第21話:一生
「えっと、待ってね?頭の中を整理するわ。昨晩、ネリがネクロマンスを使用して魔力酷使で疲れて寝てしまった。その後何か起こるかと思って私は起きてたけど結局何にも無さそうだから寝た。そして起きたらネリと全裸の幼女が隣合わせで寝ていた。おっけー?」
「う、うん!一応合ってるっちゃ合ってるけどな!なんか微妙に悪意感じるっていうか!俺もよくわかってないって言うか!」
「ロリコン。」
「違う!!!待ってくれ!!!」
「んー…?なんだー…騒がしいなぁ…ふぁあ…。」
「あ!あぁ!!起きた!!おい!デシリオル!!説明しろ!この状況!」
「むむっ…これは…限りなく肉体に近い霊体じゃな…能力発動の最高条件になるためにこうして近付いたってことじゃの…なるほどな?」
「…??…?何言ってるの?てか!!やっぱり…ネリ知ってるのね。この幼女のこと…ってデシリオル!?今デシリオルって言った!?」
「なっ…!!最近のやつらは初対面の年上を呼び捨てにする風潮でもあるのか!?ていうか、幼女とはなんだ!幼女とは!!私から見ればお前らの方が幼女じゃぞ!」
「この子ちょっと頭の痛い子なの??」
「おまっ!!女!!お前失礼じゃな!!??」
「ま、まぁ落ち着けって、順をおって説明するから…正直俺だってなんでここにデシリオルが居るかとか分かんねーんだし!」
取り敢えず俺は夢で起こった出来事、その話の内容、そしてデシリオルについての情報を全て話す。ちょっと話長くなってしまった…ミレルはずっと黙って聞いてるけどちゃんと理解してくれてるんだろうか
猫理があらかた説明し終えると今まで黙っていたミレルが口を開く。
「大体は理解したわ。まぁ私達に直接関係ある話だけ抜き取ると…つまり、この幼女。デシリオルがいないとネリは死霊魔術の能力が70%しか使えない。でもこの幼女。デシリオルがいる限りは+30%されて、100%の能力が使える…って所ね。」
「ま、簡単に言ってしまえばそういう事だな!」
「おい。おい?さっきからナチュラルに幼女って言っt」
「ふぅーん?じゃあこの幼女。別に要らなくないかしら?」
「ふぁ!?な!何を言ってるのじゃ女!!」
「はー?何言ってるのとかこっちのセリフなんですけど?あんた生きてた所で別に私達にメリットなくない?あんたがいないと能力70%しか使えないってどうせ近くにいなきゃダメーとか条件あるんでしょ?それなら別にあんた殺してしまっても良くない?生かす意味分かんなくない?それに、あんたの体が今回復中とか言ってて、何故かこっちにあるっていう状況もまた意味わかんないし?第1あんた嘘ついてるって線もあるんだし。」
「なっ…!なっ…、そっ、それは…その……ひ、非道というものでは無いのか!女!!このワシを助けようとかないのか!!」
「無いわ。」
うわぁ…。バッサリ言った…
「そっ…!そんな…!お、おい!猫理!変な顔してないで何とかこの女を説得してくれぬか!!」
「…ねぇ。気安くネリって呼ばないでくれる?何様なの?第1、私の名前はミレル。そんな変な名前じゃないから。」
全く方針を変えなさそうなミレルに仕方なく猫理は口を開く。
「ま、まぁ俺がいいんだし良いんじゃないか?確かに何らかのデメリットは生じるだろうけどそれも…まぁ仕方ないっていうか…」
「おっ…!おぉ…!!」
その言葉に目を光らせ喜ぶデシリオルをミレルの言葉は一蹴する。
「…はぁ。あのね。私はこの能力のケース。…この能力が2人に割れて一緒にいないと最大限引き出せないってケースを見た事があるわ。」
「え、よくある事なのか?こう言うの」
