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聞かれたらこう答えようとか考えていたのに

「そうそう。感想聞かなきゃ。お店でも、◯◯の森の週末コンサートでも、演奏聴いてくれてありがとう。特に、◯◯の森なんて急なお知らせで、場所だって駅からけっこう歩かないといけなかったのに、わざわざ来てくださって本当に嬉しかったです。」


相当おいしかったのか、しばらくの間無言で小鉢の料理に夢中になっていて、それがあらかた片付いた頃、かなが尋ねてくる。


「こちらこそ、演奏会に誘ってくれてありがとう。すごく楽しかった」

「楽しんでいただけたのなら嬉しいですけど...本当ですか?だって、大島さん、始まったときすごい不機嫌そうに腕組みしてステージ睨んでましたよね。私、入場したとき見つけてびっくりしましたもん」

「あれは違くて。本当にぎりぎりで入ったから、席が空いてなくて。ぱっと見たところ通路側は全部埋まってたし、座ってる人の前を通って奥の席まで行くのも難しそうで。腕組んでたのは、遅刻しそうでめちゃくちゃ走ったから、ああでもしないとだらんとしちゃいそうなくらいだったから」慌てて弁解する。

「そうだったんですね。そんな焦らなくてもよかったのに。でも、オープニングに間に合ってよかった」

「前にも言ったかもしれないけど、俺、あの番組けっこう好きで。知ってる好きな番組の曲だから、安心した。かなさんはリコーダーとサイズ合ってなかったけど」

「確かに背はそんなに高くないですけど、これでも、バイトだけどピアニストですから。指はそれなりに広がるんです。あと、私でも吹けるように、ベース音を刻むだけに編曲を直してもらったっていうのも大きいですけど...」


話しているうちに、追加で注文した料理が順に届く。かなは、魚の刺身やだし巻き玉子を遠慮なく食べて、幸せそうに笑う。


「ね、ね、どの曲がお気に入りですか?」

「さっきも言ってたピタ◯ラスイッチの曲もよかったけど、お約束っぽいジ◯リの曲も盛り上がって楽しかった。前のほうに座ってた子供もそうなんだけど、俺のまわりに座ってた大人もけっこう歌ってて。ライブで盛り上がるような感じに似てるんだけど、それより優しい感じ。俺は歌詞はサビしか知らんかったから、入れなくてちょっと残念だった。だから、家帰ってからちょっと調べた」

「じゃあ、次からは一緒に歌えますね!ちゃんとしたメンバーがピアノ弾きますから、次は私はお客さんですけど。でもそれだったら、客席で会ったら一緒に歌えますね!」


何これ一緒にって。さりげないお誘いなのかな。

そんなわけないな。全然意識せず言ってるんだろうな。


それから他の曲のことも聞かれて。聞かれたらこんなことを話そうとか、少しかっこつけた感想を用意してたのに、にこにこ笑うかなに聞かれたら、ただ、楽しかったとか、すげーよかったとか、語彙力が全然ない感想が口から出てくるだけで。


こんなつまんない感想しか言えないのに、かなはずっと笑ってくれて、「それでそれで?」と何度も尋ねて、俺の話を聞いてくれてた。

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