ひっる
冬の昼というのは気分がいい
なんと言っても暖かいし、ご飯が美味しい。
家で1人もそもそとご飯を食べずに食堂でご飯が取れるし、やっぱり周りに人がいるのは落ち着く。
窓から見える景色もいい、枯れ木枯れ草枯山水。枯山水は嘘だけど、枯れた植物というのは風情があるし、夏みたいに虫がいなくていい。
虫は嫌いだ、子供の時はなんとも思わなかったものだが今では反吐が出るほどに嫌い、憎んでいるというか恐怖というか。別になんでもないのだ、何か気に触ることをされたわけでもましてや怪我をさせられたこともない。
ただ気持ち悪いから嫌い、異質だから嫌い、汚そうだから嫌い。それだけ、過剰なほど嫌ってるというわけでもないけど、でも見ていると胸の中で何か良くないものが蠢くような不快感がある。
ただ、冬の嫌うことは寒すぎること。最近食べているのはカレーうどんとおでんと力うどんときつね蕎麦と狸うどんと鍋焼きうどん……うどん多いなぁ。
そう、寒いと食の偏ることが甚だしく困るのだ。
なんで寒い冬に食べるうどんはあんなにも美味しいのだろう。夏はあんまり食べる気はしないんだけど、冬になるととても食べたくなる。お陰で毎年冬に太って夏に痩せてと動物みたいと誹りを受けるハメに。
冬は四季の中で2番目に好きだ。食べ物が美味しく感じるし虫はいないしスキーやスケートとレジャーがある。秋の華やかさの後の冬の静けさは趣がある。
秋はいいものだ、四季で一番好きだ。
紅葉で彩られる秋の山々や、カラッとした青空はいい。まあ実際には、そんな大自然に行く時間はなく雑誌で見るのがほとんどな物だけど。
秋はたまに松茸のお吸い物や栗の炊き込みご飯、柿に焼き茄子と食べ物が美味しくなる。冬にはうどんうどんうどんと物量で太らせられるが、秋は質で勝負される。もちろん、自制心で抑え込んで何とか食べずにいられるが。
そう考えても、冬はやはり秋に劣る。寒すぎると食欲を抑えることができないものだ。健康的に考えると秋は一番だ。
夏は大嫌いだ。
ジトジトと腕に張り付くワイシャツ、食欲的に素麺以外のものは受け付けずにいつもフラフラになる。ただ、スポーツ飲料が一番美味しく感じる。ギラギラと照りつく夏の日差し、ヒリヒリとした肌をムワッと包み込む熱気。
そして屋内に入ると、効きすぎた冷房が腹に殴り込みをかける。ペタと張り付く下着が急激に冷え、自身の汗の匂いに不快感が増す。
仕方がないので香水を軽く吹き付け、タオルで汗を拭き取る。
体はいつのまにか冷えた室内になれ、人間の熱気を感じるようになる。窓には蝉の鳴き声がして、机に向かうのに嫌気がさした頃に席を立ち自販機に一目散に向かうのだ。
そしてよく冷えたスポーツ飲料を買って、喉に流し込む。
一口、二口、三口と塩味の効いた水が喉を流れてゆく。
半分まで飲み干して、今度は麦茶を買い席に戻る。
味の濃いスポーツ飲料を飲み終えた後しばらくして飲むぬるい麦茶。これがまたたまらなく旨い。
優しい味わいで、今までの舌に残った塩分を洗い落とし、爽やかとは違うが素朴な気持ちになる。
春は少し嫌だ、小鳥がさえずり後輩が増え食欲が衰えて行く。楽しみはたけのこのボリボリとした食感を楽しむ他ない。あまり印象がないのも確かだが、好きか嫌いかでいえば好きな方だろうか。嫌なところもあるが好きなところもある。
そうまでして考えていると、お腹が鳴ってしまった。みんなの前でと言うこともあるが食堂でお腹を鳴らすというのも、また恥ずかしいものだ。
逃げるように注文に行った。
今日はメンマが食べたいので、ラーメンでも食べてみようか。