第16話:時間稼ぎ
「え…なんでここに…?」
未だ回復中で立てない猫理は、うつ伏せでミレルを見上げる
「何?私が助けにきちゃダメなの?」
「あっ!いや!そういう事じゃなくて何で…」
「あのね。ネリ?昨晩の事覚えてる?」
「さ、昨晩?」
「ゴブリンクエストに行くって言ったアンタに、もしもの事があるかもしれないから私も行くわって言ったわよね?」
!!!
そうだった!そう言えばそうだ!そんな話をした記憶がある…
んでその時俺は、返事はしたものの、こんな低級クエストミレルの力を借りなくても大丈夫とか思ってーーーー
「そして私がネリとのクエストを楽しみにしながら装備品を着て翌朝、部屋に向かったら…アンタ1人で出てたのよねぇ???」
ニッコリと微笑むミレル。
…でも目が笑ってない。
なんか笑顔の奥の怒りがもう滲み出てるって、痛い痛い痛い!!なんか回復してくれてるはずの光の糸がチクチクしだしたんだけど!!?
「はぁ…まぁいいわ。結果こうして助かったんだし。あのね?ネリ?低級クエストだからって狩りに行く場所にその魔物しか居ない訳じゃないんだから!それ位考えなさいよね!」
「うっ…全くもって正論です…ごめんなさい…」
「これに懲りたら次からは私と行くのよ!!…さ、そろそろアンタ起きないt……」
「ホグゥウォオオォアァアァ!!!!!」
「っつ!!」
猫理とミレルは思わず耳を塞ぐ。
突然の閃光で失明し、その怒りを自分の視界を奪った対象。敵に向け、雄叫びをあげる。
「意外と起きるの早かったわね。失明させれたのはかなり良かったわ」
「ミレル!回復せんきゅー!これがミレルの魔法か!便利だな!」
ミレルのお陰で全回復した猫理がジャンプしながら腕をぐるぐるして喜ぶ
「回復魔法…うーん。まぁ分類はそれなんだけど…しかも便利かって言われると…うーん……」
「…?なんだその微妙な返事は??」
「んーー!とりあえず説明はあと!まずはあのトールゴブリンをやるわよ!」
「ん!よく分からんがとりあえず後回しだな!おーけ!」
猫理はサーベルを拾い構える。ミレルは1歩後ろに立つ
トールゴブリンと戦って全く歯が立たなかった。
自分の慢心と愚かさ故に。しかし今、リベンジできる場面。こちらは2人に対して相手は1人。しかも相手は手負い。目は見えていない。
ーーーでも。油断はしない。
本気で挑む。例え相手が手負いでも、どんな手を使ってでも勝つ。
そんな思いで猫理はサーベルを持つ手に力を入れる
「ミレル!後方から援護できるか?トールゴブリンにスキを作ってくれるとありがたいんだけど!」
「……」
「…おい?ミレル?」
「私…回復特化でね?あんまり攻撃は得意じゃないの…。でも…スキを作る攻撃位なら出来るわ…」
「お、おう?じゃ、頼んだぞ?」
「でも…」
「でも??」
「魔力が……」
「ん?なんて??」
「魔力がきれたのよぉぉおぉー!!!!!!」
「…ええぇ!!!!???」
涙目でぷるぷるしながらミレルが叫ぶ。
するとその叫び声で場所を特定したトールゴブリンが走ってくる。
「わっ!?ちょ!危ねぇ!!」
突進してきたトールゴブリンを2人は両サイドに避ける。
トールゴブリンの、ただ、自分の手を握って叩きつける攻撃。
しかしその攻撃は当たった地面をエグる。
「当たったら…即死コースだぞ…!!」
「さすがの私でも蘇生は無理よ!…あ、でも今は魔力切れで回復も出来ないけど」
「くっ…!マジか!でもこれも俺のせいだもんな!ミレルは少し離れた所で魔力を練っててくれ!攻撃できるまで溜まったらその1発に賭けるぞ!」
「ん、あ、魔力切れになったのは朝、ネリが居なくてむしゃくしゃして攻撃力がそんなない魔法でスライムを狩りまくってたから…」
「何やってんだよ!!???」
「だ!だって!仕方ないじゃない!!イライラしてたのよ!!」
ま、まぁどっちにしろ俺のせいには変わりないし、とりあえずトールゴブリンの注意を引きつけよう!魔力はそう短時間には練れないけど1発分位ならすぐ体内生成出来るはず!
