齢50歳にして四苦八苦
人には、明らかに潮目が変わったとわかる瞬間が存在する。
俺にとってそれは、令和4年8月23日火曜日午後9時半だ。
5年前、小説家になったると一念発起し、いろんな小説を書いて来たがまったくどうにもならなかった。それが――。
「前も言うたけど、日常そのままを書いた方がええんちゃう?」
妻の一言ですべては変わった。
そもそも小説を書き初めた頃は、日常のできごとをそのまま書いていて、妻にもまずまず好評だったのだ。
迷走が始まったのは4年前、『そろそろ長編小説を』とファンタジー方面にシフトチェンジしてからだ。のら猫とお姫様が逆転して生まれ変わる小説とかいろいろ書いたのだが、どれもこれも妻に酷評された。2度小説の新人賞にも応募したが箸にも棒にも掛からず、全部で2000枚近くの原稿は天に召された。
それでもしぶとくファンタジーにしがみつき(なぜかそうなる)、緑色のセントバーナードが願い事を叶えてくれる小説を完成させている途中だったが、ついに目が覚めた。
俺にファンタジーはまったく向いとらん。
俺は俺の人生そのままを書くぞ!
燃え上がった俺は、日常そのものをネタにするために、まずは日記を書くと決めた。
早速翌日から、仕事の残業の取り組みに特化した日記を書き始めた。
同時に頭に浮かんだのは、得意の音楽プレイリスト作成を披露する音楽評だ。今、全米ヒットチャートではケイトブッシュの「神秘の丘」が大ヒットしていて、13歳の俺は「神秘の丘」を聞いていたが同時期に聞いていた曲にもたまらない夏の終わりの切なさを感じるし、誰かに伝えたい。
今しか書くタイミングはない。
思い立ち、放置していたフェイスブックに投稿したのが次の文書だ。
現在全米ヒットチャートでは、ケイトブッシュの「神秘の丘」がリバイバル大ヒット中。なんでも、テレビ番組で使われていたとか。
「神秘の丘」が発売されたのは1985年。13歳の僕は、FMステーション片手に、全米ヒットチャート全曲カセットテープに収める野望に燃えてていたので、「神秘の丘」は当然知っている。
丁度、今日みたいな夏の夕暮れの空に秋の気配を感じながら聞いていたのを思いすが、「神秘の丘」と一緒に聞いていた曲も、夏の終わりにはグッと来る。
夏の終わりの切なさを感じるのは僕だけかもしれないが、その曲目がこちら。
1.your love /アウトフィールド
少し前、ヤクルトの選手の登場曲で流れていてハッとした。
2.something about you/レヴェル42
3.見つめていたい/ポリス
4.そして僕は途方に暮れる/大澤誉志幸
次のモーテルズの「shame」があまりに「見つめていたい」そっくりで、「そして僕は途方に暮れる」もあまりに「見つめていたい」そっくりで、この2曲は50歳の僕が付け足した。この2曲は1985年に発売された曲ではない。
5.shame/モーテルズ
6.duel/プロパガンダ
灘高に行った友達が、プロパガンダ好きな同級生がいると引いていたのを思い出す。僕は『さすが灘高、なんか分からんけどすげえ』と思ったのものだ
7.神秘の丘/ケイトブッシュ
大ヒットするきっかけとなったドラマは知らないが、きっと印象的なシーンで使われたのだろう。威風堂々とした曲調で切なくも神秘的な曲。原題は「running up that hill」だが、「神秘の丘」と邦題をつけたくなるのも納得。段々と盛り上がるスケールも壮大だし、最後の方はなんか悪魔的になって狂ってるし、物凄い曲だと思う。
8.state of the heart/リックスプリングフィールド
9.lay your hands on me/トンプソンツインズ
夏の終わりというよりすっかり秋になっているような気がするが、そこはことない切なさが漂っている。アルバムの1曲目を飾るこの曲だけが本人たちプロデュースで、他の曲は当時のヒットメーカーナイルロジャースのプロデュース。アルバムの中でこの曲だけが雰囲気が違っていて良いが、他はエレクトロの洪水となり聴いてられない(今の全米ヒットチャートは、さらにエレクトロの洪水だが)。思い入れがあるこの曲が最初にシングルカットされヒットして良かった。
フェイスブック仲間からちょっとした反応があって、俄然やる気が出て来た。緑色のセントバーナードが願い事を叶えてくれる小説を書かなくて良くなり時間もある。
昔書いた横山ノックとオバマの似顔絵を使って、音楽対談をさせてみたらどうや?
めっちゃ個人的な思い出を入れよう。
強引に関連づけて、お勧めの新譜を紹介しよう。
どんどんアイデアが溢れ、楽しくなって来た。曲を多量にダウンロードする度にプレイリストを作っているから、すでにプレイリストは大量にある。
アーティストの情報をいろいろ調べないといけないし、仕上がるまで1週間ほどかかったが、9月4日フェイスブックに「第1回青い車ロック系」を投稿した。