第9話:信用と不安
「あの…ミレル?な?落ち着け?な?」
「大丈夫だって!まぁ何とかなるわよ」
「いや、大丈夫じゃないし!何とかならないし!?」
俺は手を握られていて、本気で抵抗するが問答無用にミレルにズンズン引っ張られている。
「いや、あの、えっ、手を振りほどく所かビクともしないんだけど!?」
「当たり前でしょ?あんたはまだステータス、言わば自分の体の基礎を作ってないのよ?そんな状態で王家のステータスを持つ私に抵抗できるわけないでしょ?」
なんてこった。となると俺はこの世界でステータスを会得し、魔法陣…紙?とやらに血を垂らさないと産まれたての赤子状態なわけか
…って納得してもこの状況はマズイ!
なんで国王に会わなきゃいけないんだよ!
王の力でこっそり出来ないのか!?
そんな猫理の心の声が聞こえたかのようにミレルが答える
「あなたが罪人であろうと無かろうと魔生魔法陣を貰うには国王の許可無しには貰えないわよ?」
何それ初耳!…って言うか
「え、いやソレきつくね?だって生まれる人全てに許可出すのか?国王何人いるんだよ」
さすがに国王のクローンとかいないと無理だと思うレベル
「いいえ、それは違うわ、魔生魔法陣は、その一族の長が許可を貰うと血が繋がっている子孫は全てギルドで申請出来るの。基本は気軽に出来るものなのよ?どこの家系とも血が繋がってない子孫なんか生まれないし、もしその一家の長が大昔に魔生魔法陣を使用してなくてその子孫が生まれた…ってケースがあったとしてもかなり稀よ?」
「あー、なるほどな。普通なら国王なんか関与しないわけか」
って事はつまり俺の場合、異世界に急に飛ばされたわけだから親族はこの世界にはいない。故に魔生魔法陣を申請できないのか
「そして魔生魔法陣をその家系で初めて使う場合は軽くだけど初期登録が必要なの。もともと一族の長が登録を済ましていたら魔法陣がいきなり出てくれるのよ」
…つまりミレルは何だかんだ言いながら俺を試してるわけか。異世界に飛ばされたという話をここで確かめる気だな
もし嘘なら既に登録してある事になって魔法陣が出てくるもんな
「やっぱ、気付いてるよね?なんかやり方汚くてごめんね?でもこれは裏を返せばあなたを信用してるからなのよ」
「この国の心臓部とも言える場所にホイホイと第1級犯罪者を招けるあたりもし俺が嘘をついてても対処は出来るみたいだな」
「うっわ!何そのひねくれた言い方!せっかく良くしてあげてるのに!」
野垂れ死ぬ所を助けてもらって恩は返しきれないはずなのだが試されていると言う状況に少し腹が立ち、そんな事を言ってしまった。普通に考えてまずこんなチャンスすらないのに関わらず自分は最低だと思ってしまう
「あ、いやすまん、まだ落ち着いてないんだ…本当…すまん」
「まぁ猫理の話が本当ならいつパニックに陥ってもおかしくない状況よ。そこは考慮してるわ。てかあなた適応力高すぎよ」
「ま、まぁ元の世界でも似たような物語とかあったしな…って言うか俺が言った第1級犯罪者を連れてきても対処できるって言葉に否定の返事が無かったがほんとうに対処出来るのか?」
「え、何それ今からここを襲いますよってフラグ?」
「違うわ!!!そんな事出来ないし第ーしないわ!」
「まぁもし暴れた所で無駄でしょうね。多分一瞬で片付けられる。…だってここはこの世界で1番上の国よ勿論警備もね」
ミレルはふと思い出したような仕草をとる
「あ、そうねこの城の警備の凄さを例えれるいい話があったわ」
「?お?どんな話だ??」
「この城に私を狙って魔王幹部が攻めてきた時の話よ」
「ふぁ!!!?おいそれそんな軽い感じで話す内容なのか!?」
「??えぇ。ほんと軽かったから。その魔王幹部…確か魔将四天王のなんたらディレイ…みたいな名前だったかしら、時期国王である私、そして国王の血縁を絶やす為に魔物引き連れて攻めてきたの」
おい、それ肩書きからするにかなり高位な幹部じゃないのか。
「なんか最初、鎧を着た兵士のフリをしてて集会かなんかで皆が集まっている時に急に笑い出してその鎧の中から変な男が出てきて、沢山魔物を召喚して名前と役所を大声で名乗っていたわね…。確か『只今より!我が侵略を開始する!!』とかだったかしら」
「お、おお、みんな集まってるって言ったって全員兵士じゃないんだしメイドとかいるだろうし、そこに魔物だらけってやばいんじゃないのか?」
「うーん、でもその人その決め台詞言った瞬間敵だと認定したこの城きっての精鋭が瞬殺したわ」
「瞬…!!魔王幹部をか!?」
魔王幹部がどれ位の強さかは知らないがこの世界が障壁を貼って常に警戒する程の脅威ではある魔物を大量に召喚できる位なのだから普通に強いのだろう
「そうそう。その人はね常にパパの隣にいて守ってるの、なんか凄い能力の持ち主でこの国では一番強いわ」
「まじかぁ…魔王幹部瞬殺とかそいつ1人で魔王来たら斬り込みに行けよ…」
「うん…いやその人でも魔王には適わないわ。かなり強いけど…もっと強い敵もいるの。それも魔王より下なのに」
「なんかそれに関してもあったみたいだな。そこは今は聞かないでおくよ」
何故か少しミレルが話したくなさそうな、そんな空気を感じたからである
「ん。そうするわ!…何よいっちょ前に気を使って!」
「いいじゃねぇか別に!」
「ま、でもどっちにしろ話はここまでね」
ミレルが手を引く力を緩め足を止める。
俺の目の前には装飾が綺麗な両開き扉がある。
「着いたわよ国王の部屋!さ、入りましょ」
唐突に娘と共に挨拶に来る第1級犯罪者。
……これどんだけ理解がある父親なら許される状況なんだ。
俺は帰りたい気持ちを押し殺し、ドアノブに手を掛けた。




