お前に敬意を6
吹っ飛ばされても無傷な新しい魔法使いレオは、対象の生き物を見ることで、退行の魔法をかけることができるそうだ。
リュカの説明によれば、魔法使いには本来時に関する魔法が備わっていて、体が老化しないのは、細胞の老化を停止して…、つまり体の時を停めているからだそうだ。
それは、意識せずとも魔法使いなら誰でも働く魔法で、レオが退行の魔法を使えるのはその応用らしい。
でも、まだ使いたての未熟な魔法使いであるレオは、その逆…元に戻すことができないらしい。
レオの母親が、小さくなった私のために息子の服を貸してくれたので、私はそれに着替えた。半袖シャツに短パン。また男の子っぽくなるかと思ったら、鏡を見せられた。
Γこれが私?」
思わずマンガみたいな台詞を言ってしまった。
Γどう見ても女の子よ。」
レオの母親が隣でそう言うけれど、彼女もそうだ。
あどけない子供の私は、写真では見たことがあるけれど、実際見ると…ぷりんとした赤いほっぺに、小さな手に、柔らかそうなふわりとした少し癖のある髪。ほんの少し垂れ目なのも…もしかして客観的に見ると、
Γ私、可愛い…」
自分のほっぺを摘まんでみると、ふにんつるんとしていた。お餅で出来てる?
元に戻る方法考えないといけないし、リュカが言う取引?も気になるけれど、このままでも良いかな、とちょっぴり思った。
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Γどういうつもりだ?」
ミヤコが着替えに行った今、リュカとルーは、その家の屋上に移動していた。この辺りの家には屋根はなく、屋上が階段で上がるように作られていた。
Γミヤコとの取引のことですか?」
Γそれを含めた貴様の今までの行動だ。」
リュカが微笑した。
それを見ると、ルーの苛立ちは更に増すばかりだ。何でも心得ているような思わせ振りな態度が癪だ。
Γ貴様はミヤコを召喚したにも関わらず、保護するのかと思えば、ミヤコが危険な目に合っても、傍観していた。試すようなことをし、それに俺が介入するのを許した節がある。」
Γああ、気づいていましたか。」
こともなげに言うリュカは、ミヤコを掌で転がして楽しんでいるようにも見える。
Γ貴様の予知は、もしかして…ミヤコだけの予知でなく、俺の未来の予知だったのだろう?」
リュカの今までの行動から導いた予想だが、ルーはわかってしまった。
おそらくは予知のほんの一部。
Γ貴様の予知には、俺が…ミヤコを愛してしまうことも含まれていたのだろう。」
Γええ、そうです。」
示された答えに、目を伏せる。
それに抗う気持ちは既にない。
ただ、嫌な予感がルーの胸を占めた。
いつか彼女を失う予感だ。
次回、触れないのも辛いよ