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エステで癒やす聖女様  作者: 胡桃
3/6

やっぱり異世界

入った部屋はそれは豪華で応接室のような作りになっていた。

奥には大きな机があり、いかにも社長さんですと言わんばかりの椅子。


「そこに座りな、立ち話ってわけにもいかないだろう。」


ソファを進められ、一瞬考えたけどどうにもならないと自分を納得させそこに腰かけた。


「で、あんたはどこの何者だい?実を言うとね、今日は髪結いは来ない予定だったんだよ。ちょいともめてね。どうしようかと考えてたらエスパが綺麗になってるからびっくりしたんだよ。」


「エスパ?」


「赤毛の子だよ。」

あの子エスパっていうのか。


「話を聞いたら新しい髪結いにしてもらったっていうじゃないか、せっかくだから全員終わるまでまっていたのさ。」

にやりと赤いルージュの唇が上がる。

上手く泳がされてたってことか・・・・。

どうしよう・・・本当の事言う?信じてもらえるかわかんないしな、でも・・・。

考え込んでいる私を見ながらさらに言葉を続ける。


「・・・あんた訳ありかい?まぁここにどうやって潜り込んだのかも気になるしねぇ、あの子が気がつかないくらいだしねぇ。」


「あの子?」


「外にいただろ?護衛の。あの子はここティエーラ一座の全体も取り仕切る護衛だよ。忍び込むのはほぼ不可能なはずなんだけどねぇ」


ムキムキの双頭の護衛を思い出す。めっちゃ強そうだったよね・・・・暗かったからちゃんと見てはいなかったけど、金色の瞳が印象的だった。

まぁ一つしか瞳がないから、印象にも残るよね。はじめて見たし。

ため息をつきながらソファの背もたれにもたれかかる。

どうしよう・・もう自分の感を信じるしかない、それしかない。


「あの・・・信じてもらえるかわからないんですけど、実は・・。」



大まかな説明をした。ここの世界の人間ではない事、どうしてか気がついたらここに居たこと。そして仕事はエステティシャンをしていた事。

話をしている間マザーは一言も話さず、ずっと私を見ていた。

話し終えると、溜息をつきながら頭を押さえる。


「・・・・はぁー、面倒くさい事になったねぇ。」


「あの・・信じていただけるんですか?」


「信じるも何も、聞いたことはあるからね。異世界からの迷い人。しかもまずい国に・・・」


基本的にはどこの国も保護をしているらしい。がここステイン王国はいい噂は聞かないらしい。今の王様に代替わりしてからというもの、かなりの好色らしく政治はからっきし。治安はどんどん悪くなっている。

珍しい気に入った女と見れば軍事力にモノをいわせて奪い去ってきているらしい。


言葉が出ないとはこのことだ。

ばらして早々に裏目に出てる・・・・。私の感とは・・・

一気に心細さと不安が押し寄せてくる。

とっさにソファから降りてマザーの足元に跪く。


「!?ちょっとあんた!!」


「あの・・・お願いします!!!!!私をここで働かせてください。今日みたいに女の子を綺麗に出来ます!この技術だけは誰にも負けません!!」


ここで雇ってもらって自分の命を守るしかない!!国に見つかったら最後、きっと地獄を見るに違いない!!もちろんマザーが嘘を言ってる可能性があるかもれないが、まだこの世界のことを知らない。

表の護衛のようなムキムキ種族がたくさんの国ならばもう勝ち目はない。このまま表に捨て置かれるわけにはいかない。

私はまだ死にたくない!!


「お願いします!!雇ってください!!」

頭を地面にこすり付けながら懇願を続ける。


「~~~~!!あぁあっもう、わかったから頭をあげなさい!!」


「雇ってもらえないと私死んでしまいます!!」


「わかったから、雇ってあげるよ!!だから頭をあげなさい!!」


「!!本当ですか!!雇ってもらえるのですか!!!」


がばっと顔を上げると、頭を抱えているマザーが目の前にいた。


「・・・はぁ、厄介だね~、でも仕方ない。ここの国に義理立てることもないし、さすがにあんたみたいな子どもを放り出したら後味悪いしね。

まぁ髪結いを抱えれるのならそれに越したことはない。腕は確かだしね。」


マザーは立ち上がると大きな机の方に歩き始めた。引き出しから白い石の付いたブレスレッドを取り出した。


「こっちへ来なさい。あんた名前は?」


「渡世・・・あかりです・・・・。」

のそりと立ち上がる。


「手を出しなさい。」


言われた通りにマザーに手を差し出す。

手首にそのブレスレットを付けると一瞬光輝き収まった。


「このブレスレッドはこの一座ティエーラの一員の印だよ。見ての通り女が多いからね、ねらわれる事もたたあるんだ。まぁ、大体狙ってくる奴はモグリなんだけどね。これさえ見えるように付けていたらとりあえずはここの者だと分かる。もし攫われたりしてもこれが追跡代わりになるからね。」


「・・・はい。」


GPSみたいな感じかな?それって監視されてるって事???


「安心しな、本当に危険な時しか位置は分からなくなっているよ。簡単に外せるしね。」


あ、バレてる。そんなに顔にでてたかな?