「ミレル!分かった!とりあえず俺が注意引く!攻撃魔法1発分でいい!どれ位の時間で出来る?っっって!!場所がバレた!!来るぞ!!!?」
トールゴブリンが腕を振り回しながら突進してくる。その腕に当たった木はへこみ、大きく傾く。
「だから!!威力が半端じゃないって!!?」
やはり当たればもう即死確定レベル。しかし幸いにも相手は目が見えておらず、命中率はそれ程高くない。
「これなら集中してたら避けれるぞ!よし!ミレル!あとどれ位でーーーー…」
ドスン!
そう音を立てて、突然トールゴブリンが、あぐらをかき、その場に座る。
「…お?諦めたのか?今のうちに殺れって事か…?」
「まって、ネリ。あまり迂闊に近付かないのよ」
「あ、あぁ、そりゃわかってるが……ん?なんか…あれ?コイツこんな太ってたっけ?」
「え?…んー?いや、もっと痩せてたわよね?ってか筋肉でお腹出てなかったわよ?」
「そうだよな?じゃあ…え?」
座り込んだトールゴブリンのお腹はそんな会話中にもみるみる膨れ上がり自分の顎を腹で埋めている。
「やばい気がするわ!!!?」
「俺もだ!!一旦距離を取tーーーーーーーーー」
ブッッフォン!!!!!
凄まじい爆風と共に凄まじい〝汚臭〟
「うっ!??げえぇ!!!?くせえぇえ!!」
「なにこれ…屁…!?ありえない!」
「くっそ、意味分かんねぇ!なんで屁なんだよ!臭すっ!!!あぶね!!!」
強烈な匂いに鼻を押さえながら涙目の猫理にトールゴブリンは容赦なく突進してくる。
「くっ!容赦ねぇな…ってなんか今までより危なかったな。ピンポイントに俺の位置だったぞ」
「スン…フグルルルルル…。」
すると体勢を立て直したトールゴブリンが目は見えていないのに、こちらをしっかり向いている。
「…は?なんでだ?」
「ネリ…!!気を付けて!!」
「お、おう?いや常に気をつけてるが…」
「この、屁…微量だけど魔力反応があるわ!多分私たちの体内の魔力に染み込ませてるのよ!」
「…ってことは??」
「匂いに加えて自分の魔力を染み込ませてるから…目が見えてなくても…」
「場所が分かるって事kっっ!!!!!あぶねぇっ!!!!!!ホントに精度増してやがる!!」
間一髪で避けれたものの飛び散った石の破片で服が切れ皮膚に当たり、血が滲む
「くそぅ…普通にいてぇしこれ縫うの大変なんだぞ!!!」
トールゴブリンからしっかりと距離を取りつつサーベルを構える
「……て言うか何で狙うの俺ばっかりなんだ?大体、目を潰したのミレルだぞ?」
「…??さぁ…。私にも分からないわ」
「ふーむ。もしかしたら紳士的なトールゴブリンなのか……も……」
そこまで言ってある事に気付く。
「異世界……ゴブリン……女……。」
それは『エルフ×オーク』並に定番の組み合わせ。
「何ブツブツ言ってるの?」
…これは俺がもし倒れたら…ヤバイやつや。
絶対に負けられねぇ!!!
負けた後の展開が想像通りだとかなり悲惨な光景になってしまう。猫理は再度気合いを入れ直す
「ミレル!!あとどれ位で溜まりそうだ??」
「えっ、あと…そうね集中すれば3分!!」
「3分!!分かった!必ず俺が稼いでみせる!!魔力貯め頼んだぞ!!」
「あ、う、うん。な、何でそんな急に気合い入ったの…?」
なんて呑気なことを言ってるお姫様を横目に俺は
トールゴブリンに宣言する。
ぜってぇ…ぜってぇさせねぇからな!!
お前…俺を殺してミレルにするつもりなんだろ…するつもりなんだろ!!!
「エロ同人みたいに!!!!!」
「エロ…ふぁ!!???」
ーーミレルの魔力が貯まるまでの3分間。
猫理の決死の時間稼ぎが始まる。
「ねぇ!!え、エ…ロ…ど、同人って!ねぇ!何なの!?ねぇ!!!!」




