第10話:国王
右手でドアノブを握り左手で拳をつくる。
しなやかな手首のスナップを生かしーーー!!
コンコンコン
優しく、しかし聞こえるような音で3回ノックする。
…なんだろう。ここまで緊張したノックは初めて。
数秒沈黙が訪れあと部屋の中から返事が返ってくる
「…はい?何の用だ?」
低く、体にズシリと来る声。国王に相応しい声だ
ーーが、しかしその思いは一瞬にして砕かれる
「何カッコつけてんの?私なんだけど!用があるから開けて」
「あっ!!ミレたんね!!ごめんごめん!今開けるよ~!!」
ガチャ
娘が来ると、唐突に猫なで声に変え、娘が来たと思い、満面の笑みでドアを開ける。
向こう側からドアを引かれ、ドアノブを握ったままの俺は引っ張られる
ニコニコしながら俺の顔ドアップに近づけてきた、わりかしイケメンなおっさんが…ミレルの父親なのだろう。
タイミングが最悪であった。
急に変わる声、満面の笑みのニッコニコしているおっさん(国王)が自分の鼻すれすれの距離に急に出てくる。そんな状況に耐えれるわけはなく。
「ぶっぶふぅーー!!!!??」
盛大に吹き出した。唾を散らしあげ、目を見開き、おっさん(国王)と見つめ合いながら。
唾を吹きかけられた国王は真顔で俺を見つめながら後ろのミレルに話しかける
「……ミレル。初対面で唾を顔面にかけてくるこの男は誰かね。…私の目が間違いではなければ頬に罪人の証が付いているんだが」
ミスった。完全に。ほぼ最底辺からスタートの状況だったのに、更に最底辺以下に到達してまった。これでは話を聞いてもらえないかもしれない…!!
やってしまったと青ざめた俺を庇うようにミレルが後ろから声をかける
「あっ!あのね!その人は罪人の証付いてるけど誤解でね!?あのっ…理由を話すt…」
「もういい。」
焦って弁解をしようとするミレルを一言で制す。
あぁ、終わった。俺はそう、悟った。
……が事態はそうは動かなかった
「取り敢えず唾男の貴様は危険人物ではない事が分かった。事情があるのだろう。部屋に入ってゆっくり話せ」
「えっ…?わかったってどういう…」
「アレル…私の側近が出てこないのでな。貴様は危険因子ではないと認識されてるのだろう。それなら大丈夫だ。」
なんて信頼度…てゆうかあれか、魔王幹部を瞬殺したという…アレルさんって言うのか後でお礼を言っておこう
取り敢えず国王の部屋に入った猫理とミレルは空いていたソファーに腰掛ける。
その向かいにテーブルを挟んでミレルの父親。この国の王がソファーに腰掛ける。
「それで?要件を聞こう。私の娘と共に行動していた経緯もな」
国王は尋問をするような鋭い口調で話し出す。
猫理はまず自己紹介をし、そしてミレルに話したように転移したこと、罪人にされた事、そしてその後ミレルに拾われ、ここに来たこと。なるべく噛み砕き、丁寧に説明する。問答無用で罪人にされた時の二の舞にならないように。
国王は話を黙って聞き、そして静かに頷く
「なるほどな、事情は把握した。まず貴様が説明した内容を1つずつ潰していこう。お前が異世界から突然転移してきた事、まずはそれを信じよう。」
「!!??えっ!?いやそれが1番信用度が!」
信用して貰って万々歳だが一番疑われると思っていた場所を真っ先に信じられ、疑心暗鬼になる
それはミレルも同等のようだ
「え、ちょパパ!?そこは私でさえ保留にしたのに!」
「いいんだ。これに関しては前例がある。」
「!!??前例って!?どういう!?」
もしかして、俺の他にもここに転移した人が!?
「かなり昔の話だ。もしかしたら1000年近く前かもしれん、この王家にある歴史記録書に記されていた、〝突然我が城前に刀を武装した男が現れた〟とな。まぁそこからその男とは普通に暮らしていたみたいだがな、まぁそこに記されていた詳細に似ている。」
「ちょ、ちょっとまって!そんな本当かわからないような話で信じるのはどうかと思うわ!」
信じてくれた話に反対するミレルだったが、いささか自分でもその気持ちが分からないことはない
「丁寧に話そう。まず、俺がこの話を信じる理由は3つ。1つ目は、この〝どこからか急に人が現れた〟と言う話は王家の中でも現状俺しか知らないからだ。故に言い訳に使おうとは思わんだろう。2つ目は、この転移と言う話で無ければ到底この国に入るのが無理だと言うことだ。魔王軍ならまだ分かるがそれならこの国に入った時点で暴れれば良い。しかも我が娘は殺せる機会はいくらでもあったであろう?…ま、それにアレルも動いてないしな。これも理由だ。」
「う、ま、まぁそうだけど…」
「そして、3つ目の理由だ。」
そこまで言うと国王は少し黙り、しっかりと俺の目を見据える。
その緊張感に思わず生唾を飲む。
そして俺を見ながら国王はこう言う。
「隣国。ベルヒュルト国にも突然、人が現れたそうだ。城の見回り警備中に突然目の前に落ちてきたらしい。」
「なっ!!!??」
俺以外にも転移した人が!?しかも同タイミング!?同じクラス…?いや、まず日本人か…?
様々な疑問が猫理の頭に浮かび上がる
そんな頭の中の疑問を吹き飛ばすように国王が詳細を話す。
「その突然現れた〝少女〟は捕えられ、尋問されたが解放され、今はベルヒュルト国の警備監視の元城内で過ごしている。」
ほ…うまくいってるのか。それは良かった…。
猫理は転移者が自分と同じ用になっていない事に安堵する
「まぁ、と言うことだ。俺はお前が転移してきた事を信じよう。そこを信じればお前が説明した内容も全て理解が及ぶ。ですまないな。我が国の国連治安維持会のやつが。しかし分かってやってくれ。アイツらはこの転移の話を知らない。俺だって知らなかったら信用してなかったかもしれん。…かと言って冤罪には違いない。俺が代表して謝る。すまん。」
国王は頭をさげる。これは他の人に見られていたら大事件かもしれない
「ちょ!?ちょ!!べ、別に大丈夫ですよ!もう仕方ない事ですし!第一…そこまで対処するのも当たり前ですし…。」
この国はこの世界で1番重要な国。逆にここまで警戒してて当たり前なのだ。
「ありがとう。君…猫理君が理解あって本当に助かるよ。それと、見た所、魔生魔法陣を使ってないみたいだな。まぁそれもそうか。取り敢えずこの世界で生きていくために自分の能力を開示しておこう。儀式の準備を始めよう」
おぉ!ついに!ついにこの時が!俺にも能力が付くんだ!
この時の俺はテンションが上がっていた。かなりの期待とワクワクで頭がいっぱいだった。
しかしそんな気持ちは、国王がふと思い出したかのように放った一言で全て吹き飛ぶ。
「あぁ、そう言えばベルヒュルト国に急に転移してきた子、名前が猫理君と似ている感じだったな。確か、頓宮 鳴瑠だったかな?同じ種族ではないのか?」
「ほー!日本人なのか!!…え?…頓宮…鳴瑠……えっ!?ふぁっ!??鳴瑠!!???」
まさかの隣国に転移したきたのは同じクラスの女子だった。




