのです。
悲しそうだったクマさんは、瞳がきらきら。
灰色ウサギはもう一度、生まれた時の真っ白に。
「みんな、子どもたちを幸せにしたね。一緒に泣いたり、笑ったりしたよね」
古ぼけたぬいぐるみたちは、コクコクと頷きます。
子どもたちとの思い出を、ほわほわと思い出します。
楽しかったね。
いつも一緒に、お布団で寝たね。
きみの手、あの子の手。
あったかかったよね。
いつかまた、どこかで会おうね。
ほわほわした思いは、雲になります。
雲は少しずつ分身を、地上に落とします。
雲の分身を集めて、人はぬいぐるみを作ります。
お姉さんのお家は雲の上。
今日もまた、お姉さんはぬいぐるみを集めに、地上に降りるのです。
おしまい