表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリプルプレイヤーヤマザキ  作者: 大樹 霜
4/4

かくして、今年の甲子園で全国優勝、それも、全回一球しか投げないという破格のプレイで成し遂げた山崎は、一躍時の人となった。


「…本当に、神奈川準決勝の横浜大門がヤマだったな…」

山崎のチームメイト、宮本と村上は、誰も居ないのを確認しつつ、キャッチボールをしながら語り合っていた。


「山崎は…本当にすごいやつだよ。

一日に9球しか投げられないという制限があるのに、優勝しちまうんだからな…」


「横浜大門でコールド勝ちできなければ、9回の守備では山崎は下がるしか無かった。

そうなると、何点取っていようが、横浜大門を抑えられるピッチャーなんて誰もいない。

間違いなく負けていたな」

「全くだ。だが、あれで…大山田さんが犠牲になったお陰で、他のチームも真っ向から勝負するしか無くなった。

県大会決勝からはコールドはなくなり、一球の猶予も無くなっていた山崎には、最高の追い風だったな」


「ああ、真っ向勝負の繰り返しなら、もう山崎の思う壺だった。甲子園は負ける要素は微塵も無かったな。

スタンドからもものすごい、前人未到の大記録がどこまで伸びるかのオンパレードだ。

あの中で見逃しなんてできるはずもない」


「確かにあの球は、見れば打たずにいられない、打たなければ壊れる呪いがかかっているが…

別に見なきゃいいんだもんな。

目隠しして打席に立てばいい。種が分かれば破りようもあるんだが…」



「しかしなんだろうな、山崎のあの力は。

命と引き換えに悪魔と取引して、一日に9球しか投げられない呪いと引き換えに、思い通りの理想の球を投げる力を授かった…

なんて本人は言っているけどよ」

「眉唾だけど、そうじゃなきゃ説明がつかないよな…」


「お前なら欲しいか? 山崎のあの力」

「うーん、いや悪魔と取引ってなると、命と引換えみたいで流石に嫌だけどさ…。

そういうリスクがなきゃ、そりゃ欲しいだろ。

先発完投は不可能だけど、ストッパーとしては無双だぜ。何億稼ぐかわかったもんじゃねえよ」

「まあな。…でも、思う存分野球ができないってのも、嫌だろ」

「それは、まあ確かにな…。山崎はもう、こうしてキャッチボールをすることもできないんだもんな…。

まあ一日9球はできるんだろうけどさ」


「まったくな…」


日本全土、そしてプロからもメジャーからも大いに注目を集めた山崎は、残念ながらその年の内に早逝する。

それが山崎の言う、悪魔との取引の結果なのかは誰にもわからない。


その後、故意のボークは反則となった。

しかし、伝説を作る力を授かるならば、命すら要らないと、そう思う者も、きっと居ることだろう。

その後の野球史上、空前絶後の最強の投手として燦然と名を輝かせる山崎の名を、羨ましく思うことだろう。


終わり


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