04 ソーラー・リジェネーションは脅威の回復力
レベル20になった僕が手に入れたスキルは、
スキル『ソーラー・リジェネーション』
SPの回復余剰分を、HPの自動回復に変換できる。
スキルレベルが上がると、回復範囲が拡大し、MPも自動回復するようになる。
まさかの回復スキル!
HPの上限が10しかない僕にとって、これはすごく有り難い!
HPが少なかったから、今まではちょっとの無茶しかできなかったけど、これでかなりの無茶ができるようになるぞ!
それから僕は、ますます張り切って戦いに身を投じた。
いくら走っても、いくら戦っても、まるで疲れ知らずの身体になったかのように。
戦っているうちに気がついたんだけど、スキルというのは使えば使うほどレベルアップするらしい。
『ソーラー・ダッシュ』を使っていたら、スキルレベルが2になった。
すると僕の動きはますますスピードアップ。
全力で走るとズバババって土煙が舞い上がるほどになる。
それでちょっと調子に乗ってしまって、たまにゴブリンの攻撃を受けてしまったり、木にぶつかったりすることがあった。
いつもだったらケガをしたら、大事をとって街に戻ったんだけど、その必要もなくなる。
日の当たる場所でちょっと休憩していれば、『ソーラー・リジェネーション』が発動。
身体にあった擦り傷やアザが、太陽の光で消毒されるみたいにキレイさっぱり無くなるんだ
さらに身体だけでなく、心のケアも万全。
気持ちが昂っているのに気付いたら、『ホット・ホット』で落ち着かせる。
おかげでゴブリンに囲まれるようなピンチに陥っても、冷静な判断で切り抜けることができた。
『ソーラー・リジェネーション』と『ホット・ホット』のスキルレベルも2にアップ。
そして気がつくと僕は、レベル25になっていた。
なんだか、まだ夢の中にいるみたいに現実感がない。
生まれてずっとレベル1で、まわりからバカにされてた僕が、まさかたったの数時間でレベル25になるだなんて。
もしかしたら、今日じゅうにレベル50を越えることも不可能じゃないかも……!?
「よぉーし、トム、僕たちは無敵のコンビだ! この調子で、ガンガンいこうっ!」「にゃーっ!」
と、僕たちがさらなるやる気を見せていると、不意に背後から、バシュッと発射音のようなものが聞こえた。
僕がハッと振り返ると、そこには茂みに偽装し、クロスボウを持ったゴブリンが。
ヤツが撃ち出した矢は、今まさに僕の眉間を捕らえようとしている。
直後、僕のすぐ目の前を、小さくて黒い影が横切った。
その影はドンピシャのタイミングで、僕と矢の間に立ちはだかり、
……ドシュウッ!
胴体を矢で貫かれ、バランスを崩して僕の胸に飛び込んできた。
「と……トムっ!?」
僕は血が凍るような思いで、その身体を抱きとめる。
矢を撃ったゴブリンは舌打ちをして、森の奥へと逃げ込んでいたけど、もう僕は気にしている余裕はなかった。
「と、トム!? なんで僕なんかをかばって……!? トム、しっかりして、トムっ!」
するとトムは「にゃ……」と、今にも死にそうな声で、力なく鳴き返してくる。
僕は、矢が刺さったことが何度もある。
『冒険者課』のクエストのお供で、盾に縛り付けられて弾よけがわりに使われたことが何度もあったから。
それは痛くて苦しくて、泣き叫んでもやめてもらえなかった。
今の僕は無傷なのに、あの時とは比べものにならない、身体ごと引き裂かれたみたいなショックを受けていた。
涙と絶叫が自然と溢れそうになったけど、僕はぐっとこらえる。
ここで僕が悲しんだって、トムが助かるわけじゃない。
街だ、いますぐ街に戻ろう。
ありったけのSPを使って、『ソーラー・ダッシュ』で獣医に連れて行くんだ。
獣医はとても高いお金がかかるらしいけど、かまうもんか。
僕の身体を奴隷として売ってでも、なんとしても診てもらうんだ。
だってトムは、僕の初めての友達……!
いままで空気が読めないからって、誰からも相手にされなかった僕にできた、初めての相棒なんだ……!
僕は裂帛の気合いを込め、「うっ……うお……!」と走りだそうとしたんだけど、
「にゃーん」
かわいい声が、胸元からおこる。
視線を落とすとそこには、何事もなかったみたいなトムが、まん丸おめめで僕を見上げていた。
たしかに矢が刺さっていたのに……とトムのお腹を調べてみても、傷跡ひとつない。
刺さっていた矢はいつのまにか外れていて、足元に落ちている。
「い……いったい、どういうことなの……?」「にゃーん?」
呆気に取られる僕に、キョトンとするトム。
見つめあう僕たちの間に、ウインドウが割り込んできた。
『ソーラー・リジェネーションがレベル3になりました!』
それで僕は理解する。
「そ……そうか! ソーラー・リジェネーションがレベル2になって、効果範囲が広がったんだ!
それで僕自身だけじゃなく、トムまで回復効果が及ぶようになったんだ!」
僕は歓喜のあまり、眼球が溺れそうになるのを止められなかった。
「よ……よかった! トム、本当によかったぁぁぁぁーーーーっ!!」
僕は感極まってトムに頬ずりしようとしたんだけど、トムは涙でびしゃびしゃになった僕の顔にドン引き。
「うにゃー!」と両手を突っ張って、肉球でグイグイぷにぷにと、僕の顔を押し戻してきた。
結局、僕は喜びを表現できずに終わる。
それでも、そのことがキッカケで僕とトムの絆がさらに深まったのか、『モフモフレンズ』のスキルがレベル3になった。
--------------------------------------------------
ソラ・クリアスカイ
ステータス
LV 27
HP 10 / 10
MP 10 / 10
SP 240 / 270
スキル
ソーラー・パワー
基本
01 ソーラー・チャージ
01 マジック・シェア
活動
02 ソーラー・ダッシュ
01 ソーラー・アンブロークン
02 ホット・ホット
交流
03 モフモフレンズ
余剰
03 ソーラー・リジェネーション
01 ソーラー・エクスペリエンス
--------------------------------------------------