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マジカルメタモルショータイム!  作者: 夜狐紺
第2章 魔法のお菓子は甘くない?
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第12話 幻

 あ、あれは……。

 床に落ちていたのはフィーがくれた、星空の、手袋。

 そして、ハッとして見れば。フィーは今も、夕焼けの手袋を身に着けていて。

 嫌だ。認めたくない、考えたくない! 

 だけど、思い出してしまう。

『この手袋は、他の人が想像したイメージを読みとって、膨らませて、変化させることができるんですよ!』という、フィーの言葉を。

 かた、かた、かたかたかた……。

 お城全体がアラメリゼの体が、ぷるぷると揺れている。

 フィーが身に付けていたのは、食べ物のイメージを膨らませて変えることができる、夕焼けの手袋。

 アラメリゼが身に付けていたのは、食べ物以外のイメージを膨らませて変えることができる、星空の手袋。

 そして。

 夕焼けの手袋は、アラメリゼの思い浮かべた『お菓子』のイメージを。

 星空の手袋は、フィーの思い浮かべた『お城』のイメージを。

 それぞれ、読み取った。

 つまり……あの時、本当は逆だったんだ。

 アラメリゼはフィーとシロップにお菓子化魔法を、フィーはお城を『何か』に変える魔法を使った。

 そうアラメリゼは考えていたけど。

 二人とも手袋をはめていたから……実は、魔法が入れ替わっていて。

 アラメリゼは本当はフィーとシロップに、お城を変える魔法を使っていて。

 フィーは本当は、お菓子化魔法を使っていた。

 手袋は、相手のイメージを読みとって、膨らませる強化する力が有る。

 だから、普通にアラメリゼやフィーが魔法を使う時よりも、ずっとずっと……それこそ、お城全体を変えちゃうぐらいに強力な魔法が二人から伝わって、それが合わさって、増幅した?

 そして……願いが強ければ強いほど、魔法は強力になる。

 だけどアラメリゼが着けていた星空の手袋が読み取ったのは、『お城に魔法を掛けたい』というぼんやりした願いだった。

 それに対してフィーが着けていた夕焼けの手袋が読み取ったのは、『フィーとシロップをケーキに変えたい』というアラメリゼの強い強い願いだった。

 だから、フィーのお菓子化魔法の威力の方がずっと強力で。

 だからこっちの魔法を押し切って、アラメリゼに振り掛かった。

 つまり。アラメリゼが二人をお菓子に変えたいと強く願っていなければ、こんなことには、ならなかった……?!

「――違う!」

 思いっ切り叫んで、びりびりと衝撃がお菓子のお城中に走る。

 アラメリゼが悪いなんて、有り得ない! 

 それでもアラメリゼの魔法が、こんな変なマジシャンの子に負ける訳がない! 

 フィーのお菓子化魔法だって打ち消して跳ね返して、逆にあっちをお菓子のお城に変えちゃってるはずなんだ! 

 今までずっと、ずっとずっとずっと生意気な魔法使いを魔女っ子達を、お菓子に変えて来たのに!

 どんな魔法使い達だって、アラメリゼに掛かればあっという間にお菓子になっちゃったのに!

 魔法が衝突したって、負けたことなんて一回も無かったのに!

 フィーとシロップなんて、あっという間にお菓子に変えられちゃうのに!

 どうして、どうして、どうして――。

「あっ……」

 思い出す。

 あの時は、なんとも思ってなかったけど……そうだ。 

 あの時。フィーは。

 白うさぎと――シロップと、手を繋いでいた。

 だから、フィーとシロップ。二人の力が、合わさって。

 だから……アラメリゼの魔法が、押し負けた?

 そんな……嘘。嘘、嘘、嘘、嘘!

 だって、シロップに、あの臆病な白うさぎに、そんな力が有るなんて思えない。

 それに、手を繋いだだけで、アラメリゼを負かすぐらいに魔力を高められるなんて、そんなの、有り得ない!

 やっぱり、やっぱりこれはただの悪い夢なんだ。幻なんだ!

 きっと本当のアラメリゼは今頃、フィーとシロップで作ったおいしくて甘いケーキをぺろっと食べちゃってるところなんだ……!!

「ねえねえ、アラメリゼ様!」

 と、言う声にハッとする。

 見ればフィーは、くんくんと鼻を鳴らして、青い瞳をキラキラと輝かせていて、舌なめずりをして……。

「アラメリゼ様、とってもおいしそ~! 一口、食べても良いですか!?」

「ひっ!」

 その目は、口調は、本気だった。

 人間じゃなくて、食べ物に、お菓子に、向ける視線。

 そっか、お菓子。お菓子なんだ、アラメリゼは今人間じゃないんだって、ようやく気が付いて。

 それで、背筋が凍るぐらいの恐怖が襲ってくる。早く、早く何とかしなきゃ……!

「い、良い訳ない! だってアラメリゼは、この国のお姫様なの!! よりによってアラメリゼがお菓子になるなんて……!」

「でもお菓子の国のお姫様が、国で一番凄いお菓子になるのって、素敵ですよ! 全然変じゃないのになあ」

「とにかく! アラメリゼはこんな変なの嫌! 早く二人で、アラメリゼを元に戻して!」

「そこまで言うなら……分かりました! シロップ、ちょっと手伝ってくれる?」  

 するとフィーはあっさりと納得してくれたみたいで、シロップと手を繋いで再びステッキを持った。

 そう、そうこなくっちゃ。お菓子になっちゃったんだからきっと、お菓子から人間に戻ることも出来るはず。

 フィーとシロップの力だけで難しいなら、アラメリゼの召使いの魔法使い達全員の力を合わせれば、絶対上手く行く。いざとなったら、国民みんなを集めればいい。

 だって、お姫様のアラメリゼがお菓子のお城だったらみんな、アラメリゼに変えてもらえなくなくなっちゃうもん。

 アラメリゼにお菓子に変えてもらうのが名誉なお菓子の国。アラメリゼのことをこのままほっとくなんて、有り得ない。

 なんて考えてた、まさにその時。

 バタン!と、アラメリゼの部屋の扉が開け放たれて。

「アラメリゼ様!!!」

 心配した様子で駆け込んで来たのは――。

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