お前に敬意を9
Γ明朝、レオ達を迎えに来ます。返事はその時に聞きましょう。」
リュカはそう言うと、一旦ルルカに戻っていった。
Γ…………ま、いっか。ルー、私子どもになったけどよろしくね。」
Γ……よろしくって……」
疲れたのかな、ルーの表情は冴えない。
取り敢えず、私達は一晩こちらに泊めさせてもらうことにした。私はレオ達の引っ越し準備を手伝った。
Γごめんね、お姉ちゃん。」
Γ気にしない、気にしない。」
すまなそうなレオは、良い子に育ったのだろう。小さいのに、自分を責めてる。
Γ僕がお姉ちゃんとお母さんを元に戻せたら…。お姉ちゃんはルルカには行かないの?」
Γうん。お兄ちゃんと旅してるから。」
レオの母親が身を乗り出してきて聞いた。
Γルルカのリュカ様やあなたのお連れの方のことはなんとなく知ってます。でも、あなたはどういう関係なんですか?」
Γリュカは私を召喚した人。ルーは…」
言葉を選んで、口に出すのは恥ずかしい。
Γ私の大事な、大好きな人です。」
うん、それで間違いない。
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不安が消えない。リュカの予知は、自分にはどうしたって良いことではないのは、わかっていた。
先程の問いに、導き出された予知の一部。
ミヤコへの試すような言動。
おそらくリュカは、自分とミヤコが互いをどう思っているかを見極めようとした。
ミヤコが本当に最高の魔法使いになるなら…
人間である非力な彼女に可能な唯一の方法は…
Γ俺が無抵抗に首を差し出せば、可能か…」
それならそれでいい。他の誰でもなく、愛した女にならくれてやってもいい。
でも、その時に俺はミヤコを失う。共にいることはできなくなる。
不安なのは、そこだ。リュカの予知は完遂に向かって現実味を増してきている。
自分には、それがひしひしと次第に強く感じられる。
Γルー」
屋上の小さなベンチに座っていた俺に向かって、ミヤコが歩いて来た。
Γ………」
どんな顔をしているかわからず、彼女から俯いて表情を隠した。
ミヤコは隣に黙って腰かけた。
Γルー?」
Γ…………」
小さな手が、俺の髪を撫でる。
Γずっといるよ。」
Γ…………」
その言葉にも、俺の不安は消えない。
Γ……愛してる。」
Γもう一度」
Γん?」
Γもう一度言え。」
その言葉を信じるくらいには、俺はミヤコを信じている。どんな言葉もなくていい。
Γもう一度…」
それだけを聞いていたい。
Γ…………………」
何で言わない。
ミヤコの小さな手が、俺の頭を抱き締めた。