Hello!
第1章と第2章の幕間のお話です。
こんにちは!
本日は不思議な不思議なフィーのマジックショーに……じゃなかった!
えへへ、うっかりしてた。いつもの調子で始めようとしちゃったよ!
フィーのマジックショーは、今日はお休みだったんだ。
ごめんね、また今度、とびっきりのを見せてあげるからね!
その代わりにね、フィーがやりたいのは――じこしょうかい!
自分のことをいっぱいおはなしするなんて、ちょっときんちょうしてるけれど、上手くできればいいなあ。
まず最初にね、フィーの名前から教えるね……って、あれっ、もう言っちゃってた!
そう、フィーはね、フィーっていう名前なんだ! それでね、それでね……ここでクイズ!
そんなフィーは今、どんなお仕事をしているでしょう?
……。
えっ?! 凄い! どうしてすぐに分かったの!?
……って、そっか、これも最初に言っちゃってたんだね!
その通り! フィーは、色んな魔法を使ってマジシャンをしているんだ!
えっ? 魔法なんて、有るわけないって? う~ん、おかしいなあ、どうしてみんな、すぐに信じてくれないんだろう……?
まあ、良いや! とにかく、魔法はほんとにあるんだよ! 魔法の力ってすごいんだから! 願ったことを何でもできちゃうんだ。空も飛べるし、動物さんとお話もできるし、おかしだってたべほうだい!
ね、ね、すごいでしょう?
それでね、フィーはマジシャンとして、この魔法の世界の色んなところでマジックショーをしているんだ。
どんな魔法を使っているかって? えへへ、それはね、それはね……!
人間を色んな物に変えちゃう、変身魔法!
例えば、女の子をかわいい動物さんに変えたり、すてきなおもちゃに変えたり、色んなことができるんだ!
フィーはね、この変身魔法がちっちゃなころから大好きで……だからショーをしている時はとっても楽しいの!
まだまだ半人前だけど、いつかはもっともっとすごい魔法を使えるようになって、お客さんたちをもっともっとよろこばせてあげたいな……!
どうかな? フィーのことちょっと分かってくれたかな? じこしょうかい、これで上手くできてるかな? それでね、次は何のお話をしよっかな……そうだ!
フィーはね、おかしが一番好きなんだ。知ってる? 女の子を魔法で変えたおかしって、普通の物よりももっともっと甘くて、すっごくおいしいんだよ!
チョコレートに、キャンディーに、ケーキ!
その女の子にぴったり似合ったおかしに変えてあげると、とってもおいしくなるの。
すてきなおかしになって、誰かをよろこばせることができるなんて……おかしになった女の子たちも、とってもうれしいんじゃないかな? えへへ、そうだったらいいなあ、きっとそうだよね。
だって、おかしに変身する子たちはみんな、おかしになるために生まれてきたんだもん!
たまに自分のことをおかしにして下さいって、お願いしてくれる女の子がいるんだけど……やっぱり、うれしいな、とってもうれしい! 夢をかなえられる様に、フィーもちゃんと魔法をかけてあげなきゃ。
それでね、最近フィーが特に好きなのは、まだ小さくてかわいい女の子を変えた、甘い甘い色んなケーキ! ぺろんとなめてあげると、スポンジとクリームがぷるんってゆれて、とってもかわいいんだよ!
そうだ! ね、今、フィーの魔法でケーキを食べさせてあげるよ!
ちょっと待っててね、今作るから……って、あれ? いらないの? おなかがいっぱいなの?
そっかあ……。食べたくなったら、いつでも言ってね!
もちろんおかしじゃなくて、動物もおもちゃも、みんなみんな大好き!
もしもすごい魔法使いになったら世界中の人を一度にぽんって、自分のなりたいものに変えてあげられることもできるのかな? そしたら、たくさんの動物さんと、おもちゃと、おかしに囲まれて……想像していると、何だか楽しくなっちゃうね……!
え? 他の話を聞きたい? いいよいいよ! それじゃあ、お洋服の話をしよっか!
フィーはもちろん、お洋服も大好きなんだ! ここだけの話、ファッションにはこだわってるの……!
