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特殊部隊"青い鳥"

「好きです。私の彼女になって」


 真面目な話をしてたと思ったら、愛の告白をされた。


「いやいやいや! いきなりそんなこと言われても困る! さっき会ったばかりで、お互いのこともよく知らないし!」


 それでOKするほどわたしは軽い女じゃないし、ナンパ気分で声をかけられても困る。

 わたしは天使の最高位、熾天使してんしというやんごとない身分なんだからそういうのはもっとちゃんと段階を踏んでやるべきだと思う。


 そもそもわたしとカヤは天使と人間だし、それに女の子同士だし、付き合うとかありえないから。


「いいね、私もある程度身持ちが固い方が好み。それに、私もいきなり落とせるなんて思ってない。これは言うならジャブみたいなもの。これから本気で落としにいくから覚悟しておいて。」


 なんか、厄介な相手に目を付けられてしまった気がする。っていうか、ありえないって言ってるんだから止めろよ。

 一歩間違えたらそれストーカーだからな。というか顔が良くなかったらもう通報案件だからな。


「安心して、私は自分がかわいいってわかった上でこういうことを言ってるから。美少女無罪は世のことわりと言っていい」


「なおさらタチが悪い。あとそういうこと言うと他の女から嫌われるから気をつけた方がいいよ」


「私だって言う相手は選ぶよ。今回はマラクも大概可愛くて、ついでにスタイル良くておっぱいが大きいからこういう話しても嫌みにならない」


 それってセクハラなのでは? わたしはいぶかしんだ。


「だいたい、カヤはさっき一目惚れって言ってたけどわたしのどこが好きなのさ。」


「顔と体」


 即答だった。

 えっ、ストレートすぎない?


「私は何よりも外見で人を好きになるタイプです」


 それを伝えられてわたしはどうしたらいいの……?

 考えた結果、こいつは外見はいいけど中身はアレなやつなんだろうという結論に至った。できれば関わり合いになりたくなかった……今さら遅いけど。


 とはいえ、行く当てがないのも事実。わたしはカヤに付いていくことになった。



 東京、地下。

 第三次世界大戦において、戦火にさらされても最低限の都市機能を維持するため、首都圏には無数の大規模な核シェルターが造られた。


 その中に紛れて、その組織は存在した。

 特殊部隊"青い鳥"――専守防衛を任とする自衛隊に対し、少人数で敵国に乗り込み、圧倒的な個の力で戦況を変える日本におけるもうひとつの戦力である。



 カヤに先導され、わたしは青い鳥の本部に足を踏み入れた。

 案内されたのは、小さな会議室。そこでは、一人の男がわたしたちを待っていた。


「マラク、紹介するよ。このガタイがいいのは菊花きっか大和やまと青い鳥(うち)の総大将で、私の昔からの友人でもある」


ゆすらうめから話は聞いている。ようこそ、マラクくん」


「よ、よろしくお願いします。えーと、ヤマトさん」


 握手を求められたからそれに応じたけど、わたしの手がすっぽりと収まるんじゃないかってくらい手がでかい。身長も二メートル以上はある上に分厚い軍服の上からでもわかるくらい筋肉がすごい。


 ビジュアルからして絶対強いから逆らうなって本能が伝えてくる。思わず敬語になっちゃったもん。


「さて、マラクくん。桜からどこまで話を聞いているかな?」


 わたしがここにくるまでに聞いたのは、この組織がどういう役目をになっているかということくらいかな。


「そうか……なら俺から色々と教える必要があるな。だがその前に、マラクくん。君にはこの青い鳥に入隊して貰いたい」


「へぇ……?」


「私から説明すると、組織として守秘義務みたいなのがある。だから、部外者には説明できないこととかがけっこうあるんだよ。マラクと協力関係を結ぶなら、入隊してもらうのが一番手っ取り早いってこと」


 なるほど、理屈はわかった。

 こちらとしても、急に地上に放り出された身。食いぶちが確保できるのはありがたい話ではある。


「それはいいけど、わたしは戦争に加担するのはごめんだよ。熾天使してんしとして、その一線は譲れない」


「ああ、その点に関しては全く問題ない。火星の落下が影響で、戦争は終わったからな」


「えっ」


「へぇ!?」


 なにそれ、初耳なんだけど。

 カヤに文句を言おうとそっちを見たら、カヤも目を丸くしていた。話を聞くと、火星の対処に追われて知らなかったらしい。


 なんでも、火星が地球に接近したのが知られると、世界中が大パニック。戦争してる場合じゃない! って一時休戦したら、そのままなし崩しで終戦、なんてことになったらしい。


「これは私の考えだけど、戦争って始めるのにもエネルギー使うんじゃないかな。一度平和になっちゃったら、普通はまた危険な戦いなんてしたくなくなるから」


「そういうものかぁ」


 とにかく、戦争が終わったんならいいことだ。災い転じて福となす、ってやつか。

 おかげで人間同士のいざこざに巻き込まれることもなさそうだし。


「そういうことだ。マラクくん、他に条件はあるかな?」


「今のところは。問題が新しく見つかったらそのとき考えるよ」


「そうか。なら……これから、君には入隊試験を受けてもらう」


 えっ、試験とかあるの?

 こういうのコネ入隊とかさせてくれるものじゃないの?


「終戦の影響で新規入隊を絞る必要が出てきてな……形だけでも試験を受けて貰う必要がある」


 試験かあ……それに落ちたらどうなるの?


「新人なら基礎体力くらいしか見ないし、マラクなら落ちる心配はないよ。戦いを見ていた私が保証する」


「入隊試験の準備は事前にしてある。急で悪いが、早速始めようか」


 そういうことになった。

 っていうか、この二人、押しが強いな。

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