「いや、かなり稀よ?でも昔いたの、うちの城の戦闘員でね、2人はガチムチマッチョの兄弟だったわ。その2人の能力は己の身体強化。でもお互いある程度くっついた距離にいないと100%の力を発揮できなかったの。離れていたらお互い能力は50%しか引き出せなかったわ。勿論、そんな程度の能力じゃ魔物を狩れる訳ないから2人は常に一緒に行動してたわ」
「…つ、常に。」
「そう。〝常に〟よ。いつ襲われるかわからない、万が一のために2人は行動を一緒にしたわ。買い物や食事、もちろん、お風呂やトイレもね。…まぁあの2人の能力が発動する距離は1mだったから同じ部屋には入ってないんでしょうけど…それでも片方が入っている時は最低でも1m圏内にいないといけないの」
「け、結構ハードだな…しかも俺たちはその2人みたいに兄弟とかじゃなく血の繋がりの無い異性だからな…幼女とはいえ…。」
「ま、その2人の発動圏内の距離はほんと珍しく近かったからそこまで近い事はそうそう無いらしいけどね。…んで?肝心のあなたは?どのくらい離れると30%持っていっちゃうの?返答しだいではまだ助ける余地はあるわよ」
「まぁ確かにな。ある程度の距離だったらまだ俺も何とかなるっていうk…」
「30…(ボソッ」
「ん?なんか言ったか?」
「……30cm。」
「近すぎだろ!!!??」
「はい決定!決定!こいつ要らないわ!!まだ10m位なら私だって許容してあげようと思ったけど30cmって!!!」
「しっ…!!仕方ないだろ!!!私が故意に設定したわけじゃないんだし!!!」
「さ、30cmかぁ…もう、片時も離れない状態だな…」
ボソッとそう猫理が呟くと突然ミレルが過剰に反応する
「ーーーっ!!!!ダメよ!!絶ッ対にダメ!!許さないわ!!!情が移る前に早めに始末を!!!」
「ど、どしたんだよミレr」
「あんたもあんたよ!!!ネリ!!何関係なさそうな顔してるの!?あんたコイツと今から死ぬまで常に一緒にいなきゃいけないかもしれないのよ!?」
……あーー。そうか…。
ミレルにそう、直接言われ改めて気づく。
チラリと横を見るとこの状況下、黙ってじっと座っているさっきあったばっかりの少女。
この子と死ぬまで…今からずっと行動を共にする
その決断をしなければいけない俺を少女はジッと真剣な瞳で見ている。
んん…この決断は酷だなぁ。
デシリオルはもう今、決断される時だと分かっているのだろう。黙って…その時が来るまで耐えている。でも…でも…。
俺は…今この子を見捨てたって何年後かにはすっかり忘れてしまうだろう。まだ出会ってから日が浅すぎる。状況が悪すぎるとしかーーーーーーーー…………
「……ふっ…。あっはは…。」
「な、何笑ってるの…?ネリ…?」
「こんなん…俺には…耐えれねぇわ」
決断をどっちであれ受け入れる。そんな風に見える少女。しかしふと、チラリとその少女の右手を見ると爪を立て、口元もよく見ると唇をずっと噛んでいる。
痛みで涙を堪えようとしているのだ。
泣いたら卑怯。フェアじゃないと言わんばかりに。
……自分の命がかかっているのに。
「おい。デシリオル」
「な、なんじゃ」
猫理はデシリオルと向かい合い、口を開く。
「……俺は正直言うと出会って数分のお前にさほどの情は無い。ここで事を起こしても数年後には忘れてる…と思う。」
「あ……う……。」
「ごめんな…俺はそういう人間なんだ。」
ーーーツゥ…と少女の唇から一筋の血が流れる。
目は潤み目尻には涙が浮かぶ
「………だけどな…俺はな…」
すると猫理はスッと手を伸ばし少女の血を拭い、ニコリと笑い
「困ってる奴…放っておけないんだよな。」
「…えっ!?ネリ!?それって!??」
「っ!?あ…あ…ぁ…!!!」
ミレルが驚きの声を上げている中、猫理は手を握り、大粒の涙をボロボロと零し、声にならないような声で何かを言おうとしている少女、デシリオルとしっかり目を合わせ、
「俺と…一緒に生きるか。デシリオル」
そう、言ったのだった




