表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/79

後悔

かなが駅に入って行くのを見届けて、ターミナルを出る。頭の中は後悔でいっぱいだった。

俺なんであんな下ネタの冗談言ったんだろ。

そういう冗談が通じる子かどうかも分からなかったのに。

ていうか、分かるよな...。高速下りて休憩出来るところって、あからさますぎるよな。


高速下りるときはすっかり暗くなっていて、辺りはそういうホテルがどこもきらきらと輝いていて、かなり気まずかった。下りてから駅に向かうまでもしばらくバイパスを走ったんだけど、そこにもたくさんあって、本当、居たたまれなかった。


休憩って言葉からそっち方面を連想した俺が完全に悪い。普段だったら女の子相手にそんな冗談絶対言えないのに、かながあまりにも楽しそうにしてくれたから、つい、甘えてしまった。冗談でも笑って流してくれるか、突っ込んでくれるか、もしかしたら受け入れてくれるかもとか期待したんだ。


調子に乗りすぎた。かなは俺と出かけたかったわけじゃなくて、耳慣れない魚が気になって、誘われたから見に行こうと思ってくれただけだ。楽しかったのも、水族館とうまい桜エビと海岸があったからだ。俺が楽しませたわけじゃない。連れてった場所が、かなにとって楽しい場所だったってだけだ。俺と出掛けたから楽しかったわけじゃない。


何うぬぼれてたんだろう。


あれこれ考えながらも、ちゃんと車は家に向かって走っていたようで、気が付いたらアパートの駐車場に到着していた。部屋の前まで来て、そういえば週末は実家に帰るからって金曜に食料を買い足さなかったことを思い出す。冷蔵庫、ビールが少し残ってるくらいで、食べるものがそんなにないかもしれない。


しまったなあと思うけど、買い物に行く気分でもないし、諦めて鍵を開けて部屋に入る。閉めたままの部屋の空気が気持ち悪くて、即効で窓を開けて少し空気を入れ替えてから、風呂でシャワーを浴びる。

風呂から出てきても、全然気分は変わらず、冷蔵庫を開けて、少しだけ残っていたビールの缶と、チーズを見つけて持ってくる。意味もなくテレビをつけても、頭の中は、顔は笑ってるけど絶対笑ってないあの顔ばかり思い浮かぶ。


ヤバい、このまま引きずって寝たら、夢の中まで出てきそうだ。


いつの間にか、かなからはお礼のメールが届いていたけど、どう返事すればいいかが分からない。また連れてってとかそういう言葉が一切ない、丁寧な礼状のような文章に、どうしようもなく距離を感じる。


でも、このまま返事をしなかったら、また、前と同じように連絡が途切れるだけな気がする。どうしよう。何か返さなきゃ。とりあえず謝ったほうがいいか?それとも、かなに合わせて、あの下ネタには一切触れずに、無難に、楽しかったとか送ったほうがいいのか?でも、かなの中ではなかったことにはならないだろうから、やっぱり謝ったほうがいいのか?


ぐるぐる考えていたのと、1日出掛けて身体も気持ちもそれなりに緊張して疲れていたのもあったのか、ビール1缶も開け終わらないうちに潰れてしまったようで、気が付いたら朝になっていた。もちろん、メールの返事は送っていないまま寝てた。


かなにとってはこれが俺たちの初デートだったそうで、何かにつけて思い出すとき、かなはそのたびに楽しかったと笑ってくれていたけど。でも、間違いなく、あの時の俺は最悪だったと思う。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