魔法使いの胸の内2(ルー視点)
Γ付き合っていたのか?」
Γち、違うよ。」
両手を突きだして左右に振り、ミヤコが否定する。
Γ好きではなかったのか?」
Γ嫌いじゃなかったよ。友だちとして好きっていうか…」
Γふうん」
ミヤコは、俺が距離を詰めた分後退し、とうとうヤシの木に背をつけた。
Γた、竹山君は、中学から一緒で、その、すごく親切で…えっと」
Γまんざらでもなかったのか?」
Γだから断ったの!好きな人がいるって言って。」
ひゅうう、と砂が舞った。
Γ何だと?」
風が吹き、ミヤコの髪が彼女の頬を撫でる。
飛んで来る砂を防ごうと、ミヤコがぎゅっと目をつむる。
怒りのままに、その頬を両手で包むと唇を奪った。
Γうっ…ん!」
荒々しく唇を割り、舌を差し込むと、驚いたミヤコが俺の手を掴む。気に止めず、彼女の柔らかい唇を夢中になって堪能していると、
ガブ
噛まれた。思わず唇を離した。
Γはあ、はあ…、ルーの、ばかっ!」
真っ赤な顔で唇を拭い、ミヤコが睨んできた。
それから、俺に勢いよく抱き付いてきた。
Γ好きな人がいるって言ったのは、断りやすいと思ったから!」
Γ…な、に?」
唇に手をやったが、血は出てはいないようだ。手加減したのか。
Γ好きな人なんていなかったの!」
ポカ、と俺の肩を叩いて、ミヤコは叫んだ。
Γこんなに、こんなに好きになったのは、ルーが初めてだよ!ばかあ!」
Γ……………」
Γうああっ、恥ずかしいよお!」
どかっと俺を突飛ばし、ミヤコは遠くに走っていき、木の影でうずくまった。
俺はどうしてしまったのか。ミヤコの心は、もう既に彼女から伝えられていたというのに。
Γ…ミヤコ」
うまくいかない。俺がミヤコを信じるよりも、嫉妬が勝る。それは、俺がミヤコを囲いたいほどに独占したいため。一人が長すぎたせい。不安だから。それほどに…俺はミヤコを…
ふうっ、と溜め息をつく。
Γミヤコ」
細い背中に声をかけると、ぴくりと震えた。
肩に手を触れてもじっとしているので、そのまま背中を抱き締めた。
Γ愛してる」
肩が揺れた。そうして、ゆっくりとミヤコは振り向いた。涙で潤んだ瞳で俺を見ると、そっと俺の額にキスをした。
俺の手を握り、それを自分のこめかみに押し当てた。
シンジテホシイ
魔法使いで良かったと思えた。
ミヤコの感情が流れてくる。それは、とても優しくて甘美な愛情だった。でも、少し怒っている。
Γ疑って悪かった。」
Γふえっ、ひどい、う、あんなディープな…は、初めて…」
Γ…ああ、それは…そういうものだ。」
Γうう…」
抱き締めて、ミヤコをこの手に閉じ込め、ようやく安心する。本当にままならないな。
こんなに翻弄する女は、初めてだ。
俺に苦しくて甘い感情を与えた…愛しいミヤコ。
次回、新入り