夢の中(ルー視点)
閑話的小話
夜明け前、ミヤコがうなされていた。
悪夢を視ているらしい。
Γう、うう」
Γミヤコ」
手を握ろうとしたら、目を開けた。
Γまっ…!」
叫びかけて、俺を見たミヤコは目をパチパチさせた。
Γミヤコ」
Γ……ルー。」
息をついてから、ミヤコが手で顔を覆った。
Γ夢を視たのか」
Γ皆が私を置いて、行ってしまう夢……」
皆とは、元いた世界の者のことだろう。
頭を引き寄せると、俺の胸にしがみついてきた。
Γ帰りたいか?」
淋しいのだろうか、俺がいるのに。
全く帰す気持ちもないまま、ミヤコに聞いた。
Γ帰りたい、でも…ルーと離れるのは、もっと嫌だ。」
Γそうか」
彼女の髪に顔を埋めるようにして、俺は喜びを隠した。
Γルーは、夢を視たりしない?」
言われて気付いた。以前はよく視ていた悪夢を、俺は彼女と眠るようになってからは視ていない。
Γお前がいるから、視ない。」
そう言うと、ミヤコはホッとしたように微笑んだ。
Γもう少し眠れ。」
Γうん、ね、ルー」
ピタッと体を寄せて、ミヤコが言った。
Γずっといてね。」
Γああ」
肩を抱くと嬉しそうな顔をするので、ついでに額にキスを落とす。
Γルーも一人じゃないからね。」
Γああ」
とろとろと眠りの淵で、ミヤコが囁いた。
Γ大好きだよ」
俺をあまり煽るなよ、ミヤコ。
どうしていいかわからなくなる。
目を閉じて、彼女と眠りを共有する。
次回二人最後の旅