「取り合えず、今日のアカリの仕事は終わりだよ。部屋を割り当てないといけないねぇ」


そういいながら手でふわりと空中に円を描く。


「ローザ、今空いているかい?」


テレビ電話のように、人物が映り込む。


「・・・魔法だ・・・・。」


思わずその光景をみつめる。と同時にここは元の住んでいた世界ではないのが心にのしかかる。

私は本当にここで暮らしていけるのか、本当に・・・・

ぐるぐるぐるぐる、胸の奥が気持ちが悪い。なんだかふわふわする。

目の前が歪む・・・わたし・・・


「!!!アカリ!!ちょっと!!」


声がだんだん遠くに、聞こえてくる

おなか・・・すいてるのかな?・・・

マザーの声が遠くに聞こえて、そのまま視界が暗転した。







ぁあ・・・おなかすいたな・・・・。

ぼんやりそんな事を考えながら目を覚ます。

そこには見慣れた天井ではなくて、全くしらない風景で・・・・・。


「!?」


がばっと体を起こす。

そうか、私あの後倒れたのか?ふわふわのベットに寝ている事に気がつく。外は明るくなっていて、夜が明けたのを物語っていた。

ぐるりと見回す、可愛らしいこじんまりとした部屋だが元の世界に住んでいた部屋より大きくどことなく上等な物がたくさんある。


「取り合えず、のどが渇いたな・・・・」


ベットからのそりと起き上がると水差しとコップのおいているテーブルを見付ける。


「水入っているかな?・・・飲んで大丈夫かな?お腹壊したりしないよね??」


「あ、姉さま、おはようございます。もう起きて大丈夫ですか?」


部屋の出入り口から昨日ずっと手伝ってくれていた女の子がはいってきた。


「あ、おはよう。うん、大丈夫。もしかして昨日私倒れたのかな?」


「はい、ひどく青い顔をされていました。」


そう受け答えをしながら彼女は私に水差しから水をいれて渡してくれた。


「ありがとう、すごくのどが渇いていたの。私はアカリ。あなたは?」


「はい、アカリ姉さま。私はローザといいます。マザーからなれないだろうからとお世話を言付かっております。」


相変わらず鼻から下を薄いヴェールで隠しているがにっこりとほほ笑んでいるのがわかる。

水を飲みほしてほっとするのもつかの間。


「!?私の荷物!!!」

唯一といっていい私の物。あたりを見回すとベットのそばに黒いボストンバックがあった。


「あった・・・よかった・・・。」

ほっとしながらカバンのそばによる。

中には昨日かったばかりの化粧品がぎっしりつまっていた。


「アカリ姉さま、着替えなんですけどその服では目立つのでこちらをとマザーからあずかっています。」


さしだされた服はローザの着ている服の色違いだ。形はアオザイに近い。

薄いブルーの上に、ズボンは白だ。

ご丁寧に下着まである。こちらの世界の下着もなんら変わりのない。


「替えの着替えもタンスにはいっていますのでそちらから。洗濯はこのかごに出してもらえれば大丈夫です。あ、着替える前にお風呂に入られますか?」


「・・・うん、はいりたい。汗もかいてるし。」


「ではこちらです。」


ゲルの中なのにどうして普通に部屋の扉があるのか不思議だけど、案内された部屋にはおしゃれな猫足のバスタブとホテル式シャワーが備え付けられている。


「お湯はこちらに魔力を通していただいて・・・・。」


「魔力?」


「はい、魔力を・・・。」


「どうやって?・・・魔力なんてないと思うんだけど・・・。」


バスルームで見つめ合う二人。戸惑うローザ。


「アカリ姉さまは魔力をもっていますよ?昨日あんなに使っていたではありませんか。」


ぅん???

使ってなんかいない。え?どこで?いつ?

頭の上にはてながたくさん飛び交う。


「昨日姉さま方を綺麗にしていたではありませんか、アカリ姉さまの魔力は綺麗で黄金に輝いていましたね・・・。」


ほぅっとうっとりした顔で昨日の事を思い出しているようだ。

まったく無自覚なんですけど、つかっていたのか?


「じゃあ、出来るか試すからちょっとそこにいて。」


ローザにいわれたバスルーム入り口付近の丸い水晶に手をかざす。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・。

うんとも、すんとも、言わない。

なんかコツとかあるの?

動けぇ~って念じるのかしら??


ポォン


動けと軽く念じた瞬間に水晶が光り始めた。


「・・・おおぅ、動いた・・・。」


「はい、ではこちらにタオルなどもあります。シャンプートリートメント、石鹸もこちらにございますので。使用済みタオルは先ほどのかごに入れておいてください。」


にっこりとほほえみながら、ローザは一通り説明するとバスルームから出ていった。



「すごい、日本とぜんぜん変わらない。むしろちょっとグレード高め。」


一通り体を洗い、バスタブに浸かる。石鹸もなんともいい匂いだし、シャンプー、トリートメントに至っては日本で使っていたサロン専売品のシャンプーよりいい。

今いる私の状況からすると、転生なんちゃらとかでもなく、召喚でもなく、ただただ時空の歪みに落ちてしまった人っぽい。お決まりの、今の日本より文明が遅れてる中世ヨーロッパのような感じでもなく、むしろちょっと進んでいる気がする。お風呂だってこんな設備だし。

たぶん普通に化粧品の普及はあるんだろうな。何かの知識で生計たてるなんて出来なさそう。

エステの技術もどこまで通用するのかな・・・・。

お湯の中から両手を見つめる。

ローザの言った通りなら、私には多少なりとも魔力がある。

たぶんエステに関わる技術で使っていたのだろう。

ここをもし、追い出されたら冒険者とかになったりとか?というか冒険者なんてなれるの?できて、風俗まがいな事しかなかったら・・・・・。

ぞくっと寒気がした。


「今考えても仕方がない。取り合えずここでの仕事を確立していかなきゃ・・・」


悪い考えを振り払うように勢いよくバスタブからでてタオルでぬれた身体を拭く。


「・・・・大丈夫よ、こんなところで死んだりなんかしない。」


そう自分に言い聞かせるようにつぶやきながらバスルームを後にした。











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