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よっる

 冷たい明かりに満たされた狭い部屋の中に、ゴーっとエアコンの音がする。


 黄ばんだカーテン、家庭用ゲーム機、本棚から出されたまま積み重ねられた本、小型テレビと、携帯電話、そしてとうとう外見にまでガタがで始めたタワー型パソコン。それほど物は多くないはずなのだが、ウサギ小屋のようなせまっ苦しさだ。


 パソコンは父からのお下がりで、スペックは相当ひどい。

 余りそういった分野に明るくないので弄って延命することもできず、もう何年も起動されずに埃を被ったままの、いわゆる「箱」である。


 このパソコンも購入当時は結構なシロモノだったらしいが既に小型のパソコンに性能で負けるらしく、まだ生きていた時代に譲り受けたまま、静かに眠っている。


 まあ経緯やらを長々と語るよりも、実際に見て出力機がブラウン管の時点で察しはつくが。


 ふと、今度電気屋にでも見せようかと思った。

 確か友人の弟が電気屋づとめだったはず。

 骨頂品をガワはそのままに使えるようにしろだなんて面倒な注文も知人になら頼めるし、それに多少値段が張ってもまあ気にはしない。


 暖かな寝室からキッチンへ移動し、急いでビールとつまみを引っ張り出し戻る。

 ビールはとても冷えている。冷蔵していたわけではないのだが、冬という季節は何かと便利だ。


 つまみはドライソーセージとチーズ。寝室のテーブルに置いてある豆皿に出して黒胡椒を振りアクセントをつけ、爪楊枝で口に運んだ後、チーズのまろやかさとソーセージの脂をよく味わった後にビールで流し込む。

 それら全てを片手でやりながらもう片方の手では携帯を弄りながらまったりと過ごす。


 一缶、二缶、三缶と。見る見るうちにビールは蒸発し時計の針は上がっていった。


 お風呂に入らなければ、そろそろ溜め込んだ洗濯をしなければ、こんなに飲んで明日は二日酔いだろうな。


 酩酊した頭にドンドンドンドン警報が鳴らされるのだが、どこか空虚にも思える。風呂や洗濯は水道費がかさばるし、明日はそもそも休みなのだから関係ないのでは。


 明日は人に合わないようにしよう、そんな思考に陥ってる間に四本目のビールが尽きた。


 家にはビール缶はもうないはず、普段なら二缶で満足するのだが今日の寒さはやけに私にアルコールを求めさせた。

 そういえばキッチン収納には容器的には一杯程度しかないが料理用の日本酒があった事を思い出す。


 今夜はそれで最後にしよう、そう思って冷蔵庫からスルメイカを取り出しグラスに日本酒を注いだ。ウィスキー用のロックグラスだったのだが、酔いに酔ったその時のわたしにはなるほどコレは酔狂だ典雅だ風流だとしっくりときた。


 スルメを奥歯ですり潰し口がイカ独特の旨味と臭みでいっぱいになった頃、ようやくグラスを煽り、むせる。


 甘い、甘さと同時におかしな味がする。そこで漸く酒が黄色く色づいてることに気がつき、自分が手にとったのは味醂だということを知る。


 自分の愚かさにはほとほと呆れるというか、酔った調子でおかしなことはするもんじゃないと改めて思った。


 その夜のまずい酒はその勉強代だと自分に言い聞かせ、グラスを思いっきり傾けた後に冷水で顔を洗いその夜は寝た。

ついでに主人公の「私」と違って、作者の自分はお酒に手を出したことがないのでお酒の部分の描写は見ての通りスッカスカです。料理用の日本酒やワインで料理はしたことは結構あるんですけどね。

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