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雪積もりて水面には椿の舟

作者: 昼咲月見草

『お舟がぽとりと落ちました


 雪が積もる山の中


 小さな川のすぐそばで


 赤い椿のお舟が一艘


 また一艘


 あちらでは白い椿のお舟がぽとり


 流れに向けて落ちました』




今日は1日、朝から吹雪いて


横なぐりに、雪


舞い上がって、立ち上って、雪


くるくると、舞って踊って


吹雪いて、雪


白の中に


艶やかな常緑の緑を隠して


世界はただ冬のためにあるようで





冬の旅は


足元から凍える寒さに耐えながら


吹きつける雪と殴りかかる風に耐えながら


行先を見失って


未来も、あなたへの道も


けれど





『お舟がぽとりと落ちました』





水面にゆらゆら椿の舟が


凍るような凍えるような


命をかき消す氷の世界でただひとつ


暖かな川の流れを探し当てる


きん、と冷たい空気に吐く息も凍り


白く白く天へと帰る


その厳しい世界でただひとつ


未来の待つ海へと繋がる川の道を


椿の舟が探し当てる





赤白斑入(ふい)り、椿舟


葉もろともに咲き落ちて


()く芯は仄かに燃え


世界をわずかに暖める





旅が始まる


暗く冷たい冬の旅が


けれど暖かい椿の舟は


旅人を守り、慰める



ぽとりと落ちる、不吉な花


水面に浮かぶわたしの舟


わたしとあなたの、わたし達の



それはいつか海へとたどり着く


迷うことのない道をゆく冬の舟


輝く朝陽を受けながら


川霧の祝福を受け


光へ 光の中へ


溢れるほどの光が、喜びが待つ未来の海へと


椿の一団は進む


黄金の朝陽の中


約束された未来へと


それはあなたの舟


あなたの、わたし達の







椿舟、



──────行け


       

       祝福された未来へと













挿絵(By みてみん)

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