お前に敬意を2
少し改編しました。ルーのイメージを考えて。
宿の一階にある食堂で、私は一人で朝食を食べていた。
焼き鮭、味噌汁、青菜のおひたし、卵焼きにご飯。
日本ですか?
なんと箸まであった。
ここは、農耕と海の国。稲作と漁で栄える国らしい。二日前から滞在している。宿のご飯に、お米が出てきた時は感動した。
正に、藤川家の朝食。どうしても望郷の念を思い起こす。
Γみんな、元気かなあ…」
こっちに来て、もう3ヶ月が経とうとしている。もう私は死んでると思われてるかも。
ぱくっと卵焼きを食べて、顔を上げたら向かい側にルーが座っていた。
Γ……………」
Γ……………」
いつの間に。
ちゃっかり同じ朝食をテーブルに置いて、不機嫌そうに頬杖をついて私を見ている。
無視してご飯を食べ進めていると、小さく溜め息をついている。
Γ……話しても?」
Γ…どうぞ。」
そっけない態度をとる。
Γ俺は人と接したことが少ないからか、どうも上手く接し方がわからない。特に女の扱いが…」
Γ偉そうな態度禁止。」
Γくっ」
そうなのだろうとは思う。
Γでも買い物に島から出たりして、全くじゃなかったんでしょ?」
Γ…まあ、な」
曖昧な態度で、憮然としている。
Γとにかく深い付き合いはしたことがなかったから、お前にどう接したらいいかわからないことがある。」
Γ嫌がることはしないで。」
Γ…わかった。なら先程の禁止は取り消せ。」
グサッ
哀れ、卵焼きは箸に突き刺された。
Γそんなわけないでしょ、私今怒ってるんだから。」
哀れな卵焼きを口に入れて、私は睨んだ。
グサッ
ルーの焼き鮭が半分に千切れた。
Γいつになったら禁止を取り消す?!」
Γ私の気の済むまで。」
Γぐ…」
私だって怒る時は怒るんだ。ルーはたまに私の反応を楽しんでる。それが見下されたようで腹立たしい。自分だってオアシスの所で怒ってた癖に。
ルーが私の思考を読んだようで、ちらっとこちらに目を向けた。睨み返してやったら、呆れたような顔をした。
お互いにそのまま無言で朝食を食べていた。
ルーは、慣れた手つきで箸を使っていたが、ふと顔を向けた。
Γ忘れるところだった。ミヤコ…」
Γ……………………………………………………。」
Γ話しても…イイデスカ?」
Γぷっ、どうぞ。」
笑いを噛み殺して促す。ルーが、あのルーが丁寧語を!
苦い顔をして、ルーはまた溜め息をついた。
Γ今朝がた、ここから海を挟んで向かいの国で、強い魔法の力を感じた。だから、朝お前を起こしたマシタ。」
Γぶ!って、え?」
更にルーが苦い顔をした。
Γリュカよりは劣るだろうが、第三位につくぐらい強い魔法使いがいる。まだ若いはずだ、今朝の魔法が初めての発動かもしれない。」
Γそうなんだ。どんな人だろう。」
Γ俺もそいつの面を見たい。行ってみないか?」
私が頷くと、ふいにルーがふっと笑った。
Γお前と翔ぶには、お前の体に触らないといけないな。困ったな。触るの禁止を取り消さないと連れていけない。どうするかな。」
にやにやと私を見るルーに、私は箸を握りしめて焼き鮭をグリグリと刺した。
好きになった方が負け?いや、勝ちでしょ