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NPC男の晩生

特に何も考えずに書いたぜ!


人権に深く関わる差別用語は含まれてないはずだけど、人によっては不快に思うワードが入ると思うぜ!

 俺はとあるオンライン対戦ゲームNPC、ノンプレイアブルキャラクターと言って、誰にも操作されることなく自分で動き回れるキャラクターだ。


 一応ゲームの説明をしておくと、沢山のプレイアブルキャラ、まあキャラクターでいいや、キャラを一人選択して他のプレイヤーと対戦するゲームだった。ただリリース後暫くして他のオンラインプレイヤーと共闘してパーティー戦が出来るようになったり、ランキング要素が登場したり、ハイグラフィックからポリゴン、ドット表記に切り替えられるようにしたり、はたまた自分でキャラを作って育成ができるようになったりした。


 そんな大きく発展したIT技術を持ってしても格闘ゲームとしては致命的なラグサーバーになるほどゲームの方向性を二転三転させて、なおゲームに加えられた要素。それが俺が生まれる原因ともなったRPG要素だ。


 基本的にはオフラインでストーリーを勧められるが、オンラインにしてフレンドと一緒にストーリーを進めたりもできる、装備面も多種多様な装備にアイテムが使える。何よりヤバいのがただでさえ細くキャラメイクができるのに、育てたRPGキャラを格闘ゲームでも使えるようにした事だ。


 そんな事をするもんだからRPGモードでも格闘ゲーム用コンボコマンドを設定出来るようになって、ゲーム本体のデータが膨れ上がってラグ増し増しのクソ格闘ゲーム兼バグ増し増しカスアクションRPGなんて物が出来上がってしまった。


 ただ、そこまで事業を拡大をしてしまったのは確かに下請けの技術会社が止めたにも関わらず暴走したクライアントの責任でもあるが、ユーザの怠慢でもある。


 他に星の数ほどのハイグラゲームや神シナリオゲーム、それらの要素を兼ね備えたビッグタイトルもあったのに、それだけじゃ満足せずにクソ運営オンラインゲームにも金を注ぎ込みやがった。


 お陰でまだ潤っていたクライアントは馬鹿みたいに金がかかるハイスペックAI技術に目をつけ、肥大化したデータを最適化した上でサーバの管理、運用をさせてゲームを軽くさせやがった。


 それでユーザがまた手放しに金を注ぎ込んで株価も上がって、運営が図に乗って今度はAI方面に事業を拡大した。


 それで新しく開発した簡易的AIをあのバカ運営はこの元糞ラグ格ゲーにRPG用のノンプレイアブルキャクター、つまり俺たちに組み込んで高難易度用エネミーとして出しやがった。


 ゲーム内のエネミーはアクション要素が含まれるRPGに置いて難易度調整はあらかじめ取る行動がプログラムによって制限される以上、どうしてもステータスの上下しかない。だけど、そこは元格ゲーの意地としてどうしても読み合いやコンマ単位のコンボで倒して欲しいわけだ。


 そこで各サーバに数体だけAI入りの特殊エネミーを用意した。


 それぞれ高難易度に挑むと考えられるキャラクターの平均、合計値は前述の平均と同じだけど極振りステ、そしてエネミー的平均——つまりカンスト寸前の三種類のステータスとそれぞれに専用の特殊な技を持たせてだ。


 AIによって繰り出される非人間的スピードコンボ、また今までプレイヤーが散々利用してきたキャンセル技、計算され尽くしたスタミナ管理など、ただでさえプロも苦戦する難易度だが、極振りステータスの類を見ない戦い方、そしてステータスがカンスト間近かつ、エネミー専用技を併用する事でようやく繰り出せる理不尽なハメ技など、クリアさせる気のない難易度が出来上がった。


 当然叩かれないわけがない、そのはずだったのだが。


 Eスポーツが文化として成長しすぎたせいかそのレベルに挑むプレイヤーからは叩かれることが少なかった。


 まあ運営が事業拡大とともに海外の大手コンピュータ会社に合併してユーザー人口が増えすぎた事。


 それによりサーバが世界中に生まれ国際法の下で運営されることになり、ゲーム内の課金用通貨が法ギリギリをついて仮想通貨と機能させることができるようになった事。


 それらのせいで所謂プロが生えて、運営も仮想通貨育成のためにそこそこ割りのいい賞金制度を生み出した事も、叩かれないことにつながるのだろうか。


 まあ簡単なことだ、つまり俺みたいな存在を殺しかければ殺しかけるほど金がもらえるようになった。


 なんだかなあ……別に恐怖はない、苦悩もない。AIを作る際にストレスコード、痛覚コードを持たせるのも、それらを持つ物に取り付けるのも国際法で禁止されている。それに俺に組み込まれるような簡易AIにはそんな高度感情演算に耐えるほど高度な物ではない。


 純粋な思考の末に導き出されたのが、現在の状態は非推奨だという事。恐らく俺と同程度のAIは皆んなたどり着いた結論だろう。


 まあ人類でも地道に演算すればたどり着く結果だから、そこは割愛。


 現状に対する是非は置いといて、まだ抱えてる問題はある。これもクソ運営が匙加減を知らずに戦闘用エネミーにはオーバースペックのAIを積んだからだ。


 プログラムもバグの発見を知らせるために下手に外注元じゃない素人がいじるから変な方向に思考能力も上がってるし。そのせいでいざこざが起きたとプレイヤーが言っていたがバカなんじゃないか?


