旅立ち3
私に気付いた男が、こちらを向いた。
Γなんだあ?」
酔っぱらってるのだろうか。
Γその子を放せ!」
男が女の子を放して、ふらふらとこちらにやって来る。手にしている刃物がぎらりと鈍く光る。
えっと、どうしよう。勢いで言ったけれど、この後のこと考えてないや。あ、でも、相手は一人で酔っぱらい。大丈夫、勝てる!
Γガキのくせに、生意気な野郎だ!」
Γガキ…」
そっか、チビな私が男の格好したら、少年に見えるのか。
男がうざそうに私を睨んでくる。
Γまさか、てめえもこいつが何か知ってるのか?」
Γえ、この子?」
周りが暗くてはっきりしないが、歳は同い年くらいだろうか。暗めの金髪に目は茶色のようだ。
Γこいつの血、売れるのを知ってるんだろう?」
血?ちいー!?
Γな、なに言って…ひっどい!ひっどお!!」
がむしゃらに繰り出した足が、男のお腹に当たったようだ。腹をさすって悪態をついた男が、刃物を私に振りかざした。
見ていた女の子が悲鳴をあげる。
そして次の瞬間、男はなぜか彼方へと吹っ飛んでいった。
Γあり?」
ぽかんとして、それを見送った私に女の子が駆け寄る。
Γありがとうございました!おかげで助かりました!」
Γはあ…」
Γあの、お名前は?」
Γえっと、ミチル、です。」
弟の名前を借りた。
きらきらと目を輝かせて、マリーと名乗る女の子は、強いんですね!と私を誉めた。
Γは、ははっ」
Γミチルは、旅の方?明日もこの街にいるなら、お礼に観光案内をするわ。」
Γい、います。」
Γ良かった。それなら、明日の…」
押しの強いマリーに、明日会う約束をさせられて、彼女の家の近くで別れた。
それにしても、女の子の血を狙うなんて訳がわからない。気色悪いな。
…って、私何しようとしてたっけ?
Γ遊びは終わりか?」
頭上から声がかかり、ギクッと肩が跳ねた。
スタッと目の前にルーが降り立つ。
Γ……」
Γ俺がお前を逃がすとでも?」
ひやりと冷たい声に、私は…開き直った。
Γやあ、君、僕に何の用だい?」
Γこいつ」
Γ人違いじゃあないかい?」
ふん、と腰に手を当て、背伸びをして彼を見上げた。
Γまさか、本気で誤魔化して逃げるつもりか?」
愕然とルーが聞いた。信じられないという呆れた顔をしている。
Γやってみなきゃわからない。」
Γ俺から逃げられるとでも?…まあいい。だが、なぜだ?」
怒りよりも呆気にとられたようなルーの顔から、目を離す。
Γ…私、いつかルーを殺すかもしれない。予知はそうなんでしょ?」
Γミヤコ。」
Γ一緒にいたら、その危険性が高いんじゃないの?私はそんなの嫌だよ。だから…!」
私は迷わず叫んで、走って逃げた。
Γここで、別れよう!さよなら!」
Γはあ!?」
バカなのか?!
ルーの呆れた声を背後に、私は逃げた。
半分、無理っぽいとは思っていた。
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