祭の最中(ルー視点)
閑話的小話
隣ですうすうと寝息を立てるミヤコを、俺は見つめていた。
空が白み始めた頃。俺は早く起きるほうだ。
ここは領主の館の一室。人の良い領主が昨晩から泊めてくれている。
最初こそ警戒していたミヤコは、今は無防備に俺にくっついて眠っている。
少し癖のある黒髪を撫でる。ふわりと指を滑る髪が短くなってしまったのが惜しまれる。
この世界の者とは、どことなく顔立ちが違う彼女は、人を惹き付ける美しさを持っている。
長い睫毛に二重瞼の優しそうな目元。鼻は高すぎず整っていて、頬は薔薇色。やや厚めのぽってりした下唇は、果実のようで朱を帯びていて誘うようだった。全体に白い肌で、愛らしい顔立ちだが、時折ドキッとするような色気を感じるから不思議で…。
Γううーん、ルー…」
伸びをしながら、ミヤコが寝言を言った。
なんだ?いつもは弟のミチルとの会話バージョンの寝言なのに、今俺の名を呼んだ?
Γうー、おねがい…」
期待を込めて、次の言葉を待つ。
Γ…ごはん……作って」
Γ……この」
ムニムニとほっぺを摘まんでやる。こいつ食べ物ばかりだ。
Γうーん」
ミヤコが嫌そうに顔をしかめる。
Γ…襲ってやるか」
するり、とミヤコの頬を触る。
今なら触っても…じゃない!
俺は、慌ててベッドから体を起こした。
Γ危なかった。」
またしても、ミヤコの誘惑に屈するところだった。俺は頭を振り小さな理性をかき集めた。
今は考えることがあった。
問題は金だ。旅費が底をついたのだ。
枕の下に隠した物も高級品だったが、ミヤコに最初に贈ったイヤリングも、実はかなりの値が張るものだった。
使われていた銀は本物だったし、紫の石は希少な紫水晶だった。
Γいや、よそう。今さら後悔など…」
ミヤコは喜んだ、それでいい。
だが、さてどうするか…
次回特技