お前に敬意を8
Γ何でルーが困るの?」
Γ………。」
Γあなたにも理性はあるみたいですね。」
リュカの呟きに私が首を傾げていると、階段の辺りで遠慮がちに私達を見ていたレオ親子に、リュカは歩み寄った。
Γレオ、あなたは力の強い魔法使いです。ここでは人の目があり、住みにくいでしょう。我がルルカ及びグラディアで、あなた達親子を保護しましましょう。」
事前に持ちかけられた話だったのか、親子は既に決心したように、よろしくお願いいたしますと頭を下げた。
Γそっか、良かった。レオ君。」
安心したような二人を見て、私も嬉しい。
Γレオは、魔法を使いこなせるようになれば、退行の魔法の解除もすぐできるはずです。だから、母親のあなたの魔法もすぐ解けるでしょう。」
リュカはレオの母親にそう言うと、私を見た。
ついてくれば、私に掛けられた魔法も消してあげる、ということだろう。
どうするかなあ。
親子は、荷造りをしに階下に降りていった。
Γ良いものをみせてあげましょう。」
リュカはそう言うと、自分の人差し指を噛み、零れた血で空中に円を描くように指を動かした。
その円の中にぼんやりと映像が浮かび上がってきた。それが鮮明になり、私は思わず近付いてまじまじと見つめた。
Γみんな…」
それは私の元いた世界の映像だった。
Γお母さん、お父さん、ミチル」
泣いている母。私を捜してひたすら歩いては、肩を落とす父。街角で私の目撃情報を求めるチラシを配る弟。
あんなにも、心配してくれてる。
Γごめんね、みんな」
手で触れようとしたら、通り抜けてしまう。
Γごめんね、ごめんね…」
側にルーが、無言で佇むのを感じて私は涙を拭いた。
Γ心配していますよ、帰らなくていいんですか?」
Γ召喚した貴様がよく言う。ミヤコ騙されるな、召喚魔法は一度使えば50年は発動できない。あの子どもも魔法に馴れるまでは…」
Γミヤコ、ルシウスにはあなたを帰す気はないのはわかったでしょう。こちらへ…」
ゆっくりと消えて行く映像から目を離して、私は微笑んだ。
Γありがとう、リュカ。みんなを見られて良かった。それだけで充分だよ。私は帰らない。」
Γ……聞き分けのない人ですね。」
Γあなたの思い通りになるわけないでしょ。」
腰に手を当て、つんっと顎を上げた。
Γ大体、リュカは私を試しているのでしょう。何を考えているのか知らないけれど、これ以上あなたの人形はごめんよ!」
苛立ったリュカが、私の腕を掴もうとした。
途端に彼の手が火に炙られる。
Γつ、う!」
手を庇い、リュカがルーを睨んだ。
Γ気安く触れると思ったか、ミヤコは俺の女だ。」
女!?女って!
ルーはたまに凄いこと言う。
両頬に手を当て、熱くなる頬を隠す。
憐れんだようにリュカが言った。
Γそれは、犯罪でしょう。」
次回、ミヤコがんばる