老衰、からの転生
今日未明、私、紅芽穂香は死んだ
105歳、老衰だ
苦しむことなく安らかに
私は今、真っ白な空間にいる
若返った状態で
これから地獄にでも連れて行かれるのだろうか
それともてん「地獄なんて滅相もございません‼」
『え?』
突然、何もないところから人が現われた
「私の名前はメル。神です!」
『は?』
「本当ですからね!?……まぁいいです。これから、貴女のこれからの話をします」
『私の話?』
「はい、そうです。
そもそも、人は死んだらすぐに転生するか、地獄に行くかの二択なんです。
生きているうちに罪を犯した人間は地獄に行き、罪を償いきるまで罰を受け、償えたら転生。
何も罪を犯さず一生を終えれば、すぐに転生、というかたちになります
……そして、貴女のお察しの通り、貴女はお亡くなりになられました。
貴女は何も罪を犯さず、一生を終えられましたので、前例の通り貴女も転生する予定だったのです』
『だった?』
「はい〈だった〉です
……貴女は、時々変な口調になったり、見覚えのない風景が見えたりした事がないですか?」
「ある……」
例えば…
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『拙者、眠いでござる』
「は?」
*************
とか
*************
うわっ!?何処ここ?
辺り一面焼け野原
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とかね
「うわぁ、これは酷い」
『?』
「それは、貴女の過去の記憶です。まぁ、過去と言っても紅芽穂香としての記憶ではなく、前世やもっと昔の記憶ですけど」
前世の記憶が、よみがえった?
「はい。基本は転生の際に衝撃で前世の記憶が飛ぶのですが、貴女の場合は特殊でして」
『?』
「大体の人は数回の転生で一度地獄に堕ちてしまうのですが、貴女の魂はもう何度も連続して転生してしまったんです。その数なんと……50回!
このままでは記憶を持ったまま転生してしまう事になります。
そこで、貴女を前よりも少しだけ衝撃の強い世界に転生させる事が決まりました」
『今までとは違うの?』
「はい、全然違います。そこは、剣と魔法のファンタジーの世界。王族と貴族が権力を振るい、魔法が発展し、科学技術が衰退した世界です」
『地球とは真逆ね』
「はい。貴女には、その世界の貴族として転生してもらいます」
『それで記憶はなくなるの?』
「いいえ、おそらく記憶は戻ってしまうでしょう。原因は、貴女の魂が転生に慣れてしまった事と、前例が無いため、私達が対処出来ないことです。いつになるかは分かりませんが、記憶は戻るでしょう」
『…もっと衝撃の強い世界に行けばいいのでは?』
「ダメです!そんなことしたら魂が衝撃に耐えられずに消滅してしまう」
『消滅⁉』
「はい、魂が消滅してしまうと、転生はもちろん、地獄にすら行けずに消えてなくなってしまう。だから、少しだけ強いところで慣らしてからもっと強い世界に送ります」
ゾッとした
「転生後は、私達が干渉する事はできませんが、せめてものお詫びとして、ある能力を貴女につけましょう」
『能力?魔法ではないの?』
「違います。これは、貴女だけが持つ能力です。その能力は……
元素操作です。
元素操作とは、例えば、原子同士を混ぜて化合させたり、逆に取り出したり、空中で操ったり、状態変化したり出来ます」
『何それ、最高じゃん!!」
私は根っからの理系である。理系ならばのどから手が出る程欲しい能力だろう
「そうでしょう!?能力は記憶が戻るまで使えませんが、貴女ならすぐに使いこなせるでしょう
さて、これで説明は終わりです。貴女を転生させます……準備は?」
『いつでもOK!』
「それでは……えいっ」
神様の掛け声と同時に意識を失った