03 ソーラー・ダッシュは無双の力
レベル10になった僕が手に入れたスキルは『ソーラー・アンブロークン』。
スキル『ソーラー・アンブロークン』
SPがある限り、決して挫けない強い心を保てるようになる。
スキルレベルが上がると、効果範囲が拡大する。
僕はもう、昔の僕を取り戻していた。
まるでお城で働くようになって、初めて登城するときの朝のような……。
新しい自分の夜明けを、感じていたんだ……!
僕はベンチに飛び乗って叫ぶ。
「よぉーし! 僕はこの力で、ずっと夢だった冒険者になってやるんだ!
たとえ帝国を敵に回しても、できないことなんてないんだ!
やってやる! やってやるぞっ! えい、えい、おーっ!!」
通りすがりの人たちからクスクス笑われたけど、僕は気にせずに拳を振りかざす。
するとコートの懐からにゅっと黒猫の顔が出てきて、賛同するかのように、にゃー! と肉球をあげた。
「そういえば、キミはまだ僕のところにいたんだね!
キミも、僕といっしょに冒険者になる?」
「にゃーっ!」
「それじゃ、今日からキミはボクのパートナーだ!
僕はソラ! キミの名前は……そうだなぁ、『トム』なんてどうかな?」
「にゃーん!」
「よろしくね、トム!」
トムを抱きしめて頬ずりすると、トムは嬉しそうに目を細めてゴロゴロ喉を鳴らしていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
僕は、善は急げとばかりにさっそく冒険に出掛けることにする。
といっても僕は冒険者ギルドに所属していないので、クエストは受けられない。
ただ単純に、このエクスマギアの城下町を出て、少し離れたところにある『フォレスの森』まで行って、モンスターと戦ってみるだけだ。
僕はずっとレベル1だったけど、モンスターとは何度も戦ってきた。
人より成長が遅いだけで、モンスターを倒していればそのうちレベルアップするんじゃないかと思って。
でもその結果は知ってのとおりで、いくらモンスターを倒してもレベル1のままだった。
レベル1で倒せるギリギリのモンスターに挑んで、何度も死にかけたというのに。
もしかしたらもっと格上のモンスターを倒さなきゃ駄目なのかなと思い、他部署である『冒険者課』のクエストに、荷物持ちとして同行させてもらったこともある。
レベル3桁の冒険者たちが相手にしている強豪モンスターの戦いに参加させてもらえば、もしかしたらレベルアップできるかもと思ったからだ。
でも結果はやっぱり同じで、レベルアップはナシ。
それでも僕なりに力になれるように戦闘に参加し続けたんだけど、戦いの邪魔だと煙たがられる始末だった。
しかし今は違う。
僕はちゃんとレベルアップできるようになったんだ。
人並みどころか、人並み以上の速さで。
僕はトムといっしょに意気揚々と街を出て、街道を歩く。
モンスターのいる森を目指していたんだけど、その間に天気は回復。
さんさんと照りつける太陽をいっぱいに浴び、5レベルもアップしていた。
移動中にレベルアップして、新しいスキルをゲットする冒険者なんて僕くらいのものだろう。
新しく増えたスキルは、これから戦いに赴く僕にピッタリのものだった。
スキル『ソーラー・ダッシュ』
SPを消費し、移動速度を上昇させる。
スキルレベルが上がると、移動速度がさらにアップする。
試しに使ってみたら、歩くだけで走っているかのようなスピードになった。
歩いて2時間はかかる道中も、30分にまで短縮。
おかげで僕のやる気もさらに加速される。
「よぉーし、やるぞっ!」
僕はフォレスの森に着くなり、ひと休みもせずに背中のショートソードを抜く。
トムとともに、「わーっ!」「にゃーん!」と突っ込んでいった。
そしてさっそく1匹のゴブリンと見つける。
ゴブリンは緑の肌をした人型のモンスターで、ハゲ頭に尖った耳と牙が特徴。
身長は僕と同じくらいに低くて、雑魚の代表格ともいえるモンスターだ。
僕はゴブリンに気付かれる前に、『ソーラー・ダッシュ』のスキルを使って奇襲を試みる。
「うぉぉぉぉーーーーっ!」 ばびゅーーーーんっ!
倒木に腰掛けて休んでいたゴブリンは、こんなにやる気があって、こんなに一気に接近してくる冒険者に襲われたのは初めてなのか、「ギャッ!?」と驚いていた。
僕の肩に乗っていたトムが、先んじて「ふにゃー!」と飛びかかり、ゴブリンの顔をバリバリと引っ掻く。
そして怯んだところを、僕がショートソードでひと突き。
ゴブリンは「ギャアアアアッ!?」と断末魔の悲鳴とともに、黒い煙となって消えていった。
「やった! こんなに簡単にゴブリンを倒せたのは初めてだ!
これもトムのおかげだよ、ありがとう!」
僕は肩に戻ってきたトムと「にゃーん!」とハイタッチを交わす。
よぉし、この調子でガンガンいくぞっ!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
僕はトムととともに森の中を駆けずり回りながら、出会うゴブリンたちをバッタバッタとなぎ倒していった。
相手が少数なら、トムと一丸となって飛び込んで、一気にやっつける。
相手が群れになっている場合は、1匹だけやっけて、『ソーラー・ダッシュ』のスキルですぐ逃げる。
するとゴブリンたちは追いかけてくるので、散り散りになったところを1匹ずつやっつけていった。
SPが少なくなったら、木漏れ日の差し込む場所で休憩。
そして僕はレベル20になり、待望のスキルを手に入れた。
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ソラ・クリアスカイ
ステータス
LV 20
HP 10 / 10
MP 10 / 10
SP 180 / 200
スキル
ソーラー・パワー
基本
01 ソーラー・チャージ
01 マジック・シェア
活動
01 ソーラー・ダッシュ
01 ソーラー・アンブロークン
01 ホット・ホット
交流
02 モフモフレンズ
余剰
New! 01 ソーラー・リジェネーション
01 ソーラー・エクスペリエンス
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ソラは魔導装置の技術者という設定に変更になりました。
それに伴い、ステータスに『マジック・シェア』スキルの追加と、あらすじと1話目と2話目の内容を修正してあります。