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初めての待ち合わせ

恵理さん?いや、どう見ても俺より年下だろうし、恵理ちゃん?俺のまわりで、さん付けやちゃん付けで呼ぶような女はいないから、どっちも慣れないな。

仕事中はスイッチを切り替えるようにして乗り切ったが、休憩時間の頭の中は、ずっとこんな調子だ。

家に帰ってからは、待ち合わせ場所になってる公園の名前を検索して、ホームページを隅から隅まで読み込んだり、個人の日記サイトの話を読んで、自分とあの子に当てはめて妄想したり。俺はアホだと思う。ついでに言うと、俺の中のバカとアホの使い分けの基準は、バカはまだ親しみがもてるが、アホになると、救いようがないくらいどうしようもない奴、って感じだ。つまり俺は、救いようがないくらい浮かれていた。


それなのに俺は、指定された日曜日、ものすごく焦っていた。前日は、前から約束していた趣味の集まりがあり、久しぶりに遠出した。気持ちが盛り上がっていたからか、そこでも妙にはしゃいでしまい、1日テンション高く過ごした結果...あろうことか寝坊してしまったのだ。


飛び起きて最速で準備して、車に飛び乗った。駅まで走って電車を使うより、こっちのほうが早いだろう。高速を使えばすぐ近くまで行けるから...と気持ちだけが逸る。なんとか指定の5分前に駐車場に到着して公園に入るが、予想以上に広い。工場跡地にできた公園とのことだが、赤煉瓦の情緒ある建物が残り、視界いっぱいの緑との対比が眩しい。芝生では家族連れやデートで来てるらしい人が腰を下ろしていたり、一人で散歩してる人がいたり。その中からあの子を探すが、どうやらそれらしい姿はない。時間は13時を少し過ぎてしまった。


公園は、今いる広場以外にも、レストランや体験工房、製品が買えるアウトレットショップ、ギャラリーなどもある。この中のどこかにいるのか?探せってことか?これ以上遅くなると、帰ってしまうかもしれない。

いっそのこと美麗さんに連絡するか?でも、伝言係はしたくないと書いてあったし、実際、お礼の返信をしても無反応だった。今、連絡しても、客じゃない俺の電話は取ってくれないかもしれない。嫌な汗が背中をつたう。


ふと、案内板の横の掲示版が目に入った。レストランやショップの宣伝などの横に、様々な展示の案内もある。そのさらに横に、「◯◯週末ミュージック」の予定表。どうやら、週末に音楽会を行っているらしく、ここ3か月ほどの日付の横に、奏者の個人名や団体名、楽器の名前などが載った一覧表となっている。そして、開始は13時。場所は、公園奥のギャラリー会館。


「これかよ!」


今日の演奏が誰かとか、何の楽器かなんか見ないで、俺は、ギャラリー会館に向かってひたすらに走った。ホームページを何度も見たはずなのに、なんで、音楽会をやってることを見落としたんだよ!俺は本当にアホだ。ただ、公園の地図が頭に入っていたから、迷わず走って向かえることには、自分で自分にものすごく感謝した。自分で自分って何だよ。やっぱり俺はアホだ。


というか、これ、待ち合わせって思ってたけど、そう思ってたのは俺だけなんだろうな。

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