お前に敬意を10
ルーの様子がおかしい。私の肩に頭を預けてじっとしている。
不安、なのかな?
顔を覗き込もうとしたら、ルーがすっと顔を上げた。
Γ早く元に戻れ、触り心地が悪そうだ。」
Γななっ…」
いつものように、にやりと笑ったのでホッとした。
Γうーん、レオ君は魔法使い始めたばかりで、自信ないんだろうね。」
Γああ」
Γ魔法を解除してもらうには、自信をつけてもらうところから始めないと……」
ルーの肩に今度は私がこてんと頭を預けて考える。
Γうーん……」
Γ……………」
Γどうしたら…」
Γミヤコ、触っても…」
Γなんだか騒がしいね?」
階下からざわざわと複数の人の声がする。
私がベンチから立ち上がると、ルーがまた不機嫌な顔をした。
玄関まで出てみると、家の外には人だかりができていた。
レオの母親が応対をしているが、彼女を今にも押し退けて入ってきそうな勢いだ。
Γどうしたんですか?」
Γそれが…」
困り果てた表情の彼女の後ろから、一部の人が私に気付いて叫んだ。
Γ魔法使いですか?どうかこの子の頭の怪我を治して下さい。」
Γ足の傷がずっと治らないんだ。痛くてたまらない!助けてくれ!」
Γお腹が苦しくて』
Γ早く助けて」
そうか、魔法使いに寛容な国ってそういうことなんだ。
Γ助けてやっても良いが、見返りはあるんだろうな?」
私の後ろからルーが割って入った。
Γみ、見返り?金を取るのか?」
Γ当然だ。タダで治すなど、虫のいい話があるか。それにそもそも病気の奴は治せない。」
顔を見合せて、人々が困惑している。
Γ納得できないなら帰るがいい。」
ルーは容赦ないが当たり前のことを言っている…ように聞こえる。
腕捲りをすると、私はレオの母親の前に出て、彼らに言った。
Γ私には、少しですが医学の知識があります。直ぐに治るような魔法は使えないけれど、治療はできます。それでよければ私が診ます。」
Γミヤコ!」
咎めるようなルーの声が後ろからとんだ。
私の前には、次々に人々が並び始めた。
子どもを抱いた母親と目が合った。不安そうなすがるような眼差しを見た。どうして撥ね付けられるだろう。
レオの母親に、タオルやら湯やら椅子を用意してもらい、私は玄関先の道沿いで人々に言った。
Γ近所迷惑になるので静かにお待ち下さい。お金はいりません。はい、では始めの方。」