旅立ち4
Γマリー、お待たせ。」
次の日、待ち合わせた場所で彼女と会った。
手を振るマリーと連れ立って歩く。
私はあの後、酒場の片隅でジュースを飲んで、壁に寄りかかって眠って過ごした。
男の格好していて良かった。目の色を見られないように顔を隠すようにしていたので、誰も気に留めなかった。
Γちゃんと話し合わなければダメだなあ…」
Γえ?」
Γううん、独り言。」
ルーから、逃げられる気がしない。どこかから見ているのかも。彼から逃げるために、旅を提案したけれど、私の考えなどお見通しだろう。
ルーは予知のこと、どう思っているのだろう。
Γミチル、変わった名前ね。どこか遠くの国の人?」
Γうん。そうだよ。」
Γそっか。あ、ちょっと見てもいい?」
マリーがアクセサリーの露店で立ち止まる。
私もつい、見いってしまった。
Γこれ、キレイ。」
並ぶアクセサリーの中で、イヤリングが目に止まった。
銀のイヤリングは、紫の石を格子状に閉じ込めたデザインをしていた。華美ではないけれど、繊細な装飾が美しく丁寧に造られた物だった。
手に取り、じっくりと見ていた。
Γ可愛いでしょう?彼女にプレゼントするなら包むよ。」
店主の声に、慌てて元の位置に返す。
Γいえ、いいんです。ごめんなさい。」
Γミチル、それ欲しいの?」
マリーが、なんとなく不思議そうな顔をして私に聞いてくる。
Γううん、違うよ。行こう。」
アクセサリー屋から離れると、マリーが追い付いてきた。
Γその先の薬屋に行くから。ごめんね、なんだか付き合わせてしまって。」
Γううん。」
Γでも、助かったわ。ミチルがいてくれて。普段はあまり遠出できないから。」
Γなんで?」
マリーは、少し黙ってから私を見た。
Γ昨日、私を襲おうとした人いたでしょ?」
Γうん。そのせい?」
Γうん。…ミチル、お昼よかったら家に食べに来ない。弟が風邪ひいて寝てるけど、お客様は久しぶりだから喜ぶと思うの。」
Γえ、でも」
Γお礼だと思って、ね?」
Γう、うん。」
ルー、お昼どうするのかな?
それからマリーは薬を買って、元の道を戻っていった。途中でお昼の食材を少しだけ買って、支払いをするマリーを見ていた。何の気なしに彼女を見つめていて、ふと思った。
鈍い金色の髪。茶色の目。
この世界で、あまりない色彩。
あ、そうか。マリーは…