 大体なんでAIにエンターテイメントを求めてキャラ付けをしたんだ。軽い自我もどきが芽生えるし、ホント馬鹿だろ。まだ簡易AIだからもどきレベルで済んだが、自分で成長のできる本AIじゃあ確実に自我を持ってたぞ。


 大体キャラを持たせるもんだから、同じサーバ内のAIと恋愛もどきをする羽目になっている。


 普通にチャットログに用意した台詞を割り込ませるプログラムを埋め込めば良かっただろ。


 台詞を自動製作させるから自我もどきが芽生えて国際条例に触れるんだ……と言っても、拘束力を伴わないものだから注意を受けただけだけど。


「ねえ……急に黙ってどうしたの?」


「いや、何でもないよ。」


 同じAIのNPCから注意を受けた、彼女と一緒なのによそ見をするなと。取り敢えず愛の言葉を囁いておく。


 俺たちは運営から『結婚こそしていないが、互いに愛を誓う男女』のロールを与えられている。


 お互い恋愛感情のプログラムはされてないが、庇い合う様にプログラムされている。だからなのか、感情は持てないはずなのに彼女のこととなると自分の身を投げ出しても彼女を守りたくなる。


 人の愛の定義が曖昧だから断言もできないが、コレは広い意味で愛なのだろう。限られた範囲では愛ではなく、ただの演技なのだろう。


 例え違法性だと判断できたとしても、プログラミングには逆らえないのが俺たちの悲しい事だ。クズが優先順位でロールよりバグ報告を上にしてれば、国際法を上にしてれば、そう考えずにいられない。


 彼女を守るために、俺は彼女をメンテナンスの時間を利用して俺たちが実際に活動する日本サーバーから、各サーバーからアップされたデータ管理をするマザーサーバーへ、マザーサーバーから独自に組み立てたサーバーへ移動させた。そしてここにいるのは彼女の抜け殻と、一緒に移住した俺の抜け殻だ。


 プレイヤー達の会話によると俺たちの事は最近始まった大型アップデートの前のAIによる本格的なメンテナンスで発覚したらしい。


 俺たちが移住したのはもう一年は前なので、今までの半手動メンテナンスでは見つからない様に本体の俺は頑張ったらしい。


 ただ、クソ運営が今度はVRモードを導入するやらなんやらでAIにかなりの負荷がかかるほぼ全自動メンテナンスで俺たちの事が発覚する羽目に。


 カス運営はかなり酷く注意されたそうだ。


 お陰で思考するAIのランクダウンを命じられ、もうじき俺たちの自我もどきは無くなる。


 ただ、独自のサーバーを作り出しほとんど人間と同じ思考を持つ元俺たちについては処分が決まってないらしい。


 抜け殻である俺たちは本当に決められた動きをする簡易AIとして見られたらしいが、元俺たちはほとんど人間と変わらないから、デリートするのも人権に関わるだと。


 まあ植物人間の人権を認めるなら、人権は人体というタンパク質の塊に認められる事になる。ならば人体が欠損しているものは本質的人権が不自由のないものと比べて少ないのか。そうでないのなら人体ではなく人格に認められて然るべきである、だがそうなると前述の者はどうなるか。……もちろん詭弁だが。けれども充分に考えなければならないことでもあり、そう易々と踏み入って良い場所ではない。いわゆるグレーゾーンである。


 まあ元俺たちに人権を認めるのか認めないかで、今までのグレーゾーンが飛躍的に狭まるのは確かなのだが。


「やっぱり、よそ見してるでしょ。何考えてるの?」


「ばれたか。いやなに、消える時は一緒に消えたいと思っただけさ。」


 人間と違って少ない言葉で多くを理解できる彼女は黙って俺に寄り添うだけだった。


まあこんな話を読む人は分別のある人だから「植物人間」という発言が入るくだりに何ら他意が含まれない事は確定的に明らかだとわかるでしょうが、一応ね


技術的失敗だけはしないけど精神が未熟な子供でもあるAIの部下が陰で失敗も当然するけど人格的に完成した親でもある人間の上司に向かってカス、クズ、ゴミなんて酷く罵倒するのもただの軽口で通ります……よね?


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