祭り初め
シリアスへとすすんでいきます
Γわあ、すごいたくさんの人。」
森と湖の国ニッサは、祭りの時期。メインストリートは人でごったがえしている。
Γ俺はこういう場所は嫌いだ。思念を拾いすぎる。」
辟易として、ルーは隣を歩いている。
そっか、心が読めるのも考えものだよね。
ルーが私とすれ違おうとした男の人の腹を、突然蹴り上げた。
Γえ、ルー!」
人混みの中、飛んでいった人は見えなくなった。
Γ野郎、お前の胸を触ろうとしていた!」
Γええっ!?」
思わず自分の体を守るように抱き締める。
そんな私をチラリと見て、
Γよくも…俺でさえ耐えているのに。」
何かぼそりと言った。
Γほら…」
ルーが私の手を取った。
Γお前、危なっかしいし迷子になりそうだ。」
Γうん」
きゅっとルーの手を握った。照れくさいけれど、私は彼に触れると安心して好きだ。
守られているのを感じるのもあるが、ルーの体温が伝わって嬉しいから。
私を人混みから守るように、すぐ前を行くルーの背中を見つめる。
私は髪を隠すようにショールを深く被っているが(他人の色彩にルーは魔法で干渉できないらしい)、さらさらの金髪に色を変えている彼は違和感がない。目の色は、他人もよく見ないと気づかない人が多いので、あまり変えないみたいだ。
カッコいいなあ……
偉そうな態度取らなければ、黙っていたら、気品と風格を供えた青年なのにね。
でも、黒髪が一番似合ってるなあ…
周りには、たくさんの屋台がずらっと並んでいる。
あ、美味しそうな匂いがする。
手を握っていたルーが顔をしかめた。
Γさっきから丸聞こえだぞ。そして、結局食べ物かよ……」
次回、贈り物