例えば今、フィーが着てるこのピンク色のドレスも、女の子を変えて作ったもので……えへへ、フリルがとってもかわいいでしょう!
でも、ちょっと不思議なんだ。すてきなドレスにしてあげるって言ったら、その女の子は泣き始めちゃって……どうしてだろう? きっと、うれしくて泣いていたんだよね。そう思うでしょう?
やっぱり! そうだよね、かわいいドレスは女の子の夢だもん!
ドレスになった後も一緒にお話したりするんだけど、いつもゆらゆらと揺れて、楽しそうにお返事をしてくれるんだ!
えへへ、そんなによろこんでくれると、フィーもうれしいな……!
でも、雨の日とか、おひるねしたい時とか、着られるのがいやな時も有るのかな? ドレスちゃんがふるふるとふるえてることも有るんだけど……大丈夫!
フィーの魔法を使えば、他のドレス――それだけじゃなくて、おもちゃやおかしに変えてあげることもできるんだ。
だからまた、変身したくなった時はいつでも教えてね、ドレスちゃん、ちゅっ!
あっ、ごめんごめん! 他のお洋服の話もしないとね!
もちろんドレスだけじゃなくて、フィーが身に付けてるくつも、くつしたも、シルクハットも、てぶくろも、ローブもみんな、みんな女の子を変えたんだ! それだけじゃないよ、ブランケットやトランクやアップリケ、フィーが持ってるものはみ~んなみんなそうなんだ!
あっ……! だ、だからね、え、えっとね……実は、フィーが今、はいてるパンツも、女の子に魔法を掛けて作ったものなんだよ。えへへ、パンツの話なんて、ちょっと恥ずかしいけど……でも、これも、じこしょうかい? だよね、それなら全然、問題ないよね……!
うーんと、後はね、どんな話をしようかな?
魔法の話もしちゃったし、おかしやお洋服の話もしちゃったし……そうだ!
フィーのお友達の話をしてもいいかな? 大切な大切な、フィーのお友達!
まだ小さかった頃にフィーは魔法学校に通うことになったんだけど……実は、入学する前は上手くやっていけるのかなって、学校ってどんなところなんだろうって、とっても不安で心配だったんだ。ないしょだよ?
それで入学式の前もずっとどきどきして……怖くて、ふるえちゃっていたんだ。
そんな時、声を掛けてくれた青い髪の女の子が、ロコちゃんだったの!
ロコちゃんはね、泣きそうになっていたフィーと手をつないでくれてね……! そしたらね、悲しい気持ちがすっと引いていったんだよ!
それでね、ロコちゃんとはクラスも、お部屋も同じで、すごく仲良しになって……! 大好きなロコちゃんが居てくれたから、フィーも学校が大好きになったんだ!
魔法の勉強は難しくて、上手くいかないことも有ったけど……ロコちゃんと一緒にがんばったり、それから放課後いっぱい食べたり遊んだりするのはとっても楽しかった! 懐かしいな~!
ロコちゃん、すごいんだよ! 変身魔法の中でも、動物に変える魔法がとっても上手でね、どんな不思議な珍しい動物でも、ロコちゃんは変えることができて……え、フィーはどうだったの、って?
え、えーっと、実験でいっぱい失敗しちゃったことは覚えてる、かな……魔法がぼうそうしちゃったことも……それから……って、今のは、ないしょ、ないしょだよ!
ロコちゃんの夢は、動物と一緒にお仕事をすることだったんだ。
だから、ロコちゃんはそんなに才能が有るのに、えっへんってじまんしたり、なまけたりしないで……寝る時間になってもよく、魔法の練習をしていたんだ。
だから、魔法学校を卒業してすぐに、ロコちゃんはエゼル団長に……あ、エゼル団長はね、とってもすごいサーカス団の団長で、色んな動物さんと仲良しな人なんだ。
それで、そんなエゼル団長と動物さんたちのサーカスに、ロコちゃんもさそわれて……団員として毎日、がんばっているんだ!
