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ランチメニュー

しばらく車を走らせて、かなの気になっていたという店に着く。人気の店らしいから早めの集合にしたのだが、広めの駐車場にはもうすでに何台も車が停まっていた。


幸いなことに席はまだ少しだけ空いていて、俺たちは奥の2人掛けの席に案内された。メニューは席に1つだったので、かなが広げて、俺が見やすい方向に置いてくれた。メニューの大きさと持ってきたアルバムの大きさを頭の中で比べて、テーブルの幅に余裕がないから、料理が来たら席に置いて見ることが出来ないかもしれないと少し心配になる。


初めて来たというが、かなはメニューを知っているようで、パスタとピザを取り分けるコースにするか、それとも、取り分けずにそれぞれがパスタセットを頼むかを聞いてくる。

「大島さんと私の食べたいパスタが一緒なら、このお取り分けコースがいいと思うんですけど、違うのなら、それぞれ頼んだほうが絶対いいですよね。でも、取り分けコースで頼めるピザも美味しそう...」

そう言って悩みながらメニューをにらんでるかながかわいい。


「かなさんの食べたいパスタにして、取り分けコースにしようか?俺、パスタは何でもいいし、ピザも食べたいから」

「そうですか?じゃあ、お言葉に甘えて、取り分けコースにしちゃいますね。パスタは私が決めていいなら、ピザは大島さんが決めてくださいね」


こうしてメニューが決まり、店員に注文を告げる。


「じゃあ、早速だけど、写真見る?料理が来たら、これ、置く場所に困りそうだからさ」

そう言って、鞄の中からアルバムを出し、さっきのメニューとは逆向きに、つまり、かなが見やすい方向で机に置く。


「ありがとうございます!うわあ、きれいなアルバム!オレンジと青色で、空と海みたい」

「でしょ?俺もこれをロフトで見つけたとき、同じこと思った」

「大島さん、こういうアルバムはロフトで買うんですか?」

「いや、いろいろだけど。ロフトはたまたまだよ。先々週の金曜日に、会議で近くに行ったから、その帰りに寄ってみただけ」

本当は普段はもっと適当で、何ならデータの編集と保存だけのことがほとんどだということは内緒にしておく。


「その会議って、私にご飯のお誘いしてくれた日ですか?その日にアルバム買ってるってことは、やっぱり準備出来てなかったんじゃないですか」

かなが口を尖らせる。

「いや、でも、かなさんと約束してたら、めっちゃ急いで写真印刷して用意してたと思うよ!ただ、もしかしたら、こんなふうにアルバムにまとめる時間はなくて、写真の束を渡すだけになってたかもしれないけど...」

語尾がだんだん小さくなる...

「だったら今日で良かった。こんな素敵なアルバムにまとめた写真が見れますもんね」


そう言ってかながアルバムを開く。

かなは小さいかわいい魚が好きなんだろうなと思ったけど、最初は敢えて、海に潜る前の砂浜の景色を入れた。その後は、ウェットスーツを着て、機材を背負った後の自分の足だとか、一緒に潜った仲間の後ろ姿とか。だんだん、海に近付いて行くわくわく感みたいなものを感じてもらえたらいいなと思って、そういう写真にした。


かなは無言でアルバムをめくっていく。

「なんだか、自分まで海に潜っていく気分」

ようやく海の中を撮った写真になったとき、かながそう呟いた。どうやら自分の意図が通じたようで、俺は嬉しくなる。


「そう?海の景色や、機材とか、他の人も写してたからかな?」

「うん。いきなりお魚ってアルバムも素敵ですけど、こういう写真もあると、大島さんが海に行ったときの様子も分かって楽しいです」

かなが笑ってくれる。嬉しい。


次のページをめくろうとした時、店員がサラダを運んできた。取り分け用コースの2人分のサラダは割と大きめの皿に盛られているので、これを置いたらアルバムを広げられない。


とりあえず料理を食べようということになって、俺は、かなから返してもらったアルバムを、鞄にしまった。

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