お前に敬意を7
何を話していたのだろう?
声を聞いて屋上に上がると、二人は急に黙ってしまった。しばらくしてルーは私を見ていた視線を逸らして、リュカを睨んだ。
Γ力ずくで予知を聞き出せば…」
Γ予知は信じないのでは?」
Γそれを知っていれば、回避できる。」
ぶわっ、とルーの両手に火が踊る。
Γ…あなたは、知ったとしてもきっと予知と同じ行動をする。」
Γ何を根拠に!」
ルーが火を放とうと手を振り上げるのを見て、私は思わず叫んだ。
Γだめっ、ルー!」
Γ…っ、この男を守る義理などお前に無いだろ!」
Γそうじゃない!」
火が舞うその手を、私はぎゅっと握った。
Γミヤコ…!」
瞬時に火は消えたので、私は火傷なんかしなかった。上手く言葉にできない時、彼に触れたら伝えられるのは助かる。
私は、もうルーが傷ついて欲しくないだけだ。手が血で汚れて、自分を追い詰めないで欲しいだけ。
ぎゅっと両手で握っていると、ルーの大きな手が力無くも、握り返してくれた。
リュカは、そんな私達をじっと見てから、何事も無かったように、おもむろに口を開いた。
Γミヤコ、その可愛らしい姿を元に戻すのを条件に、私とグラディアに帰りませんか?あなたは今後、彼の国に必要となる方です。ルシウスといるよりも自由を与えますし、望めばいずれ向こうの世界に還してあげてもいい。」
Γそれが、取引?」
リュカが頷くのを見て、小さく首を傾げる。
おそらく、彼はまた私を試しているのだ。何を考えているかはわからないけれど…
ルーの手を放して、床に目を落としてから、またルーを見上げた。
大丈夫、そんな不安な目をしないで。
Γ私、取引はしません。グラディアには帰らないし、あちらの世界も今は帰らない。ルーと一緒にいると決めたから。」
ルーが、ふっと微笑んだ。
Γいいんですか?」
Γ子供のままでも良いわ。なんだか私楽しくて。」
ふにっ、と自分のほっぺを摘まんで笑うと、ルーが大きく溜め息を吐いた。
Γ…俺が困るんだよ。」
次回、ルーのメンタルが