ロコちゃんは今、得意の魔法を使って、新しく動物さんに変身させたり、動物さんがサーカスを大好きになってもらう様にする仕事をしているみたい!
この間フローラルウィンドタウンで有った時もロコちゃんは、得意な魔法をいっぱい見せてくれて……楽しそうだった!
それでステージで、新しいパートナーと一緒に――。
……えへへ、ごめんね。思い出すとちょっとだけ、泣いちゃいそうになっちゃうよ。
フィーももっともっと、がんばらなきゃ……! がんばろう!
それじゃあ最後に、シロップのことを紹介するね!
シロップはかわいい白うさぎの獣人の女の子で、マジックショーのアシスタントをしているんだ!
最初、マジックショーのステージで出会った時は人間の女の子だったんだけど……フィーのマジックが成功して、かわいく大変身したんだよ! 獣人に変える魔法はあの時が初めてだったから、ちょっと緊張しちゃったな~。
他の獣人や、動物やものに変えて欲しい時はいつでも教えてね! って言っているんだけど、どうやらシロップは今の、うさぎの獣人の姿のままで良いみたい! 気に入ってくれて、本当に良かった~!
シロップがアシスタントをしてくれる様になってから、マジックショーももっともっと盛り上がって、人気になってきて!
これまでは1人じゃできなかったちょっと大掛かりなマジックもできる様になったし、シロップのファンの子も沢山増えて、とっても楽しいんだ……!
いつもシロップに助けてばっかりだから、お礼をしたいんだけど……。シロップ、甘い物があんまり好きじゃないみたいなんだ。
魔法で女の子を変えて作ったお菓子なら、とっても甘くておいしいから、どうかな? と思ったんだけど……。
うーん、どうしようかなあ。シロップに、どんなお礼をしたらいいんだろう……???
ずっと悩んでいたんだけど……あ、そうだ!
それなら、シロップに魔法を教えてあげればいいんだ! それなら、いつかシロップがお菓子が食べたくなった時にいつでも自分で作ることができるもん。
それに、かわいい服が着たくなった時も、楽しいおもちゃで遊びたくなった時も、魔法を使えばすぐにできちゃうもんね! だから最近シロップに、魔法を教えているんだ。
まだまだ、上手く行かないことも有るけれど……きっといつか、シロップも魔法が使える様になって、……魔法が、好きになってくれるよね……!
楽しみだなあ。シロップは、どんな魔法使いになるんだろう?
……。
ふー……。まだ、ドキドキしてる……初めてだったから、ちょっとドキドキしちゃった!
えへへ、どうだった? フィーのじこしょうかい。
いつもよりももっとちゃんと魔法のことおはなしするの、とっても楽しかったよ!
上手にできてたかな? 何か変なこと言ってなかったかな……? もしも言っちゃってたら……ここだけのないしょにしてね!
でも、とっても、すっごく楽しくて、わくわくしちゃった! 本当に、ここまで聞いてくれてありがとう!
マジシャンのフィーの、じこしょうかいでした!
それじゃあ、またね――。
――ぐー……。
あ、あれ? 今のって、もしかして、フィーのおなかが鳴ったの……!?
ずっと話してたからかな、おなかが空いちゃってたみたい……。
や、やだ、ちょっと恥ずかしいよ~!
でも、よくよく考えてみたら、そろそろおやつの時間だよね。
フィー、甘い甘いおかしが食べたくなっちゃった……!
そうだ、ねえねえ、あなたはどんなおかしが好き?
フィーはね、やっぱりショートケーキが好き!
だけどね、モンブランでも、タルトでも良いよ!
何でもなりたいおかしを言ってみて!
フィーが魔法を使って、ぴったりのおかしに変えてあげるからね!
大丈夫、心配しないで!
女の子はみんな、とっても甘くておいしいおかしになれる――あれっ、どうしたの?
どうして泣いて……あっ、そっか!
えへへ、うれしくて泣いちゃうなんて……!
フィーもしっかりと、魔法を掛けないとね……!
大丈夫、フィーの魔法はすごいんだから!
きっと、とってもおいしいおかしになれるはずだよ!
第1.5章 Hello!――おしまい